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ようこそボンゴレⅩ世。実力至上主義の教室へ

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Ⅹ世、受け入れられる?

Ⅹ世、受け入れられる?

 

 中間テストの結果が発表され、須藤君が赤点であった事を告げられた俺達Dクラス。

 皆が動揺する中、須藤君が茶柱先生に抗議し始めた。

 

「ふっざけんな! なんで俺が赤点なんだよ! ちゃんと30点以上取ってるじゃねえか!」

「ふん。確かに39点だから30点は超えているな。だが……赤点のラインが30点だとは誰も言っていないぞ?」

「は、はぁ!? 普通赤点のラインは30点だろうがよ!」

「それは中学までの普通だろう? この学校の赤点のラインはクラスの平均点から算出されるんだ。式にすると、平均点÷2。この式の解が赤点のラインとなるわけだ。そして、今回のテストのDクラスにおける平均点は79.6。つまり……」

 

 茶柱先生が黒板の空いているスペースに数式を書いていく。

 

「79.6÷2=39.8。四捨五入すると40。つまり……今回のテストで赤点となるのは39点以下だというわけだ」

「……嘘だろ? 俺が、この俺が……退学?」

 

 茶柱先生の淡々とした喋り方が、今直面しているこれは現実だと分からせる。

 

「先生! どうにか退学を免れる方法はないんでしょうか?」

「そんな簡単に須藤君が退学なんて、……私は嫌ですっ!」

「……そんな方法はない。赤点を取ればそれまでだ。たとえお前達が何を言おうとも、この学校ではルールが全て。ルールに則り須藤は退学にする」

 

 クラスのリーダー格である平田君と桔梗ちゃんが茶柱先生に抗議するも、茶柱先生は淡々と正論を振りかざして沈めてしまう。

 

『それがルールだ』……と言われてしまえば、ルールに縛られている学生に過ぎない俺達には、もう言い返す言葉が無くなってしまうのだ。

 

「……」

「ホームルームはこれで終わりだ。須藤、放課後に職員室に来い。退学の手続きがあるからな」

 

 意見をする者がいなくなると、茶柱先生は簡単な頼み事かのように須藤君に最後通告を出した。

 

『……』

 

 茶柱先生がいなくなった教室では、誰1人として口を開かず、ただ沈黙している。

 

(……)

 

 静寂に包まれた教室で、俺は目を閉じて思考する。

 

(まだ終わりじゃない。……先生はルールは絶対だからどうしようもないと言った。でも、俺の知ってるこの学校の別のルールによれば、まだ須藤君の退学を無効にできる手はあるはずだ)

 

「……」

 

 無言のまま、ガタンと音を立てながら椅子から立ち上がる。そしてそのまま廊下に向かって歩き始めた。

 

「沢田君?」

「ツナ君!」

 

 後ろの方から堀北さんと桔梗ちゃんの声が聞こえたけど、それを無視して廊下へと出る。

 そして、そのまま廊下を進んで行き、職員室ではなく屋上へと向かった。

 

 ホームルーム後に屋上で一服するのが茶柱先生の日課らしいからな。

 

 

 —— 屋上 ——

 

 ——バタン。

 

 扉を開き、屋上に出る。

 やはり茶柱先生は屋上で一服していた。

 

「……どうした? そろそろ授業が始まるぞ?」

 

 俺が近づこうとすると、茶柱先生はこちらを見もせずにそう言ってきた。

 

「茶柱先生、お願いがあります」

「……なんだ?」

「須藤君のテストの点数。1点売ってください」

「……ふ、ふははははっ!」

 

 テストの点数を売ってくれと言った俺に、茶柱先生は高笑いしながら振り返った。

 

「まさか、テストの点数を売ってくれなんて言う生徒がいるとはなぁ」

「……この学校でPPで買えない物はないんですよね? だったら、テストの点数を売ってもらうことも出来るはずです」

「ふふふ。確かにお前の言う通りだなぁ、沢田。……だがな。お前の持ってるポイントで買える代物なのかは、分からないぞ?」

 

 意地の悪そうな笑みを浮かべながら、茶柱先生はそう言ってきた。

 

「……いくら払えば、売ってくれますか?」

「ふむ。……そうだなぁ」

 

 考え込む素振りを見せる茶柱先生だが、おそらく俺を不安にさせるためのパフォーマンスでしているだけであろう事がなんとなく分かった。

 

「ん〜。……よし、決めたぞ」

 

 しばらくパフォーマンスを披露し続けた茶柱先生が、ようやく動きを止めた。

 先程までの意地の悪そうな笑みから、意地の悪そうなニヤニヤ顔に変わっている。

 

「今この場で100,000ポイント支払え。それができるなら、須藤の1点を売ってやろう」

「! ……意地悪な事言いますね」

「はははっ! これもルールだよ沢田。いくら支払わせるかは売る側に決定権があるんだぞ」

「くっ……(俺の所持PPは76,000。24,000足りない!)」

 

 PPが足りない事に悩む俺を見て、茶柱先生はさらに言葉を付け足す。

 

「注意しておくが……今この場で支払わずに別のタイミングに再度支払おうとしても、その時には支払うポイントは200,000ポイントになるからな」

「なっ!?」

 

 200,000ポイントなんて、100,000も払えない俺には到底出せないぞ!?

 

(くっ、どうしよう。茶柱先生に少しだけ猶予をもらってクラスメイト達にポイントを借りにいくか? いや、みんなポイントはギリギリのはず。借りれるとしたらあの3人くらいか……)

 

「……茶柱先生。少しだけ猶予を……」 

 

 バタン!

 

 頭の中で思考を整理し、行動に移ろうとしたその瞬間。屋上の扉が開け放たれる音がした。

 思わず扉の方に振り返ると、そこには堀北さんと綾小路君が立っていた。

 

「あれ、2人ともどうしてここに?」

 

 俺がそう2人に問いかけると、綾小路君は無言のままだったが、堀北さんはため息を一つ付き、呆れ顔になった。

 

「はぁ……ねぇ沢田君。私に相談もしないで、1人でどうにかしようとするのはどうなのかしら」

「えっ? あ、でもこれは俺が1人で決めたことだし、堀北さんを巻き込むわけにも」

「はぁ……」

 

 言い訳を言うと、またも堀北さんはため息を一つ吐いた。

 

「沢田君、『俺達は一緒にAクラスを目指すパートナーだ』とか言っておきながら、失敗した責任を1人で取ろうとするのはおかしいんじゃないかしら? ……それとも、やっぱり私の事が信じられないの?」

「あっ……」

 

 堀北さんに「俺は君を信じてるから、君も俺を信じて欲しい」って言っていた事を思い出す。

 

「い、いや! そんな事ないよ!? もちろん信じてるよ!?」

「……だったら、私にも責任の一端を取らせなさい。私もポイントを出すわ」

「えっ! いいの?」

「当然よ。だって私達は……パ、パートナーなんだから」

「!」

 

 そう言うと、堀北さんは顔を赤らめながらそっぽを向いてしまう。今まであんな事を誰かに言った事がなかったのか、すごく恥ずかしいのかもしれない。 

 

「……うん! そうだよね! ごめんね、1人でやろうとしちゃって」

「……別に。もういいわよ」

 

 そう言いながら堀北さんが俺の隣に並ぶ。

 

「2人で50,000ポイントづつ支払います。それで問題ありませんよね」

「ふむ、いいだ……」

「ちょいちょーい。俺を無視しないでくれよ」

 

 堀北さんと一緒にポイントを支払おうとしたその時。さっきまで無言だった綾小路君が声をかけてきた。

 

「どうしたの? 綾小路君」

「……俺にもポイントを出させてくれ」

「え? どうして?」

「……俺も今回の計画に協力してた訳だしな。最後まで俺も協力させてくれよ」

「……綾小路君」

「それに、沢田は友達だしな。友達の為に協力するのは普通……らしいぞ?」

「なんで疑問形なのよ……」

 

 せっかくカッコいい事を言っていたのに、最後の言葉で台無しにした綾小路君。

 堀北さんも呆れたように目元を手で抑えている。

 

「ふっ、ふふふふ、ふははははっ!」

 

 俺達3人のやりとりを見ていた茶柱先生が急に大きな笑い声を上げた。

 

「ふふふ……沢田ぁ、お前は本当に面白い奴だなぁ。この短期間で堀北や綾小路という癖のある奴を味方につけるとは。中々出来る事じゃないぞ? いや、さすがの包容力だと言うべきか?」

「……ありがとうございます」

 

 そして、茶柱先生は学生証端末を取り出した。先生も持っているのか、教師用の端末なのかもしれない。

 

 茶柱先生の端末に俺達の端末からポイントを送信する。3人では割り切れないので、俺と堀北さんが45,000ポイントずつ、綾小路君には10,000ポイントだけ支払ってもらう事になった。

 

 ピコンという電子音が鳴ると、俺の所持PPが減った。ちゃんと送信できたらしい。

 茶柱先生は自分の端末を確認すると、頷いてから話を続ける。

 

「うむ。確かに100,000ポイント受け取った。これで須藤の退学は取り消しとする」

「ほっ……ありがとうございます!」

「取引だからな。仕方ない」

 

 そう言った茶柱先生は、タバコをもう1本取り出して火を付けた。

 口から白い煙を吐き出しながら、茶柱先生はどこか遠い目をし始めた。

 

「……未だかつて、Dクラスが上のクラスに上がった事はない。それでもお前達は足掻くつもりか?」

「はい。Aクラスまで成り上がるって決めたので」

「私もです。必ずAクラスまでたどり着いてみせます」

「……俺は、沢田の事をサポートするくらいはしてみようかと」

「……不良品と判断されたお前達がか?」

 

 茶柱先生は俺達を煽るような事を言って来るが、さっきまでと違い、何かに期待しているような感じがする。

 

「……不良品だって、頑張れば良品に変わることが出来ます。俺はそれを自ら体験しているので、これに間違いはありません」

「ふふ。なら楽しみにしておこう。暖かく見守らせてもらうよ、担任としてな」

 

 

 その後、俺達は教室に戻った。

 一時限目は英語だったのだが、ラッキーな事に自習と黒板に書かれており、先生もいなかった。

 

 ——がらら。

「!」

 

 俺が教室に入った途端、クラスメイト達の視線が俺に集中した。

 そして、須藤君は立ち上がって俺の肩を掴んできた。

 

「さ、沢田。お前達どこに行ってたんだ!?」

「え、えっと、茶柱先生の所だよ?」

「っ! そ、それで? 何の話をしたんだよ! 俺か!? 俺の話か!?」

「う、うん。そうだよ?」

「ほ、本当か!? それで、それでどうなったんだ!?」

 

 須藤君に肩を強く揺さぶられる。

 

「う、うん。須藤君の退学は取り消してもらえたよ」

 

 そう言ってあげると、須藤君は俺の肩を離してヘロヘロと椅子に座り込んだ。

 

「……は、ははっ。まじか? 本当に取り消しになったのか?」

 

 嬉しい気持ちと信じられない気持ちが入り混じっているのか、須藤君は喜んでいいのか戸惑っているようだ。

 

「うん! 本当だよ! これで約束通り、ここでバスケが続けられるね!」

「お、おお。……おおおおっ!」

「? ……うわぁっ!」

 

 現実だと分かってもらう為に、目線を合わせてもう一度言ってあげた。すると須藤君は、急にまた立ち上がるとそのまま俺に抱きついてきたのだ!

 

「ありがとな……ありがとうな沢田! ……いや、ツナっ!」

「あはは、いいんだよ。……ツナ?」

「おう! 今日から俺とお前は親友だぜっ! ありがとうなツナっ!」

「(いきなり親友!? ……まぁいいか)う、うん。よろしくね須藤君」

「おおおっ!」

 

 その後、俺と須藤君のやりとりを見ていたクラスメイト達から、徐々に拍手喝采が起きていく。

 

「よかったな須藤! 沢田、お前やるなぁ!」

「本当ね! 今まで沢田君は最低な人だって思ってたけど、実際はいい人なのかもね!」

「あはっ♪  よかったね須藤君! ツナ君もありがとう♪」

「あ、いや、俺だけの力じゃなくてね? 堀……」

 

 堀北さんと綾小路君の協力があって出来た事だって事を伝えようとするも、すでに堀北さんと綾小路君は自分の席に座って本を読み始めていた。

 

(えっ! 逃げたの!?)

 

 結局俺は、1人で今回の件に関する賞賛を浴びることとなった。

 そして、今までの俺に対する反応が嘘だったかのように、皆が普通に話しかけてくれるようになった。

 

 

 —— その日の放課後 ——

 

「えっ? 祝勝会?」

「うん♪ 無事に中間テストを乗り切れたお祝いにっ!」

「……わかった。参加するよ」

「ありがとう! じゃあツナ君の部屋で開催ねっ♪」

「うん! ……えっ!?」

 

 放課後、桔梗ちゃんが祝勝会にお誘いしてくれた。勉強会のメンバーでやるそうなのだが、なぜか俺の部屋で開催する事が決定されていた。

 

 

 〜帰り道〜

 

 コンビニでお菓子やジュースを買い込み、皆で俺の部屋に向かって歩いていた。

 

「……ねぇ。なんで俺の部屋?」

「だってよ、沢田の部屋は最上階なんだろ? 最上階からの景色見てみたいんだよ」

「そ、そっかぁ」

 

 俺の質問に山内君が答えてくれた。

 

(あれ? なんで山内君は俺の部屋がどこか知ってるんだ?)

 

 違和感を感じたけど、どこかで俺が最上階に帰るとこを見たんだろうと納得する事にした。

 

(しかし……俺の部屋にはリボーン用の居抜きスペースがあるんだよな)

 

 あのスペースに関して、いいごまかし方が全然思いつかない。

 

(皆にあのスペースを見られる訳にはいかないし……とりあえずリボーンに連絡してみるか)

 

 学生証端末を操作し、リボーンに連絡を取る。こんな時の為に、リボーンが連絡用に所持している通信端末の番号を登録しておいたんだ。

 

 fromツナ

 リボーン。クラスメイト達と俺達の部屋に向かってるんだけど、お前のスペースを見られたらどうしよう!

 

 ありがたい事に、リボーンからは送信してすぐに返信が返ってきた。

 

 fromリボーン

 安心しろ、俺のスペースにはこんな時の為に壁に偽装する機能が付いている。

 普通に入ってきて大丈夫だ

 

 fromツナ

 わかった、ありがとう

 

 fromリボーン

来月PPが入ったら、コーヒー豆を沢山買ってこい

 

 fromツナ

 ……はい

 

 なんか面倒くさいことになったけど、とりあえずは大丈夫そうだな……

 

 

 —— ツナとリボーンの部屋 ——

 

「うお〜! タッケェなぁ!」

「やっぱ最上階だなぁ!」

「今の俺なら空も飛べそうだぜっ!」

 

 部屋のベランダから外の景色を見た池君と山内君と須藤君が騒ぎはじめる。

 

「……なんで1年の沢田君が最上階なのかしら」

「(ぎくっ!?) あ〜、なんか他の部屋に空きがなかったみたいでさ! ラッキーだって先生にも言われたよ!」

「……そう」

「へぇ〜♪ ツナ君は運がいいんだね!」 

 

 堀北さんに当然な疑問を持たれてしまったが、なんとか誤魔化すことに成功したようだ。

 

「……なぁ、早く始めようぜ。祝勝会」

「おお! そうだな!」

「うん♪  それじゃあ乾杯しよっか!」

 

 綾小路君の一言で全員が飲み物を持つと、桔梗ちゃんが乾杯の音頭を取る。

 

「ではではっ! 中間テストを無事に乗り越えた事を祝して〜?」

『かんぱ〜いっ!』

 

 乾杯の後は、皆でお菓子を摘みながら談笑することになった。

 談笑し始めてからしばらく経った頃、池君が俺に質問をしてきた。

 

「なぁ沢田。お前、どうやって須藤の退学を取り消してもらったんだ?」

「えっ? ……あ〜、土下座して頼み込んだんだよ」

「まじか!? 須藤のために土下座!? お前どんだけいい奴なんだよ!?」

 

 

 池君には須藤君の退学を取り消ししてもらった本当の方法を伝えなかった。

 

 それはなぜかというと、昼休みに綾小路君と堀北さんからそうした方がいいと助言されていたからだ。

 

 —— 回想、昼休みの教室 ——

 

 今日の昼休み。俺と綾小路君は教室の自分の席でパンを食べていた。

 堀北さんも今日はパンらしく、綾小路君の隣の席で食べている。

 

 本人は一緒に食べてるとは思ってないかもしれないけど……

 

「おい沢田。今日の須藤の救済方法だが、誰かに聞かれてもごまかした方がいいぞ」

「えっ、なんで? 皆に共有しようと思ってたんだけどな」

「やっぱりか……あのな、情報ってのは力になる。お前がDクラスを成り上がらせたいって思うのなら、他の奴は持ってないカードを持っておいたほうがいい」

「……力かぁ」

「ああ。この学校で何かを成し遂げるのなら、力は絶対に必要だと思う。それも、暴力でない力だ」

 

 すると、堀北さんも会話に加わってきた。

 

「私も同意見ね」

「えっ、堀北さんもか」

「この学校において、PPやSシステムに関する知識は力になるわ。それに……」

「……それに?」

「真実を話しても、前みたいに皆から信じてもらえない可能性だってある。そうなったら……」

「また、沢田に対する対応が悪くなるだろうな」

 

 堀北さんと綾小路君はどうやら俺の心配もしてくれているらしい。

 そこまで考えてもらっていては、俺も2人の意見を受け入れるしかないな。

 

「わかった。ありがとう2人共」

 

 —— 回想終わり ——

 

 と、いう事があったんだ。真実を伝えないのはずるい気もするけど、2人の事を信頼しているからな。

 

 その時、話を聞いていたであろう須藤君が、泣きそうな顔になって俺の方を見ている事に気づいた。

 

「ツナ……お前ってやつは! ……にしてもよぉ。あの噂はデマだったって事なのか?」

「あっ! 俺もそれ考えてた! 沢田の奴、すんげぇいい奴だもんなぁ!」

 

 ……今、須藤君は気になる発言をした。

 急に真顔になった事も気にはなるけど、今はそこじゃない。

 

 そんな須藤君の発言に、池君が俺も俺もと賛同し始めた。

 

「……噂? なんか俺の噂が流れてたの?」

「ん? ああ、実はそうなんだよ。……お前は不快だと思うんだけどさ」

「それでもいいよ。池君、教えてくれない?」

「……そうか? じゃあ話すよ」

 

 池君が語った、俺の噂を簡単にまとめるとこうなった。

 

①PPについて沢田が教えてくれていたというのは、茶柱先生の嘘である

 

②茶柱先生がそんな嘘をついた理由は、沢田の行動でクラスメイト達にポイントを無駄遣いさせることができれば、沢田だけボーナスでPPを受け取れるという取引を沢田と茶柱先生の間で交わしていたから

 

③ 上記の噂が書かれたメールが、5月1日の放課後に俺・堀北さん・綾小路君・長谷部さん・佐倉さん・高円寺君以外のクラスメイト全員に送信されている

 

 ……何だ、この噂。あきらかに矛盾だらけじゃないか? 

 皆こんな噂を真に受けてたから冷たかったのか?

 

 そんな事を考えていたら、近くにいた綾小路君が口を開いた。

 

「……5月1日。その日はPPが貰えないってことで皆パニックになってたからな。こんな噂でも真実と勘違いしてしまってもおかしくない」

「! そっか……そうだね」

「メールが送られてねぇのは、俺もアドレスを知らない奴だけだな」

「え? そうなの?」

「ああ。俺と山内は殆どのクラスメイトの連絡先をゲットしてんだけどよ。このメールが送られてない奴のアドレスはまだ知らないんだよな。まぁだから誰に送られてんのか分かるんだけどよ」

 

 綾小路君と池君の意見を反芻していると、今度は堀北さんが口を開いた。

 

「池君。そのメールまだ持ってる?」

「ん? ああ、持ってるぜ。……ほら、これだ」

 

 池君は自分の学生証端末を操作し、メール画面を見せてくれた。

 

 そのメールには確かに先程聞いた俺の噂が、友達に噂話をするような文面で記載されている。

 そして、このメールは1人の人物から一斉メールで送信されているようだ。

 

「……池君、このメールを送っている人のアドレス、誰のか知ってる?」

「え? ああ、ちょっと待ってな? え〜と」

 

 池君は学生証端末に登録されたアドレスを確認し始める。

 そして、見つけ出したそのアドレスの持ち主は……

 

「あれ? 山内だ」

 

 たった今も一緒に談笑していた……山内君だった。

  
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