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渦巻く滄海 紅き空 【下】

作者:日月
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五十一 不死コンビVS宿敵コンビ

 
前書き
ギリギリの更新申し訳ございません…!

タイトルは、前回ご感想くださった方から、勝手ながら使わせていただきました。
勝手に申し訳ございません…!ご感想、ありがとうございました!!
今回も楽しんでいただけると幸いです。





 

 
(曇ってきやがった…)


天は敵に味方した。
曇りゆく空を仰ぎ見たシカマルはそう思わざるを得なかった。

あれだけ晴れていた空が徐々に陰ってゆく。
光あるところに影あり。即ち、光がないと影はできない。

影を伸ばしたり縮めたり、形を変えるには限界がある。
自分の影の表面積分しか自在に操れないが、それは他の物体の影とくっつけて更に伸ばすことが可能だ。

しかし、空が曇り、影が薄くなっている現状では【影真似の術】で相手を拘束する力及び伸ばす距離が、晴天よりも遥かに劣ることとなる。

曇天を苦々しげに見上げたシカマルは、目の前に立ち塞がる敵を油断なく見据えた。
飛段と角都。不死コンビを前に、目まぐるしく頭を回転させる。

空も戦況も雲行きは怪しい。
けれど、己が出来うる最善策を取らねばならない。



「…チョウジ。お前はいのの許へ行け」

指示を飛ばす。
いのは【心転身の術】で飛段の身体を乗っ取っていたが、角都からの攻撃を受け、その反動で気を失ってしまった。
飛段が不死身であることを利用し、容赦なく攻撃した角都は、現在いのの存在を知らないが、気絶している彼女を人質にでもされたら元も子もない。


「わ、わかった…!いのが目を覚ましたらすぐに戻ってくるよ」

気を失っているいのを安全な場所へ連れて行き、人質にされる危惧を考え、彼女を護衛する。
それが今の自分にできる役割だと、チョウジはシカマルの物言いから悟った。
小声でシカマルに了承を返し、踵を返す。


「おいおい。援軍でも呼びに行くつもりかよ」
「構わん。何人来ようが心臓のストックが増えるだけだ」

立ち去るチョウジをあえて見逃す角都と飛段の背後で、再不斬が首切り包丁を振り被る。


「その余裕がどこまで続くか見ものだな…!」

一瞬で相手の背後を取った鬼人の得物が光る。
角都の胴体を真っ二つにしようとした首切り包丁はしかし、ガキンという鈍い音だけにとどまった。


「相変わらず、かってぇな…!」

【土遁・土矛】。皮膚を硬化させ、攻撃力と防御力を劇的に上昇させる角都自身の術だ。

その効果のほどは、首切り包丁の鋭利な攻撃を鈍い音だけで済ませていることからも窺える。
角都の肩にとどまったまま、どれだけ力を込めようとも動こうとしない得物に、再不斬はチッ、と舌打ちした。


「俺にはどんな物理攻撃も通じないと前回学んだはずだが?霧隠れの鬼人」

以前、初対面で戦った際、首切り包丁の猛攻を受けきった角都が呆れ声を上げる隣で、飛段がにや、と口角を吊り上げた。

「斬り損なって残念だったなァ!代わりに斬ってやんぜ!!」


相方を斬れず仕舞いに終わった再不斬目掛け、鎌を振るう。
そのまま血を頂けば、いくら鬼人とて終わりだ。
愉しげに嗤う飛段の顔は直後、驚愕で歪んだ。


「俺を忘れてもらっては困るね」


再不斬の背後から現れたカカシがクナイで鎌を弾く。
三枚の刃が連なる鎌。
その繋ぎ目をクナイで押し切り、再不斬から遠ざけたカカシに、飛段はぴゅうっと口笛を吹いた。



「上手く連携しやがって…仲良しさんか!?」
「「誰がッ!!」」


宿敵同士のわりに息の合ったコンビネーション。
同時に否定する双方を、飛段はにやにやしながら見遣った。

血さえ鎌の刃先に付着してしまえば、こちらのものだが、それすらさせぬとばかりの再不斬とカカシの連携を見て、愉しげに笑う。

即座に反論する宿敵コンビに「やっぱ、仲良しじゃねぇか」とまたも揶揄する飛段へ、カカシは鎌を押しのけ、そのまま攻撃に転じた。

だが追撃する間もなく、角都がカカシに蹴りを入れる。
それを交差した両腕で咄嗟に防いだカカシだが、頭上から迫りくる能面の攻撃には対処が遅れた。


「【雷遁・偽暗】」

角都に従う能面の化け物の口から鋭い槍状の雷が発射される。
複数の槍状の雷は各々がカカシの【雷切】とほぼ互角の威力を有しているに加え、多発的攻撃を仕掛けてくる為、非常に厄介だ。
掠っただけでも相当のダメージを負うと判断し、カカシは即座にその場を離れた。

しかし、その離脱を許す敵ではない。


「遅い」

角都の腕が伸びる。切り離した腕から伸びる伸縮自在の触手。

カカシの足首を掴んだ角都がそのまま振り回す。
地面に撃墜し、苦悶の表情を浮かべるカカシへ飛段が間髪容れずに鎌を振り翳した。

しかしその行く手を、鎌よりも更に巨大な得物が封じる。


「ぐ…っ」
「軽いな」


飛段の鎌を易々と首切り包丁で退ける。
巨大な刃物を軽々と振り回す鬼人にとっては、三刃の鎌など軽い手応えだ。

飛段の鎌を弾くと同時に、鳩尾へ蹴りを入れる。吹き飛ばされた飛段が大木の幹へ強かに背を打った。

飛段と入れ替わるように、能面の化け物が再び躍り出る。
またも雷撃を放ってくる角都の分裂体に、再不斬は舌打ちした。


水遁は雷遁とは相性が悪い。
それがわかっているからこそ執拗に雷遁の性質を持つ能面をぶつけてくる角都を横目に、再不斬は眼を細めた。
雷撃を放ってくる化け物を引き連れ、地面に激突して倒れ伏せるカカシを見遣る。


能面の化け物が狙いをカカシに定めた。雷撃をカカシ目掛けて放つ。
複数の槍状の雷が、立ち上がろうとするカカシの頭上へ容赦なく襲い掛かった。


水遁を主に使う己を舐めて掛かっている化け物へ、再不斬が吐き捨てる。

「舐めるなよ」



発射された雷撃がカカシへ直撃する前に、再不斬が首切り包丁を投擲した。
自身への攻撃か、と角都が地面を蹴る。

だが再不斬の狙いは別にあった。


首切り包丁が地面に突き刺さる。
同時に、複数の雷撃が全て、巨大な得物へ引きつけられるように集束した。

カカシへ辿り着くはずだった雷撃までもが、首切り包丁一点に集まる。



「得物を避雷針にしたか…!」

首切り包丁を避雷針にして雷撃を地中へ逃がす。
再不斬の思惑通り、雷撃が集束されたおかげで、その場を離脱することが出来たカカシが、不死コンビから距離を取った。




「助かったよ」
「俺の手を煩わせるんじゃねぇよ、写輪眼のカカシともあろうものが」
「手厳しいね」

再不斬に礼を述べたカカシが苦笑する。
カカシと再不斬の背後で戦況を観察していたシカマルが二人に助言した。


「やはり、奴らを引き離し、個別に攻めるのが得策ッスね」
「連携攻撃を封じた上で、角都という奴を先に集中攻撃するわけか」

シカマルの提案に同意を返すカカシに、再不斬が面倒くさそうに頭を掻く。

「だとすると、あの不死身ヤローを足止めしねぇといけねぇぞ」
「それは俺がやる」


すぐさま返ってきた返事に、再不斬は振り返る。
視線の先、シカマルの決意の込められた瞳とかち合った。


「影真似で縛ってから引き離す」
「言うようになったじゃねぇか、小僧」

ハッ、と再不斬が笑う。だがその笑みは蔑みでも嘲笑でもなかった。

反面、カカシは懸念の色を交えた反論を返す。

「だが、シカマル。今のお前では無理だ」


天を仰ぐ。カカシの視線を追って、シカマルは眉を顰めた。

空は相変わらず、曇っている。影をつくるにしては光が足らない。
影を伸ばす距離にも影響がある。

だが飛段の能力を考えると、遠方から影を伸ばし相手を拘束できるシカマルが適役なのは確かだ。



「なんだなんだ。こそこそ俺らを倒す相談かぁ?」

飛段が挑発する。
鎌の柄でとんとん、と肩を叩く飛段の隣で、角都もまた、空を見上げた。


「大方、予想はつく。また、影とやらで縛りつけようって魂胆なのだろうが…」
「こんだけ曇ってりゃ、お生憎様って奴だな」

空が晴れていた時にはあれだけ連発していた影の術。
それを仕掛けてこないところを見る限り、今のシカマルには影真似の術が使えないのだろう。
そう、飛段と角都は認識する。

「影がなけりゃ、ヤツは脅威じゃねぇ。ただの小僧だ」

不死コンビから冷笑を浴びせられ、シカマルはギリ…と歯噛みした。
それを視界の端で捉えながら、カカシは不死コンビへ顔を向ける。


「無理はするな、シカマル。再不斬と俺でアイツらを個々撃破すればいい話だ」
「…いえ」

カカシの言葉に、シカマルは否定を返す。
曇天の下、それでも諦めない彼の瞳に見覚えがある気がして、カカシは瞠目した。

いつでも真っすぐで諦めない根性の持ち主──波風ナルを思い出す。



「大丈夫です…やれます」
「しかし、」
「…本人がやるって言ってんだから、やらせてやれよ、カカシ。何か考えがあんだろ」

見兼ねた再不斬が口添えする。そうして、シカマルに後ろ手で何かを差し出した。


「小僧。不死身ヤローはお前に任せる」
「ああ…──任された」


硬化する故に、角都に首切り包丁は通じない。
それを知っていながら再不斬は角都に斬りかかった。

それはひとえに手っ取り早く角都の血を抜く為だ。

角都の【土遁・土矛】は硬化させた部分は動かせないという弱点がある。
よって、斬りかかった肩のみを硬化するのは計算済みだ。それ以外の皮膚を硬化しておく必要もない。

要するにあの時、首切り包丁を片手で押し切ろうとしつつ、もう片手で血液用カプセルを角都の脇腹に注入したのだ。
つまりは首切り包丁自体が囮だったのである。

更に言えば、再不斬が首切り包丁で肩以外の場所を狙う可能性を考慮しなければならぬ角都は目の前の敵に集中する。
そんな時に、血液用カプセルという些細な注射の痛みに気づくはずもない。

以上から、すぐに抜き取れた角都の血が入った血液用カプセルを、シカマルに後ろ手で渡した再不斬は、内心、ナルトの計画通りに事が運んでいる事実に含み笑った。











曇天の下。
緊迫感が充満する空間で、不死コンビたる角都と飛段、宿敵コンビことカカシと再不斬が睨み合う。

双方の間で地面に突き刺さったままの首切り包丁が両者の間を裂くように、鈍い光を放っていた。


再不斬が避雷針代わりにした首切り包丁。
敵から距離を取った為、回収できずにいた巨大な刀を、飛段がまじまじと見遣る。

持ち上げようとした飛段は、「おもっ」とあまりの重さに眼を見開いた。


「汚い手で俺の首切り包丁に触れるんじゃねぇ…!【水遁・大瀑布の術】!!」


勝手に己の得物に触れられ、憤った再不斬が印を結ぶ。
直後、膨大な水が波となって、飛段と角都に押し寄せた。
大津波を回避するも、辺り一面が湖と化す。


その隙に一気に首切り包丁の許へ向かった再不斬だが、それを見越していたかのように、地中から角都の腕が再不斬の足首をつかみ取った。


「な…っ」
「得物をそう易々と手放すものじゃない。的になるからな」

必ず首切り包丁を回収しにくるだろうと察していた角都が、再不斬が水遁を使う前に秘かに、切り離した己の腕を地中に潜ませておいたのだ。
足首を地面に縫い付けられ、再不斬の動きが止まる。

その隙を逃すまいとばかりに、能面の化け物が口を開いた。


「飛んで火にいる夏の虫だ……【風遁・圧害】」

風遁の性質を持つ分裂体からの攻撃。高圧縮された竜巻が再不斬を襲う。
水飛沫が高く立ち上った。







「まずは鬼一匹目ってかぁ?」

今の攻撃は身じろぎできなければ直撃だったはずだ。
【風遁・圧害】に巻き込まれまいと大木の幹を駆け上がった飛段は、湖の中心に目を凝らす。
水飛沫で相手の姿が見えない。

が、その瞬間、飛段は嫌な予感がして、その場を飛び退いた。


自身の影。
それを追い駆けるように、軌跡を描いて大木の幹を這う細長い影。


「げぇ…!?曇ってりゃ、使えねぇんじゃなかったのかよ!?」

再不斬とカカシにばかり気を取られていた飛段は、影を操る術者にようやく意識を向けた。

シカマルの影。
自身の影を細長く伸ばして、相手を拘束する術。

確かに曇天では都合が悪いが、使えないのではない。
使わなかったのだ。

相手に曇天時では術を使えないと認識させることで隙を生ませる為に、あえて暫く【影真似の術】を仕掛けなかった。

しかし元々、己の影の表面積を伸ばして使う術。
自身の影に他の影を加える事で、操る影の範囲が増すものの、曇り空で薄くなった影では伸ばす距離に限界がある。

(ここで決める…っ)


「そんなに俺の鎌と能力が怖いかァ?離れたところからこそこそと…。情けねぇなァ、おい」


飛段が挑発雑じりの嘲笑を浮かべながら、シカマルの影から逃げる。
余裕綽々の笑みを浮かべていた飛段だが、直後、ハッ、と眼を見開いた。


シカマルの影が分岐する。
木々が枝分かれするかのように、四方八方から飛段を追い詰める。
更に細く長く伸びる影の猛攻。
それらを回避し続けていた飛段は、ふと何かに気づいて、地面を蹴った。


先ほどまで自分がいた場所。ちょうど影を射抜くように投擲された刃には見覚えがある。

チャクラ刀。
角都と飛段の影をそれぞれ地面に縫い留め、動きを止めた武器である。


使用者のチャクラ性質を吸収する特別な金属で出来ているチャクラ刀。
吸収したチャクラによって使用者の術に基づく効果を発揮するソレは、シカマルの場合は【影真似の術】と同じ効力を発揮する武器となる。


(影で拾って投げたのか!?)

チャクラ刀自体が【影真似の術】を発動しているソレに影を射抜かれればアウトだ。
地面に落ちていたチャクラ刀。

その内の一本を、影を使って自身へ投擲したシカマルを視界の端で捉え、(なんつー器用な奴だよ)と飛段はくっと口角を吊り上げる。


しかし、今のチャクラ刀も回避できた。
大木の幹を駆け上り、影に注意を向けていた飛段は、やがて自らの勝利を確信した。
三刃の鎌で、大木の幹に一線、傷をつける。


「どうやら此処までが、てめぇの影の限界範囲のようだなァ」

シカマルの細く細く伸ばされた影が、三刃の鎌の傷よりも先へ動かない。
影の活動限界を知って、飛段はニヤリ、とシカマルを見下ろした。


「術を使うことは出来るようだが、この曇り空じゃ、いつもより力が出ないってか?」

苦々しげに歯噛みするシカマルを見下ろした後、角都は天を仰ぎ、神への祈りを捧げた。


「これも邪神様のお導きってヤツかねぇ…天は俺らに味方したな」













「…流石鬼人は一筋縄じゃいかんな」
「そりゃどうも」

先ほど、足首を掴んで的にした再不斬は水分身。
風遁の攻撃を直撃したはずの再不斬はすぐさま水と化し、カカシが首切り包丁を奪還する。

カカシから受け取った首切り包丁を振るう再不斬の猛攻。
飛段がシカマルの影に追われている一方、角都は再不斬とカカシを相手に防戦していた。

とは言うものの、実質、三対二だ。角都に従う能面の化け物二体。
それらから攻撃を仕掛けつつ、角都は再不斬が放つ首切り包丁の斬撃を、硬化した腕で受け止めた。


「馬鹿の一つ覚えか…俺に物理攻撃は効かないと言っただろう」
「ああ、そうかい。物覚えが悪いんでね──【水遁・水龍弾の術】!」


首切り包丁の影で印を結んだ再不斬。
その背後から巨大な水の龍が生まれゆく。


「同じ手を二度受けると思うか…ッ!?」

至近距離からの水遁を受け、角都の身体が宙に舞う。
しかし、先日も先ほども再不斬はこの術を何度も使っている。
故に威力の程を知っている角都は一瞬、気を緩めた。

しかしそれが命取りだった。




「ぬお…!?」
「同じ手かどうか、てめぇの身体に聞いてみな!」

予想以上の水遁の威力に、角都が怯む。再不斬の足元の水が減っている事に気づいて、「そうか…!」と得心がいったように、歯軋りした。

「この為に、先ほどの術でこの場一帯を水浸しにしたのか…!」

湖と化した足元の水をも巻き込んでの水龍。
【水遁・大瀑布の術】で生み出した多大な水を含んだ龍は更に激しさを増して、角都に襲い掛かる。

「ならば術者を叩けばいい話だ…鬼退治といこう」


角都の目線が再不斬を射抜く。
二体の化け物が一気に再不斬目掛けて飛び掛かろうとしたその瞬間、チッチッチッチと鳥の鳴き声がした。

怪訝な表情を浮かべるのも束の間、角都は己へ迫りくる水龍を見る。
その中にいるはずもない敵影を認め、角都の顔が驚きに満ちた。



「な、に!?」
「鬼退治は出来なかったようだな…!」


バチバチ…と雷撃が迸る。
雷を纏った水龍の中、光り輝く手を己目掛けて突き出すカカシの姿が角都の瞳に飛び込む。
敵を認めると同時に、水龍が凄まじい速さで角都に飛びついた。


「が、は…!?」
「うおぉおおぉ…!!」


【水遁・水龍弾の術】。
その水龍の内部をあえて突き進み、一気に接近したカカシの手が角都の胸に穴を開ける。



水龍が咆哮する。
雷を纏った水の龍が曇天の下で激しく光り輝いた。










「角都…ッ!?」

凄まじい雷撃を迸らせる水龍。
眩いばかりの光が曇天の下で炸裂する。


空中で胸を貫かれた相方を見上げ、流石の飛段も声を荒げた。
そのまま落下してゆく角都の許へ向かおうとした足は、しかし、己の意思に反して動こうとしない。


「な…馬鹿な…」
「ようやく──【影真似の術】成功」

遠方から聞こえてくる声。
印を結び終えたシカマルへ、飛段は唯一自由の利く口で喚き散らした。

「なんでだよ!?こっから先、影は届かねぇんじゃなかったのかよ…!?」


三刃の鎌で、影の伸びる距離を測った傷。
大木に一線を引いた傷は、依然としてシカマルの影の領域外だ。

にもかかわらず、身体の支配権を奪われた飛段は、不可解な現状に大声で喚く。
うるさそうにしながら、シカマルは僅かに首を巡らせた。

シカマルの動きに合わせて、飛段も目線を別方向へ向ける。
その視線の先、角都の胸を穿ったカカシの光り輝く手を見て、ようやっと飛段は気づいた。


「てめぇ…まさか、あのヤローの術の光で…!」
「ご名答」


寸前、再不斬の【水遁・水龍弾の術】の中に紛れ、角都に接近したカカシは【雷切】を放った。
その【雷切】の光でシカマルの影の活動範囲が増えたのだ。
目に映る影だけを追い駆け、新たな光による影の存在に気づけなかった飛段の落ち度であった。


光あるところに影あり。即ち、光がないと影はできない。
だが逆を言えば、光があれば影は生み出せる。

身体の支配権を奪われ、激怒する飛段の前で、シカマルはうっすら笑ってみせた。


「影がなけりゃ、つくるまでだ」

















「…飛段が触れるだけで…激怒した刀を…相方には足場にさせるとはな…」
「今回だけだ。二度はねぇよ」


水の龍が雨となって降り注ぐ。
それに雑じって落下した角都が水飛沫をあげて撃墜した。

息も絶え絶えにしながらも、言葉を紡ぐ角都に舌打ちしながら、再不斬は忌々しげに吐き捨てる。




【水遁・水龍弾の術】を放った瞬間、再不斬は思いっきり首切り包丁を振り回した。
その刃の上に乗ったカカシが、首切り包丁を足場にして、角都目掛けて一気に飛躍する。

カカシ本来の跳躍力に加え、再不斬の怪力を加えた遠心力。
上乗せされた飛躍力で、水龍の中を突っ切り、角都の目の前にカカシが一瞬で躍り出たのだ。

そして【雷切】を放った結果が、今の角都の有様だ。
倒れ伏せた角都の傍へ降り立ったカカシが、己の【雷切】で穿った男の身体を見下ろす。

確実に心臓は潰した…だが。


「やはり。本体を叩いても動くか…」

能面の化け物がのそり…と、カカシと再不斬を取り囲む。
最初に【雷切】で心臓を一突きした際も能面の分裂体は動いていた。

よって現在、主を失っても、風遁の化け物と雷遁の化け物は、敵を殲滅せんと、ぱかり、口を開く。



「行け、シカマル!」
「影真似の小僧!てめぇはてめぇの為すべき事をしやがれ…!」



化け物からの攻撃を回避しながら、カカシと再不斬が叫ぶ。
秘かに影で拾ったチャクラ刀を腰のポーチに収納したシカマルは、改めて飛段を見据えた。







天は敵に味方した。
曇りゆく空を仰ぎ見たシカマルはそう思わざるを得なかった。
空も戦況も雲行きは怪しく、敵は不死身だ。


しかし、それがどうしたと言うのだ。


カカシの【雷切】の光を利用して敵を見事拘束してみせたシカマルは、空を仰いだ。

飛段の手から三刃の鎌を取り落とす。
地面へ転がった鎌のカラン、という金属音が、次第に晴天となりつつある空の下で響き渡った。


徐々に太陽が顔を出し、晴れゆく空。
ナルの瞳そっくりな青い空を眩しげに見上げ、シカマルは不敵に笑った。





「それじゃ…愉しい愉しい散歩と洒落こもうぜ──不死者さんよ」
 
 

 
後書き
シカマルの能力が便利すぎるので、曇天では晴天時よりも影の伸ばす距離や力に限界があるという事にさせていただきました。
光がないと影ができないというものをコンセプトに書いたので、このような戦闘にさせてもらいました。
ご容赦ください。

また、チョウジといのは、原作では役に立た…げふんげふん。活躍できなかったので、こういった形にさせてもらいました。すみません(汗)


次回もどうぞよろしくお願い致します!!

 
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