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歪んだ世界の中で

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第九話 決意を述べてその十二

「本当にね。けれど今は」
「違ってきましたね。遠井君自身が」
「僕ね。今目の前が明るいんだ」
「明るいんですね」
「そうなったよ。一学期は本当に目の前が真っ暗になって」
 実際にそうなったのだ。絶望に覆われたのだ。
 それでその深い絶望の中でだ。闇を見てだったのだ。
 彼はだ。こう言ったのだった。
「それが余計に僕を暗くさせていたよ」
「そうでしたね。あの時の遠井君はとても辛かったですね」
「暗くなって。そうしてさらに暗くなって」
「暗い中に落ちていくだけだった。そうでしたね」
「友井君がいなかったら」
 唯一彼を支えてくれていただ。真人いなかったらというのだ。
「僕本当にどうなっていたかね」
「わからなかったのですか」
「死んでいたかも」
 具体的にはだ。自ら命を絶っていたかも知れないというのだ。
 それでだ。その絶望を思い出しながら言ったのだった。
「そうなっていたかもね」
「僕がいてよかったですか」
「今もだよ」
 真人がいる、このことは今も変わらないというのだ。
「変わらないよ。本当に有り難う」
「そうですか。僕がいることだけでもですか」
「有り難いよ。友達だからね」
「有り難うございます。ですが」
「ですが?」
「僕ができるのは。それまでですね」
 希望をだ。自ら命を絶つまで陥らせることはなかった。それだというのだ。
「それ以上はやはり」
「千春ちゃんかな」
「支えは一つより二つの方がいいですから」
「千春ちゃんがいてくれたから」
「遠井君は今みたいに明るくなれたと思います」
「そうなんだね。けれどね」
 だがそれでもだとだ。希望は言ったのだった。
「友井君がいてくれることって。千春ちゃんと比べてね」
「あの人とですね」
「劣ってなんかいないよ。千春ちゃんは千春ちゃんで」
「僕は僕ですか」
「劣ってるなんてないよ」
 それはだ。全くないというのだ。
「そんなことは何もないから」
「そうですか。僕はその人と同じだけ遠井君と」
「かけがえのない存在だよ。友達と恋人は同じ物差しじゃ比べられないと思うよ」
 二人とそれぞれ共にいてだ。それからだった。
 希望はわかったのだ。真人と千春のことを。それでだった。
 そのかけがえのない真人にだ。言えたのだった。
「これからも宜しくね」
「こちらこそ。では」
「うん、勉強をしようか」
「そうしましょう。二学期の遠井君が楽しみですね」
「勉強の方でもだね」
「学校は。勉強だけを見る人が多いです」 
 それだけが人間の価値だとみなす。そうした人間がだというのだ。
「そうした人は遠井君が勉強が出来る様になれば」
「それで僕を見る目が変わるんだね」
「そうです。それに今の遠井君はかなり痩せました」
「八十キロになったよ」
 そこまで痩せたというのだ。今の彼は。
「夏休みの間でかなり痩せたよ」
「十五キロ痩せたんですか」
「九十五キロあったからね」
 それが彼のこれまでの体重だったのだ。しかしそれが今ではだというのだ。
「泳いで。走っていたら」
「十五キロもですか」
「こんなに痩せるなんて思わなかったよ」
 身体を動かせばだ。それだけ痩せたというのだ。 
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