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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ

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Ⅹ世への刺客。

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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ   作:コーラを愛する弁当屋さん

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Ⅹ世への刺客。

 

 

 デマの噂が書かれたメールをクラスメイト達に送った犯人……

 それは山内君だと判明した。

 

 怒ってくれているのか、池君は額に青筋を浮かべながら山内君に話しかける。

 

「おい、山内! お前これどう言う事だよ!」

「ん? 何だよ池。急に大声を出したりして」

「これだよこれ! このメールだよ!

「メール? なんの……あぁ、それか」

 

 池君にメール画面を突きつけられた山内君。

 

 画面見た後の彼からは先程までの笑顔が消えていて、険しい顔になっていた。

 しかし、それもほんの数秒の事で、その後はいつも通りのヘラヘラした顔に戻っていた。

 

「この送信者のアドレス、この前俺に間違って送ってきてた変なメールに使ってたお前のサブアドだろ!?」

「……あ〜、あっははは! うん! そうかもしれないわ!」

「そうかもって……お前なぁ! このメールが届いた次の日、送られてきた皆で話し合った時にお前言ってたよな? 『こんなメルアドの奴、このクラスにいなくね? だったら、これは別のクラスからのタレコミ情報かも知れないぞ』……ってよぉ!」

 

 池君が動揺しながら問い詰めるも、山内君はヘラヘラした態度を崩さない。

 

「あ〜本当ごめん。PPについての説明を受けた日さ。俺と池が沢田を責めようとしたら、佐江ちゃん先生にたしなめられただろ? 俺、それで思いついちゃったんだよ」

「思いついたって、何をだよ?」

「沢田と佐江ちゃん先生がグルになって、俺達を嵌めたんじゃないかって事にさ!」

『……は?』

 

 突拍子もない思いつきに、聞いていた全員の頭上にクエスチョンマークが出た気がする……

 

「いや、だってさ。俺は本当に記憶になかったんだもん! 沢田がPPの事とかを注意してくれた事! だからそれは佐江ちゃん先生と沢田の嘘だって思い込んじゃってさ。気づいてしまった以上、真実を皆に共有しないといけないって思ったんだよ!」

「……それで、そんなメールを送ったと言うの?」

 

 熱く自分の過去の行動について語る山内君。そんな山内君に、堀北さんが質問を投げかけた。

 

「そう! 堀北の言う通りでさぁ〜、俺ってあれなんだよね。昔から悪い奴を見過ごせないっていうか? 正義の血が騒いじゃう、みたいな? 俺って正義感強い一面があるからさ〜。沢田が悪い事をしてるなら懲らしめないと! って思ったんだよ」

「……じゃあ、なんで他のクラスからのタレコミって事にしたんだ?」

 

 今度は綾小路君が質問を投げかけたようだ。

 

「それもあれだよ! 正義のヒーローって戦う姿を人目に触れさせないじゃん? だから俺も、別のクラスの奴が教えてくれたって事にしようと思ったのよ! ほら、俺って正義感強いタイプだからさ? ヒーローの美学的なモノを持ってるわけよ!」

 

 この状況を俯瞰図にするとすれば、個人を大勢で断罪しているという構図になるはずだ。

 

 なのに、山内君の態度が普段と何も変わらないことによって、『これも普段の山内のアホ発言か」という風に場の空気が持っていかれている気がする。

 

 その証拠に、池君と須藤君はすでに表情がやわらかくなっているのだ。

 

「……あははっ、なんか山内らしい……勘違いって感じだな」

「だろ? 完全に勘違いだったんだよ! まじ悪かったよ沢田! でも許してくれるだろ? 俺達はもう友達なんだし!」

 

 池君の発言によって、今回の件はちょっとした勘違いによる事故……という事にされてしまった。

 

 こうなっては、これ以上追求しようとすれば、せっかく掴んだ池君と須藤君からの好印象が無駄になってしまうかもしれない。 2人共俺より山内君との方が友達として過ごした時間が長いから、そうなる可能性は高いと思う。

 

 でも……さっき池君のメール画面を見た時の山内君の顔……

 あれを見てから、山内君からどこか薄暗い影のようなモノを感じてしまっているので、正直言えばこの場で山内君の思惑を問い正したいのが本音だ。

 

 しかし、そのせいで池君と須藤君からの印象が悪くなる方が、これからの学校生活に影響が出そうだ。

 

 だから……ここは一先ず許してあげて、山内君のこれからの行動に注意する事にした方が良さそうだ。

 

「……う、うん。考えを改めてくれたなら、それでいいんだ」

「そうか〜! お前って本当にいい奴だなぁ! ほれっ、うりうり〜♪」

「あはは……やめてよもう〜」 

 

 俺に許すと言われた山内君は、俺の肩を抱いて顔に拳をグリグリと押し付け始めた。

 

 普段だったら友達同士の悪ふざけで済ませられるけど、今の俺では山内君に何かされるのではないか……という心配をせずにはいられかった。

 

「はぁ……沢田君が許すと言うなら、私からはもう何も言わないわ」

「山内って本当に抜けてんなぁ! ツナの優しさに感謝しろよ?」

「……お前が言うなよ、須藤」

「あははっ♪ でも、無事に解決して良かったよねっ!」

 

 山内君の距離感の近いスキンシップにより、場は完全に「山内ってしょうがない奴だよな」という空気になってしまった。

 

 桔梗ちゃんの締めの言葉を皮切りに、再び談笑始める皆。

 俺は皆の会話に相槌を打ちながら、たまに会話に加わる様にしてその場をやり過ごしたのだった。

 

 

 —— 祝勝会終了後、山内の場合 ——

 

 祝勝会終了後。池、須藤と共にツナの部屋を後にした山内は、「ちょっと散歩してから帰る」と2人に言って、1人で敷地内の道を歩いていた。

 

 「……あ〜、こんな簡単にバレるとは思わなかったわ」

 

 道に転がる小石を蹴りながら、山内は呟くようにそう独りごちた。

 

 ——カツン。コロンコロン。……ピタッ。

 

 山内がなんとなく小石の転がる先を目で追っていると、小石は細い路地に繋がる小道の入り口で止まった。

 

「……ん?」

 

 小石が止まった場所からもう一度小石を蹴ろうと、小道の入り口へ進行方向を変えた山内。

 すると……独特な雰囲気を放っている男の影が、小道の奥の方から自分の眼前まで伸びて来ていた。

 

(……なんだ? スーツ姿の男か?)

 

 男の影を見て、スーツ姿の大人の男だと山内は判断した。

 

 すると。影の持ち主がいるであろう小道の奥から、男性とも女性とも思える、子供の様な声が聞こえてきた。

 

「おい、山内。……止まれ」

「!」

 

 自分の名前を呼ばれた山内はピタッと動きを止める。

 

(なんだよあの声。影の姿からは想像できないような声だったぞ?)

 

 言われた通りに動きを止めた山内に、謎の声が再び話しかけて来た。

 

「お前……なんであんなでメールをクラスメイトに送ったんだ?」

「……その事を知っているってことは、さっきの会話を聞いていたんだろう? さっき言った通りだよ」

「……俺に嘘は通じねぇぞ。本当の事を話せ」

「……本当の事を言ってるんだけど?」

「そうか、言う気がないか。だったらこっちから言わせてやろう」

 

 謎の声は、そこまでは特に何も感じない声だった。しかし、その後からの声からは、明確な敵意が感じ取れた。

 

「……お前。どこのマフィアの回し者だ?」

「! ……なるほど、それを聞いて来るって事は、あんたはボンゴレのヒットマンだな?」

 

 自分の事をマフィアの回し者と言い切るその声に一瞬驚くも、山内は平静を装って会話を続ける。

 

「そうだぞ。それがわかったなら、本当の事を話した方が賢明だということも分かるな?」

「……ははは。ボンゴレ側はこの学校で起きた問題に手を出さない……そういう決まりになっているんだろ?」

「! ほう……なるほど。その情報を手に入れたから、ツナに手を出そうとするわけか」

「まぁ、そういうことだな。で、どうする? 決まりを破って俺を消すか?」

 

 ボンゴレの刺客が自分の邪魔をしてこない。その事実が山内を増長させてしまう。

 

 今まで只の駒に過ぎなかった自分が、裏社会の人間と対等に渡り合っている。……そんな錯覚に山内は陥っていた。

 

 平静を装いながらも、ニヤケそうになるのと止めるのに必死になっている。

 

「……いや、俺は決まりは破らない。ツナがここを卒業するまで、この敷地内で起きる問題に一切の手出しはするつもりはねぇ」

 

 ボンゴレのヒットマンの口から確約された、誰も自分の邪魔を出来ないという事実。

 山内はニヤニヤを抑えきれなくなってきていた。

 

「へ〜。じゃあなんで、俺に接触してきたんだ?」

「学校に潜り込んでいる、裏社会からの刺客を把握するためだ」

「なるほど、じゃあ本当にあんたらは俺に手を出せないわけだな?」

「そうなるな」

「そうかそうか、じゃあ計画は続行できそうだな」

「……計画だと?」

「まぁ、どうせここから逃げ出してもあんたらはしつこく接触してくるだろうからな、面倒だし、ここで教えてやるよ。俺が所属しているマフィアファミリーをな」

 

 自分は天才だと思い込んでいる山内は、生来の目立ちたがりで自分をよく見せたいという性質も相まって、自分の考えた完璧な作戦を誰かに聞かせてやりたいという欲望が満タンになっていた。

 

「……ファミリーに所属はしてねぇだろ? お前はマフィアの飼い犬程度にしか見えねぇ」

「なっ!」

 

 せっかく気持ちよく自らの計画を披露しようとしていたのに、謎の声の主であるボンゴレのヒットマンの一言で、盛り上がっていた気分に水を注されてしまった。

 

「……はん、まぁその通りだ。俺はマフィアじゃない。使い捨ての歩兵さ」

「使い捨ての歩兵だと?」

「俺に命令を下す組織は、組織に飼われている下っ端の事を、歩兵。もしくは『士兵ポーン』って呼んでいるんだ」

「士兵ポーンか……。そうか、なるほどな。お前を飼っているのは、最近なぜか影響範囲を広げだしている中堅マフィア。ジョーコファミリーだな?」

「! へ〜、よく分かったなぁ」

「ジョーコファミリー。ファミリーをチェスの駒に例えて順位付けをしていて、更に殺人をゲームとして日常的に楽しんでいるゲス野郎の巣窟……ってイタリアンマフィアの間じゃ有名だぞ。いくつかの国に汚れ仕事を請け負わせる奴隷を飼っているって噂もあったしな」

 

 自らも憎んでいるジョーコに対する他のファミリーからの非難。

 山内はまた少し気分が良くなっていた。

 

「ははは! ひどい噂だなぁ。……まぁ本当のことだけど。そう、俺はジョーコファミリーに飼われているschiavo Giapponeスキャーボ・ジャッポーネだ。」

「schiavo Giapponeスキャーボ・ジャッポーネ、日本の奴隷か」

 

 ボンゴレのヒットマンは、山内の階級名をわざわざ言い直した。

 (こいつも消してやろうか?) 

 気分が盛り上がっている山内は、自分が世界最強であるかのような考え方になっている。

 

「それで? ジョーコの下っ端がなんでツナに関する嘘の噂を流したんだ? ……それがジョーコからの命令なのか?」

「……半分正解かな? 俺がジョーコから受けた命令は一つ。『ボンゴレⅩ世、沢田綱吉を消せ』……これだけだ」

「! ……ツナを消せと言われてるのに、ツナの交友関係を壊したのはなぜだ?」

 

 一度は妨害された、自分の完璧な計画を披露するチャンスがまた巡ってきた。

 

「簡単さ。俺の力じゃ普通に戦闘を挑んでも勝てないからだよ。だから、精神的に追い詰めて、沢田が弱り切った時に救いの手を差し伸べる。……そうすれば沢田は俺の事を完全に信頼するだろう? そうなってから隙をついて始末するつもりだったんだ」

「……なるほどな。お前は戦闘訓練を受けていないわけか」

「当然だろ? 使い捨ての駒に訓練をさせる程、ジョーコは資金がないからな。だからこそ、俺の様な使い捨ての歩兵を影響力を広げたい国で見つけるんだよ」

「……お前はなんで歩兵になったんだ?」

「はっ、山内の家系に生まれた者は、ジョーコの歩兵となるように大昔に決められてるんだとよ」

「……そうか」

「意味わからねぇだろ? 山内に生まれてしまっただけで、ジョーコの為に命を捧げる事が決定されてんだぜ? でもよ、そんな不幸な運命から、ついに抜け出せそうなチャンスが巡ってきたんだ!」

 

 完璧な計画を披露するも、計画に関係ない事ばかり聞いて来るボンゴレのヒットマン。

 やがて、話題が山内の大嫌いな自分の家系に関するものへ切り替わる。

 その結果、喜びから憎悪へと山内の心境が変化していく。

 

「……そのチャンスが、ツナを始末する事なのか?」

「その通り! ボンゴレⅩ世を始末した者は、家族全員ジョーコの支配から抜け出す事を許してくれるんだってよ! そりゃ飛びつくに決まってるよなぁ!」

 

 一度上がってしまった憎悪のボルテージはそう簡単には下がらない。

 大きく上がっては少し下がるのをひたすらに繰り返している。

 

「……命令を受けた俺は、準備の為に調査屋に依頼をして沢田の事を調査してもらった。その結果、沢田がこの高校に入学することを突き止めた。しかも、この高校に在籍中はボンゴレのヒットマンはボンゴレⅩ世を守らないというオマケ付きときたもんだ! もうこれは神様が俺に微笑んでいると思ったねぇっ! 俺自らボンゴレⅩ世の懐に飛び込み、確実に始末することができる訳だから!」

 

 普段はずっとヘラヘラしている山内の顔が、愉悦を極めたような顔へと変わっていく。

 

「そして入学して同じクラスになった俺は、まずは沢田の精神を弱らせようと思ったんだ。だからPPの混乱に乗じて、沢田に対する不信感をクラスメイト達に植え付けた! 作戦はすごくうまく進んでいたんだ! クラスメイト達は沢田から距離を置き、沢田は孤立した。これで俺の計画は成功する……そう思っていたんだ」

 

 愉悦を極めたような顔から、今度は強い憎悪を感じる程に歪んだ顔へと変わっていく。

 

「……なのに、なのに! 綾小路! 堀北! 平田! 櫛田! この4人は沢田を無視しようとしなかった! おかげで沢田は精神を弱くするどころか、学校生活を普通に楽しみ始めやがった! くそがっ! あのくそ共がっ! 俺の計画、俺の完璧な計画を邪魔しやがってぇぇっ! 池の野郎もだ! なんでメールを保存してやがる! 消しとけって言ってただろうがぁぁっ! ……はぁっ、はあっ!」

 

 ため込んだ鬱憤を一気に吐き出し過ぎたのか、山内は息を切らして一度話が止まってしまう。

 ゆっくりと息を整えると、再び話始めた。

 

 

「……俺がメールを送ったとバレた以上、今の俺は沢田にマークされているはずだ。しばらくはうかつに行動できねぇ。……だけどな、再び俺の信頼度が上がった時。その時があいつの最後だ! もう失敗しねぇ! 完璧な作戦を立てて、今度こそ確実に沢田を消してやる! あっはっはっはっはぁっ!」

 

 高笑いをする山内を他所に、ボンゴレのヒットマンが長いため息を一つ吐いた。

 

「はぁ〜っ。……残念だが、お前じゃツナは消せねぇな」

「……あ? 何を言ってやがる?」

「さっきから完璧だのなんだの言ってるけどな、お前の作戦はアホすぎて誰も引っかかったりしねぇぞ?」

「ああっ!? 意味わからねぇ事を言ってんじゃねぇぞ!?」

「……はっ、そんな事にすら気づけないお前に、ボンゴレの次期ボスに選ばれたツナが消されることはありえねぇな」

「……くくく。言ってろよ、ボンゴレのヒットマンさんよぉ。その内嫌でも見せてやるよ。あんたらボンゴレの奴らに、苦しそうな顔で死んでいるボンゴレⅩ世の姿をな」 

 

 そう言った山内は、闇夜に包まれた道をふらふらと進んで行った……



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