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幻想甲虫録

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死神甲虫オズワルド

手当てを終えたソウゴは今霊夢と共に人里へ向かっていた。ソウゴは先ほどの戦いのせいで重傷を負い、全身包帯を巻かれた状態。ミイラ男ならぬミイラ虫となっていた。
人里に行く数分前、霊夢はソウゴの手当ての最中ヘルクスと話していたが、彼からこんなアドバイスをもらっていた。





ヘルクス『ソウゴ、今のお前は弱者だ。強者として成り上がるのであれば多くの虫たちと戦え。そして相手の虫とパートナーの動きをよく見て行動を起こせ。あと博麗の巫女。もはや努力が報われないとかどうとかの問題じゃない……これをきっかけに修行をしなければ今のような戦いになるぞ』





ヘルクスのアドバイスを思い出しながら人里へ向かう霊夢とソウゴ。今のソウゴは飛ぶこともままならず、安静にしていなければならなかったので、霊夢の頭の上に乗っていた。










ソウゴ「…………ん?ねえ霊夢、あれって………」


団子屋の近くで妖精2人とカブトムシ2匹が団子を食べている。その人物と甲虫は霊夢とソウゴがよく知る者だった。


霊夢「あっ、最近賽銭入れてくれるチルノたちじゃない!」


団子を食べていたのは氷の妖精『チルノ』とその親友『大妖精』、そして彼女たちのパートナーである赤いカブトムシと明るいオレンジ色のノコギリタテヅノカブトだった。
青いマフラーを巻いた赤いカブトムシの方は『鎧丸』、チルノの相棒。共に最強を目指しているが、いつもチルノのいたずらに振り回されているのが唯一の悩みの種。緑のスカーフを巻いた明るいオレンジ色のノコギリタテヅノカブトの方は『ツルギ』、大妖精の相棒。鎧丸の家来にして、彼女と共に鎧丸とチルノの成長を見守る甲虫である。


鎧丸「これはこれは、霊夢殿にソウゴ殿ではござらんか!」

チルノ「ヤッホー、霊夢!ソウゴ!」

ソウゴ「こんにちはチルノ、大ちゃん、鎧丸、ツルギ!」

もう1匹の鎧丸?「お前たちの知り合いまで来るとは……全く、にぎやかなことだ」

霊夢「あら、鎧丸のお父さんまで来てたのね」


そして鎧丸とツルギ以外にももう1匹のカブトムシがいた。姿は鎧丸そっくりだが、彼とは違って青いマフラーを巻いておらず、体も深紅。
彼の名は『鎧凰丸』。霊夢の言う通り、彼は鎧丸の父親。加えて冬の妖怪『レティ・ホワイトロック』を相棒とするカブトムシだった。


ソウゴ「何で君たちがここにいるの?鎧凰丸さんまでどうしたんですか?」

鎧凰丸「人里をうろついていたらたまたま息子たちと出会ったのだ。だからこうして皆と団子を食べている」

チルノ「そうそう!」

大妖精「チルノちゃんと鎧丸さんは毎日ですが、今日私たちもちょうど霊夢さんの所に行ってお賽銭を入れようと思ってたんです」

チルノ「そうだよ。さいきょーのあたいに感謝しなさい!」

ツルギ「いつも落第点のお前も感謝という言葉を知ってたのか……」


幻想郷には『寺子屋』という今で言う学校と同じものがあり、チルノと大妖精はその施設の生徒である。自称最強を名乗るチルノだが、ツルギの言う通り試験の成績はいつもクラスの中では最下位だった。
例えば算数の試験があったとする。どういうわけか答えが『9』の式は正解し、それ以外は全て不正解。鎧丸も彼女の成績を上げようといつも勉強を教えているが、いつも徒労に終わり、毎回教師の雷が落ちるため、鎧丸もとばっちりを食らっている。彼女のいたずらのみならず頭を抱えていた。
するとツルギがなぜ霊夢の頭に乗っているソウゴがミイラ男ならぬミイラ虫状態なのか不思議に思い、声をかけた。


ツルギ「ところでソウゴ、そのケガは一体?」

ソウゴ「これ?正邪とそのパートナーに急に襲われて……」

霊夢「しかもあいつにジャンケンの常識をひっくり返されたの。グーはチョキに、チョキはパーに、パーはグーに勝つでしょ?ソウゴがローリングスマッシュ出したら、正邪のオオクワガタのハサミ技が勝ったのよ。改めてあいつの能力の恐ろしさを知った……今思い出しただけでもゾッとするわ………おかげでソウゴ死にかけたのよ?」

大妖精「死にかけた!?大丈夫なんですか!?」

ソウゴ「うん。でもヘルクスって虫が来て俺を助けてくれたんだ。ヘルクスが来なかったら今頃俺は………」


改めてヘルクスが来ず、ゲイツに殺される自分を想像してみる。鳥肌どころか全身にチクチクするような痛みが走ってきた。


ソウゴ「うっ…イテテテテテ!なんかチクチクするんですけど!」

鎧丸「ああソウゴ殿!無茶は禁物でござる!」

霊夢「変なこと想像するからでしょ!」

ツルギ「……一度永遠亭に行って薬をもらってくるか?」


呆れ顔のツルギ。しばらくソウゴたちを見ていたが、彼らをよそに鎧凰丸にパートナーであるレティがいないことを問う。


ツルギ「ところで鎧凰丸様、レティがいませんが…」

鎧凰丸「レティ殿か?彼女なら今洞窟で休んでいるぞ?」

ツルギ「そういえば冬の妖怪でしたね」


一方で大妖精も新聞の記事の話題を出していた。出したのはもちろんソウゴが甲虫の王者にして魔王になるかもしれないという話題だ。


大妖精「ところでソウゴさん、今日の新聞読みましたか?」

ソウゴ「あー、あれ?魔理沙が持ってきたのを読んだんだけど………確かに言ったのはマジだぜ!?どう考えてもおかしいじゃん!!あの烏天狗、せめてもうちょっと間ァ開けてから流してよ!!」

鎧丸「文殿の仕業でござるか……全く、パパラッチにもほどがあるでござる……」


だがソウゴたちは知らなかった。地霊殿にて朝食後、ウォズがこいしと共にあの烏天狗をしばきに行ったことを。
ところがソウゴたちが駄弁っているうちにだんだん人里が何かと騒がしくなってきた。


チルノ「一体何だろ?また変な虫でも現れたのかな?」

団子屋店主「変な虫……?ああ、あいつらな。おいあんたら、早いトコ逃げた方がいいぞ。ここ最近黒いクワガタとそいつを使う男が無差別に人を殺してるんだ」

鎧凰丸「何?無差別殺人?」

鎧丸「……嫌な予感がするでござる………すぐに行かねば!」


店主の話を聞いた鎧丸が何かを察したような表情をし、騒ぎが起きている場所まで飛んでいった。


チルノ「あっ、待ってよ鎧丸!パートナーのあたいを置いてくなー!」

団子屋店主「あっ、ちょっと!?」


残ったのは先ほどまで鎧丸とチルノが食べていた団子。やれやれといった表情でツルギは財布を取り出し、金を店主に差し出す。


ツルギ「店主、金はここに置いておく。釣りはいらん」

大妖精「ツルギさん、チルノちゃんと鎧丸さんが行っちゃいましたが…」

ツルギ「手を煩わせるわけにはいかぬだろう。まだ未熟な一面もあるのだ、我々も行かねばなるまい」

団子屋店主「ちょ―――――」


ツルギが金を払ったのを確認すると、全員店主を無視してチルノと鎧丸が向かった騒ぎの中心へ駆けつけていった。
店主が言っていた黒いクワガタ。一体どんなクワガタが暴れているというのか。










全員『!!!!!!!!』


騒ぎの中心へ駆けつけた霊夢たち。そこにはすでにチルノと鎧丸も来ていたが、霊夢たちはそこで恐ろしいものを目の当たりにした。


小太りの中年男「ひ、ヒエェェェ!!お願いだ!有り金全部やるからどうか見逃してくれぇ!!」

オズワルド「………………」

ソウゴ「あれは………あのクワガタは………見たら必ず不幸になる『死神甲虫』オズワルド!!」


そこにいたのは団子屋の店主が言っていた黒いクワガタことアルケスツヤクワガタのオズワルド、そして家を出る前オズワルドと妻に暴力を振るっていた夫。
夫はオズワルドに命令を下し、オズワルドは大顎で中年の首を挟む。止めようとする間もなく中年は首をへし折られ、同時に骨が砕ける不気味な音が全員の耳に入った。


霊夢「なんて…………ことを…………!!」

オズワルド「………………(恨むならあの歩く粗大ゴミにしてくれ。俺が人を殺したなんて、死んだパートナーたちに口が裂けても言えん)」

夫「チッ、たったこれだけかよ。この役立たずめが!!」


中年の財布を懐から抜き取った夫は中身を確認するも、あまり入っていなかったのか、八つ当たりと言わんばかりにオズワルドに殴る蹴るといった暴力を振るう。
パートナーの虫になんてひどいことを!この光景を見ていた霊夢たちに抑えられない怒りが沸き上がってきた。


鎧丸「貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

チルノ「ちょ、鎧丸!?」

ツルギ「鎧丸様、お待ちくだされ!今突っ込めば逆にあなたが!」


夫の横行に怒りを爆発させ、チルノとツルギの制止も聞かず夫に襲いかかる鎧丸。そんな彼に夫は次の命令をオズワルドに下した。


夫「クソが、邪魔が入りやがった!あいつを殺せば前言撤回してやる!」

オズワルド「………悪く思うなよ」


鎧丸はオズワルドが襲いかかる前につかんだ。そのまま羽を広げ、竜巻のごとく回転しながら空中へ飛び上がる。
このナゲ技、トルネードスローとは全く違う。ソウゴと霊夢がそう確信したその時だった。


鎧丸「ウォォォォォォオオオオオオオオオオ!!『スーパートルネード』ウブッ!?」


突然鎧丸の身に異変が起きた。空中で突然回転が止まったかと思うと、鎧丸の方から何かを吐き出すような生々しい音が。


鎧凰丸「………全く、いつになればスーパートルネードスローを目を回さずに決められるようになるのだ」

鎧丸「オボボボボボボボボボボボボボボボ」


そう、鎧丸が出した技はソウゴのトルネードスローを超える究極必殺技『スーパートルネードスロー』。本来なら発動すると強力なのだが、鎧丸はその技を出すたびにいつも目を回し、吐いてしまうのだった。
地面に滴る吐瀉物と空中でオズワルドをつかんだまま吐いている鎧丸を見て呆れる鎧凰丸。オズワルドも呆れたのか、ため息をついた後羽を広げ、鎧丸を地へ放り投げてしまった。


オズワルド「それだけか」

チルノ「鎧丸!!」

大妖精「鎧丸さん!!」

ツルギ「鎧丸様!」


目を回した鎧丸にチルノと大妖精が駆けつける。意識はあったものの、焦点が合わない。チルノたちと世界が歪んで見える。
オズワルドは地へ降り立ち、残りの甲虫に目を向ける。するとツルギが霊夢たちを守るように立ちはだかった。


ツルギ「それでは勝負続行は無理だ。チルノは鎧丸様を安全な場所まで運び、休ませろ。大妖精はサポートを頼む」

大妖精「わ、わかりました!」

チルノ「うん……鎧丸、あんたはあたいとさいきょーを目指すことを約束したでしょ!いつも迷惑ばっかりかけてるけど……それでもあんたはあたいの最高のパートナーなのよ!?あんたが死んだら、あたい………!」

オズワルド「…………ふむ」


これをオズワルドは確かにあいつらは可能性があるといった目で見つめ、夫はそれを反吐が出るぜと貶めていた。


大妖精「ツルギさん、オズワルドさんが固まってます!今のうちに『スーパーサイドロックボム』を!」

ツルギ「承知した、大妖精」


大妖精にうなずいたツルギは自身の得意とするナゲ技『スーパーサイドロックボム』を放とうとオズワルドに突進。しかし。


ツルギ「秘術!『超・兜落とし(スーパーサイドロックボム)』!!」

オズワルド「ぬるい」


余裕綽々とかわされた。その上隙を突かれ、オズワルドに1度2度とどつかれる。


オズワルド「この程度で俺を倒そうなど思い上がりにもほどがある。教えてやろう、死神の戦い方とはこういうものだ」


体を横に向け、飛びかかって大顎でツルギをひっくり返し、押さえつけながら地面に引きずる。
ハサミ技『サイズ』か?だがツルギから一旦離れたかと思うと、追い討ちをかけるようにまた飛びかかって大顎でツルギを引きずる。またさらに一旦離れて飛びかかり、大顎でツルギを引きずり、弱ったのを確認するとオズワルドは空へ。


鎧凰丸「やはりか……あの技はただのサイズじゃない」

大妖精「逃げてー!!」


大妖精の叫びもむなしく、オズワルドは空中で羽を閉じ、風車のように体を回転させながら倒れたツルギまで急降下。


オズワルド「『スーパーサイズ』!!」


大顎がそのままツルギに勢いよく叩きつけられた。


ソウゴ「ツルギーッ!!」

霊夢「そんな……!」

大妖精「嘘でしょ……ツルギさんまで……!!」

ツルギ「ゴ………ゲボァ………」


土煙が立ち上ぼり、晴れてくると変わり果てた姿となったツルギが現れた。


ソウゴ「お前…くっ……!」


巨大化しようとするソウゴだが、再び全身に痛みが走り、顔をしかめてしまった。


霊夢「ダメ!今のあなたはケガしてるのよ!?」

ソウゴ「でも俺が行かなきゃ……このままじゃ鎧丸とツルギが……くそっ!」

鎧凰丸「ソウゴ、今は巫女殿の命に従え。お主は完治するまで体を休めるのだ。奴はワシに任せてくれぬか?」

ソウゴ「鎧凰丸さん?あなたが代わりに?」

霊夢「でも…あなたまでやられたら!」

鎧凰丸「大丈夫だ巫女殿。ワシを信じろ」


鎧凰丸は微笑むと、ソウゴたち同様巨大化。そのままオズワルドに立ちはだかる。
前に出た鎧凰丸に夫は憎らしい笑い声をあげた。


夫「ヒャッハッハッハッハッハッ!!所詮ゴキブリと虫ケラの分際で何ができる!!俺はこいつを使って好き放題すんだよ!!金も人里も全部俺のもんだ!!俺に逆らう奴など、こうなって当然なんだよ!!」


夫は憎らしい笑い声をあげた後、スーパーサイズにより倒れたツルギをサッカーボールのように蹴り飛ばした。


ツルギ「グフ………」

大妖精「ツルギさん!」

ツルギ「わ………我はなんとか無事だ………それより大妖精、我と鎧丸様……そしてチルノを連れて逃げるのだ…………」


ツルギの意識はここで途絶えた。


大妖精「う……うわああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


相棒が倒れた。鎧丸も戦闘不能。大妖精の叫び声は人里全体に響き渡り、霊夢とソウゴも直感でわかった。あの男は人間じゃないと。


夫「もっと叫びなぁ、メスガキィ!!次はテメェをターゲットにしてやるからよォ!!ヒャハハハハハハハ!!アーッハハハハハハハハハハハ!!」

ソウゴ「メチャクチャだ……まるでケダモノにも見える………」

霊夢「妖怪より妖怪らしい人間よ……あれは」

夫「テメェらゴミ虫みてぇな雑魚共が俺のオズワルドにかなうもんかぁ!!この死神クワガタは最強の虫で『大事に扱っている』からなぁ!!」

オズワルド(何が『大事に』だ。それに俺は最強と名乗ったことなど一度もない。歩く粗大ゴミの分際で………って、ん?)


見ると、鎧凰丸の目が冷ややかとなっていた。だがその視線はオズワルドではなく、夫に刺さっていた。





まるで養豚場の豚を見るかのような目で。





鎧凰丸「『大事に扱っている』?くだらん。そもそも、貴様はそのオズワルドやらに暴力を振るっていたではないか。『ゴミのように扱って捨てる』の間違いではないのか?」



ブチッ



『ゴミのように扱って捨てる』の間違い。その言葉に夫の何かが切れたような音がした。


夫「…………殺せ。ぶちのめせオズワルド。二度とその口を利けなくなるぐらいグチャグチャにしろ!!その次はあのメスガキ共も殺せ!!」

オズワルド「チッ……了解」


苛立ちながらも鎧凰丸に襲いかかる。鎧凰丸も技を放つためにオズワルドに突進した。


オズワルド「『バーニングバースト』!!」

鎧凰丸「『コンプリートスマッシュ』!!」


互いの角と大顎がぶつかり合った。


霊夢「あいこ!?」

鎧凰丸「ッ………!」

オズワルド「ぬぅ………っ!」


だがあいこであるにもかかわらず、鎧凰丸の方が若干大きく後ずさっている。
角と大顎を押し合っている中、鎧凰丸が急に口を開いた。


鎧凰丸「死神よ、オズワルドといったな。あの男に道具として扱われているが、それでいいのか?お主自身にも思うところがあるのではないのか?」

オズワルド「………このままでいいから話を聞いてくれないか?」

鎧凰丸「何だ」

オズワルド「お前の言い分はごもっともだ。どの道俺はわざと負けてあの歩く粗大ゴミと縁を切るつもりだったんだが………」

鎧凰丸「わざと負ける?お主、正気か?」

オズワルド「あいつの目的を聞いて改めてわかった。あいつには生きる価値もクソもない。これで言うことを聞く必要がなくなった」

鎧凰丸「………本当にそれでいいのか?」

オズワルド「構わん。もううんざりしていたところだ…………」


そして互いの角と大顎が弾かれ、互いに大きく後ずさる。オズワルドは今度こそ仕留めようとスーパーサイズを放つ体勢に入った。


オズワルド「ゼェ……ゼェ……ここで死にさらせ……!」


だがオズワルドに疲れが見えていることには鎧凰丸自身にも、霊夢とソウゴにもわかっていた。
そして。



ガシッ



オズワルド「ぐっ!?」

鎧凰丸「見せてやろう、死神。戦いの年季の違いを………そして、究極必殺技を超えた『超絶必殺技』を!!」


決着の時が訪れた。オズワルドをつかんだ鎧凰丸は息子と同じく羽を広げ、竜巻のごとく回転しながら空中へ舞い上がる。


鎧凰丸「オオオオオオオオオオオオオオオオ!!ゼヤァ!!」


オズワルドを地に叩きつけるように投げつけ、宙を舞ったオズワルドが背中をつく前に素早く接近するように地へ降り立つ。


鎧凰丸「これぞ我が極み!我が修練により鍛えられし超絶必殺技!!『極トルネードスロー』だァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


追い討ちをかけるようにオズワルドを逆さにしたままつかみ、ソウゴのトルネードスローのように大回転。放り投げると同時にオズワルドは夫のところまで吹き飛ばされた。


夫「ゴブァ!?」


夫はオズワルドもろとも建物に激突し、鎧凰丸の勝利に終わった。


大妖精「や……やった……!」

チルノ「やったー!!鎧凰丸が勝ったー!!」

ソウゴ「すごい……あれが鎧凰丸さんのトルネードスロー………」

霊夢「ソウゴのトルネードスローとは大違いだわ……」

夫「ッッッ………!!」

オズワルド「…………」


鎧凰丸に負けたオズワルド。家を出る前夫が妻に手を出した時と同じように暴力を振るわれる。


夫「この役立たずめ!!グズが!!ゴミ虫が!!何あの雑魚に負けてんだコラッ!!」

オズワルド「…………」

夫「聞こえてんのか、おい!!勝手に負けやがって!!一体何様のつもりでいやがるんだ!!ハチミツ漬けに―――――」



ブヂィッ



夫「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!俺の指がァァァアアァアァアアアァァァァアァアァアァアアアアアアァァァァアアァアアァァァァァアアアアァァァアアアァアアァァァアァアァァァァ!!!!?」


それは誰もが絶句するような光景だった。鎧凰丸も思わず唖然とするほどだった。
オズワルドが何を思ったのか、自身のパートナーの指を大顎で引きちぎったのだ。地に落ちる指、傷口から噴き出す血。


オズワルド「………『バーニングバースト』」


それだけでは飽き足らず、鎧凰丸に決めようとして決められなかったダゲキ技『バーニングバースト』で夫を何度も殴り、最後の気合いの一撃で別の建物に叩きつける。


夫「貴様ァァァァァァアアアアアアアア!!!何の真似だぁ!!!この俺を裏切るつもりかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

オズワルド「裏切る?フン、寝言は寝てから言え。お前に拾われた時から一度も主だと思ったこともなければ、パートナーと認めたこともない。せいぜいお前はただのケダモノ、歩く粗大ゴミ……いや、『道端にへばりつく牛の糞のようなゴミ』としか思ったことがないな」

夫「ゴミ!?役立たずのグズ野郎の分際で俺を粗大ゴミやら牛の糞だと!?」


睨みつける夫を無視し、オズワルドは鎧凰丸に近づくと、こう言い残して飛び去っていった。


オズワルド「礼は言わんぞ、鎧凰丸。後はお前たちの好きにするがいい」


オズワルドを失った夫は霊夢たちを憎悪の目で睨みつけながら、奇声を混じらせながら襲いかかってきた。


夫「クソがクソがクソがァァァァァァァァァァ!!!俺の人生を狂わせやがってェェェェェェェェェェ!!!テメェらまとめて地獄に落としてやるァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

鎧凰丸「救えん男だ………『コンプリートスマッシュ』」

夫「#Ω◎※▲Σ〆℃*■仝%∴〓∞☆¥£α×□ω$々@ゞ§;≠⇔○♪♂±♭⊥∋∬‡⊿√△●ŧ≒∧¢∠∇∃¶!!!!!」


野球の満塁ホームランのごとく敵を吹き飛ばすダゲキ技『コンプリートスマッシュ』。鎧凰丸に角で吹き飛ばされた夫はどこかへ消えてしまった。










さて、夫が飛ばされた場所は竹林。鎧凰丸とオズワルドに対する憎悪を抱え、何度も地面を殴っていたが。


ウスバクワガタ「…………」

夫「何だぁテメェ!!俺が悔しがってるのがそんなにおかしいか!!」


黒い布を身にまとったウスバクワガタに睨まれ、自分の憎悪をぶつけようと殴りかかろうとしていた。
だが突然その手を止めると、機転を変えた。こいつを使えばオズワルドとあのカブトムシを殺せるんじゃないのか?と。


夫「ああ~、そうだ……その手があったぜ。こいつを調教すれば―――――」


が、それも束の間。ウスバクワガタは羽を広げると、ダゲキ技『ダンガン』できりもみ回転しながら夫の肩を貫いた。


夫「ヒギャアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


血を噴き出す暇もないままウスバクワガタに何度も大顎で斬りつけられ、やがて全身の至る所から血が噴き出す。


夫「うぐ……クソがぁ………!この俺が虫に裏切られ、虫に殺されるだと……!?ふざけんじゃねぇ………!こんな結末………地獄でも断じて認めねぇぞ…………!!例え首ひとつになろうと…………オ………レ………は………………」


その恨み言を最後に、夫の首は切断された。


ウスバクワガタ「………………」


ウスバクワガタは自分が殺した夫になど目もくれず、むしろ興味がないという風にその場を立ち去った。
しばらくして夫だった遺体に1人の少女と1匹のコクワガタが近づいてきた。ピンクの洋服にニンジンの首飾り、頭に生えた兎の耳が特徴的な少女の方は『因幡てゐ』。一方でコクワガタの方は『レーザー』、てゐのパートナー。上半分は黄色と黒、下半分は青く禍々しい紋様が特徴的だった。


てゐ「ありゃりゃりゃ、ここで声が聞こえたから来てみたけど…こりゃひどいね……」

レーザー「うわぁ……確かこいつ、最近人里で問題起こしてた奴だよな?この様子からして、たぶんパートナーに裏切られたんだろうなぁ……しかも迷いの竹林で………」

てゐ「どうするレーザー?この人間の家族に伝える?」

レーザー「別にいいんじゃね?こいつは散々好き放題してきた罰が当たったんだ。ディアボロのことも頭に入れとかなきゃなんねぇ……永琳たちに伝えねぇとな」

てゐ「あいよー」





てゐとレーザーが立ち去ってしばらく経つと、ディアボロが夫の遺体の血をすすっていた。
だが途中ですするのをやめると、その血を吐き出した。


ディアボロ「最近人里で暴れてるこいつの血肉の味を期待してたが……まずい味を出してやがる!もっといい血はねぇのか………俺の欲求を満たしてくれる血肉はねぇのか………!」


ディアボロは憎々しげに呟いた。 
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