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歪んだ世界の中で

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第十一話 テスト勉強その十六

「皆僕のよさをわかっていないって」
「はい、いつも言っていました」
「そうだね。そしてそれはね」
「僕もなんですか」
「うん。今わかったよ」
 そうだというのだ。
「今だけれどね」
「そうですか。僕にも」
「自分のこととは思わなかったんだ」
「そうでした」
 こうだ。真人も答える。
「思いもしませんでした」
「自分のことってわからないからね」
「そうですね。ですが誰にも」
「いいところがあってね」
「遠井君にも僕にも」
「あるんだよ。ただね」
 彼等のことも思い出した。そのうえでだ。
 希望は彼等についてはだ。顔を曇らせてこう言った。
「そうじゃない人もいるね」
「あの人達ですか」
「そう。あの人達はね」
 違うというのだった。
「いいところとかはね」
「確かにあの人達の性格は」
「悪いよね」
「それもかなり」
 真人も言う。
「僕から見ましても」
「そういう人達もいるね」
「残念ですが」
 こう前置きしてからだ。言う真人だった。
「色々な人がいますので」
「だからだね」
「そうした人もいます」
 非常に性格の悪い、そうした人間もいるというのだ。
 そしてだ。真人は希望にだ。この人間の話を出したのである。
「小学校と中学校でいましたね」
「あの時に?」
「ほら、大峪君ですよ」
「ああ、彼ね」
「彼もでしたね」
「性格悪かったね」
 希望もだ。その彼のことを思い出した。その大峪という人間のことをだ。
 それでだ。希望は顔を曇らせて、彼のことを思い出したが為にそうなってだ。そしてそのうえでだ。真人に対してこうしたことを言ったのだった。
「底意地が悪くて強い相手には強くて」
「弱い相手には強かったですね」
「うん。しかもケチでね」
「かなり性格が悪かったですね」
「小学校と中学校で一番性格が悪かったですね」
「執念深かったしね」
 それがだ。その大峪という人間だった。
「学校の勉強はそこそこできたけれどね」
「性格は最悪でしたね」
「そうだね。ああした人間もいるね」
「はい、残念ですが」
 またこう答える真人だった。
「ですがそうした人間もいると踏まえてです」
「人を見ていればいいんだね」
「僕はそう思います」
 微笑んでだ。真人はこう希望に話す。
「悪も踏まえて。そのうえで」
「善も見る」
「どちらもこの世の中にあるものですからね」
 そのことを頭に入れてだ。そうしてだというのだ・
「考えていきましょう。では」
「うん、それじゃあね」
「頑張りましょう」
「そうしようね。お互いね」
「はい」
 笑顔で応える真人だった。そうしてだ。
 希望は笑顔で自分のクラスに向かった。その途中で希望と別れた。そこから自分のクラスに入るまでは一人だった。だがすぐにだ。彼は一人ではなくなった。


第十一話   完


                   2012・3・24 
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