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出るとか最高

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第一章

                出るとか最高
 その返事を聞いてだ、都内で不動産業を営んでいる山添久一小柄で猿に似た顔と痩せた身体黒く短い髪の毛を持つ彼は客に聞き返した。
「いいんですか、本当に」
「それはこっちの台詞です」
 金髪をセットしていてグレーの目と高い鼻に彫のある顔と太めの眉を持つ長身の白人の男性が日本語で返してきた。
「そんな安いお値段でいいんですか」
「いいってここ出るんですよ」
 山添はその客、オリバー=ポーツマスに返した。
「もうそれは」
「妖怪屋敷ですね」
「幽霊に妖怪に」
「盛り沢山ですね」
「そうしたスポットでも有名になっていて」
 それでというのだ。
「長い間空き家で」
「都内でそんな安い値段とか最高ですよ、しかも」
「しかも?」
「出るなんて、是非です」
 ポーツマスは山添に目をきらきらとさせて申し出た。
「僕に買わせて下さい」
「そこまで言われるなら、ただお坊さんや神主さん呼んでお祓いは」
「いいです」
 笑って断ってきた。
「いることがいいですから」
「何があっても知らないですよ」
「あるのがいいんですよ」
「そうですか」
「はい、じゃあお願いします」
 こうしてだった。 
 ポーツマスは都内に大きな一軒家を買った、それも百万で。
 その話を夫から聞いてだ、妻の渚は耳を疑った。おばさんパーマで太った如何にもという感じのおばさんである。
「あそこ売れたの」
「事情話してもな」
 夫は妻に家で話した。
「そうなんだよ、イギリスから来た人にな」
「そうなの」
「何でも証券マンらしいな」
「日本の幽霊や妖怪のこと知らないのかしら」
「そうかもな、しかしな」 
 それでもとだ、夫は妻に夕食の鰯と味噌汁とほうれん草のひたしを食べつつ話した。
「何があってもな」
「知らないって言ったのね」
「ああ、けれど心配だから時々な」
「観に行くのね」
「そうするな」
 こう妻に話してだ。
 山添は実際にだ、ポーツマスの家に行ってだった。 
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