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頑固親父と茶色猫

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第二章

 祖父は不愛想なままだった、それで孫はまた言った。
「ちょっとは可愛がったらどうだよ」
「何も言わないだろ」
 祖父は煙草を吸いつつ孫に答えた。
「別にな」
「だからいいっていうのかよ」
「近寄るなとかな」
「そんなの家族なら言わないだろ」
「俺は言うぞ」
「それは駄目だろ、っていうか祖父ちゃんチャを撫でたりしないしな」
 近くに寄ってもだ。
「触ったりもしないだろ」
「飯はやってるぞ」
「何も言わないでな」
「やってるだけいいだろ」
「よくないよ、けれどこんな不愛想なのにな」
 孫は不思議と思う口調で言った。
「チャは祖父ちゃんに一番懐いてるよな」
「祖母さんだろ、一番懐いてるのは」
「いや、祖父ちゃんだよ」 
 そこは違うというのだ。
「どう見てもな」
「そうか」
「そうだよ」
「俺に一番か」
「けれど祖父ちゃん態度変えないな」
 孫はここでまたこう言った。
「何があっても」
「だから俺はこうなんだ」
「ずっとそうだっていうんだな」
「そうだ、それで悪いか」
「悪くないけれどな」
 それでもとだ、孫は祖父に返した。
「やっぱり愛想がいい方がな」
「いいか」
「やっぱりな」
「そうか」
「ああ、本当にな」
 実際にというのだ。
「その方がいいしな、チャもその方がいいだろ」
「猫のことは知るか」
「だからそこで努力しろよ」
「努力してもこれが変わるか」
「変わるだろ、本当に笑わないからな祖父ちゃん」
「昔は男はこうだった」
「昔って昭和の四十年代位までだろ」
 その頃までの話だというのだ。
「野球漫画のあの頑固親父とかな」
「昔はあんな親父は本当にいた」
「ちゃぶ台ひっくり返す様なか」
「そんなことをする奴は滅多にいなかったがな」
 それでもというのだ。
「あんな親父はいた、そして俺もだ」
「その頃のままかよ」
「祖父ちゃんはその頃に生きていたからな」
「今令和なんだけれどな」
「令和でも俺はこうだ」
「やれやれだよ、けれどチャはその祖父ちゃんでいいか?」
「ニャア」
 チャは祖父の横で丸くなっている、そこでだった。
 雄馬に鳴いて応えた、雄馬は彼が上機嫌に見えてだった。雄馬はチャはこんな不愛想な祖父ちゃんの何処がいいかと思った、だが。
 チャはその祖父のところにずっといた、そんな中で。
 祖父は腰を痛めて寝ていた、孫は祖父に枕元で尋ねた。
「大丈夫かよ」
「少し痛いだけだ」
 祖父はにこりともせず答えた。
「何てことはない」
「いや、祖父ちゃんも八十過ぎてるしな」
 それでというのだ。
「もうな」
「歳を言うか」
「そうだよ、だからな」
 それでというのだ。
「もう仕事もな」
「痛くなったらまたする」
「そうするのかよ」
「いつも言ってるだろ」
「動ける限り働くってか」
「そうだ、だから痛みが引いたらな」
 そうなればというのだ。
「それでだ」
「仕事に復帰するか」
「そうする」
「本当に頑固だな」
「それでお前に迷惑かけてないな」
「それはな、じゃあ暫く寝てか」
「また仕事に戻る」
 布団に寝ながらも言った、そして。 
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