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ソードアート・オンラインーツインズー

作者:相宮心
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ツインズ×戦士達
  SAO番外-交わり始めるプロローグ

 
前書き
鳩麦さんのSAO―戦士達の物語とコラボです。

そして、さらに木野下ねっこさんが表紙と挿絵書いてくださりました!

素晴らしいイラストを書いてくださり、本当にありがとうございます。

今回も鳩麦さんとのコラボで、三話は鳩麦さんが自ら書いてくださりました。

SAO―戦士達の物語でもコラボ話は載ってますが、鳩麦さんの方では視点とエンディングが異なっていますので、そちらの作品もどうぞ見てください。
 

 






これはゲームであり、遊びではない。

だが、この世には理解できないことがたくさんある。

それが例えゲームでも、不思議な体験を送る人達はいる。

それを見ることができるのは、誰なのかは予測できない。

そして、それを口にするものはいないだろう。

それはきっと、

夢物語のように、住む世界とは違っていたからである。





「まったくも~、ドウセツったら、ずるいんだから」

人通りの中、自然と愚痴が漏れてしまってもあんまり気にしなかった。独り語言ってもシステム上でなんとかなるもんだ。声量によっては聞かれる可能性もあるけどね。

ドウセツと前線から離れ、二十二層で暮らしてから何日か経ったある日のこと、買い物係を決めるゲームで完膚無きまでやらてしまった私は夕方、晩御飯の買い物を任されて街まで出向いた。

今思えば、ドウセツがいかにも得意そうなオセロで勝負したこと時点で私の敗北は決まったものだったな。初めて、黒一面にされたなぁ……。いかさま並に疑うくらい、ドウセツは強かった。

もう次は頭脳戦が有利なゲームはやらないでおこう。

気持ちを切り替え、ドウセツに頼まれた物を次々と買っていった。

「よし、全部買った」

アイテム一覧を見て、購入した商品とドウセツに頼まれたメールを見比べてウインドウを閉じた。罰ゲームを終えた私は真っ直ぐドウセツが待つ家へ帰宅しようとした時だった。

「そこの白い服を着た『白百合』さん」

「!?」

自分が着用している白が基調な服装と、二つ名を呼ばれて声の主の方へ向ける。

「そうだよ、君だ、キリカ君」

視界に映った者は、自分と同じ白を基調とした色合いだが、服は全身を覆うような白いローブに加えてフードを被っていて顔は確認できない。少年にも見え少女にも見える彼は壁に座り寄りかかりながら、知らないはずの名をもう一度発した。

「キリカ君、何を驚いているんだい?」

「いや、驚いているもなにも……どうして私の名を?」

「ジャン」

「じゃん?」

物を取り出す効果音を口にすると、彼は見覚えのある本を見せつけた。

「あー……なるほど、そう言うことか」

その本を見て言わずとも納得してしまった。何故なら、その本の表紙にはドウセツと私が写っており、センリさん自ら撮影と出版した、『白百合×黒百合』と言うタイトルの写真集だからである。

「んで、私を知っている疑問はとけたけど、私に何のよう?」

「そんなの、決まっているでしょ?」

「初対面かつ素顔を見せない相手に決まっているも何も、わかんないから」

「そうなのか?」

「そうだよ」

その瞬間、目の前に半透明に光るウインドウ、トレードウインドウが開かれた。

「実は、キリカ君のファンなのでね。前線で戦っている白百合と出会えて嬉しい限りだよ」

「その割には姿見せないんだね……てか、トレードウインドウ開いたけどなんで?」

白づくめな彼は返答の変わりにトレード蘭に一つのアイテムが表示された。

それは見たことも聞いたこともないクリスタルだった。

「イフ……トリップ……?」

「イフ・トリップ。仮定の旅と言う意味さ」

「仮定の旅?」

「どうだ、聞いたことも見たこともないだろ?」

確かに、聞いたことも見たこともない、存在するか否かのクリスタルだ。名前からして転移結晶の強化版だと予測したが、それはもう存在しているので無いと判断。いくつもの予想を思いつくした結果、初めての物なので考えても導かない物だった。

ただ、聞きたいことはある。

「なんでそんな物を持っているの?」

一度も見たことないアイテムをどうして貴方が持っている?と言うか、何者だよ、あんた。

私の問いに彼は答えない。もう一度訊こうと口にした瞬間に、ニヤッと唇が釣り上がるのを目視できた。

「それは夜空で使うと素敵なことが起きる」

「はい?」

質問を無視され、唐突なことを口にした言葉に思わず情けない声が出てしまった。

「ほい」

「ああ!?」

その隙に白づくめな彼は右手を掴かんで、疾風(しっぷう)の如く勝手にウインドウを操作してトレードを完了させられた。

「まだ貰うって言ってないでしょ?」

「まぁまぁ、ファンの差し入れだと思って、許してくれない?」

ファンの割には強引にアイテムを押し付けさせた上に質問に返さず、素顔を見せないファンってどうなんだろう……。甘いかもしれないが、悪い人には見えないので仕方がなく受け取るとしよう。

アイテム一覧を確認して、押し付けられたアイテムの解説を読み取った。

『満天な星空で使うと誰も見たことのない景色が見られる』

…………。

観賞用の……アイテム……かな?にしては、観賞用あるなし関係なくアイテムなら、もっと使い方の説明を載ってもいいと思うんだけどな。

「ねぇ、これ……」

彼にイフ・トリップのアイテムの使い方を詳しく訊こうと視線を移したら、その場に彼はいなかった。

「去るのはやっ!?」

回りを見渡しても彼の特徴である、白づくめの格好した者は視界になかった。おそらく、いや、アイテムの説明を読んでいる間に隙を見せて去ったんだろう。

アイテムを押し付けて去るとか、どんな主義だよ……。本当に私のファンか?

「……帰ろ」

ボソッと呟いた私は、もう気にするのをやめにしてドウセツが待つ自宅へと帰って行った。と言うか、名も知れない、素顔も知れない、と言うか名も素顔も表さない相手を探すだけで無駄なことだろう。またあった時にいろいろと訊くとしよう。



「イフ・トリップ?」

「説明から観賞用の結晶アイテムだと思うけど……もしかしたら、知っているかな?」

「知らない」

「ですよねー」

自宅へ帰宅後、煮魚定食風をドウセツに作ってもらい、晩御飯中に夕方の出来事をドウセツに話して、イフ・トリップと言う謎のアイテムを訊ねたら予想通りの答えが返って来た。それでも訊き出したのはわずかな可能性があったからである。

「こう言うのってセンリさんが知っているじゃない?」

「メールしたけど知らないって返された」

「……どうして、そんな見も知らない物を貴女が持っているの?」

正確に言えば待っているのではなくて、持たされてしまったのだ。話した通りに白づくめの彼が勝手にアイテムを押し付けられたんだ。だから呆れた目で見ないでくれる?やられた私も悪いと思うけどさ。

「エギルにもメールで訊いたけど……センリさんと同等だったよ」

「使えないわね」

「それ酷くない?」

「聞かれなければいいわ」

「いや、そう言う問題じゃないと思うんだけど……」

「それ私が訊く前にメールしたなら、どうして私に訊いた?バカがこれ以上進化したの?」

「進化してないし、バカではない」

確かに、カメラマンであり情報通なセンリさんと商売屋のエギルが知らない物を訊いた後にドウセツに訊いたのは無駄だと思うし、予想通りの返答もあったけどさ、ほら……わずかな可能性があるじゃないか。

エギルもセンリさんも知らない、レアアイテム、イフ・トリップ。説明もなんか不足していると言うか物足りない感じがする。そもそもなんのアイテムなのかが明確されていない。そんなものがどうして彼が持っていたんだろう。どうして私にくれたんだろう。押し付けるまでして私に貰って欲しかったのか?そして白づくめの彼は……何者?

…………。

……考えてもアイテムも白づくめの答えは導き出せないか。でも、一つだけ明確にできることはできる。危険はないとは言えないが、少しでもモヤモヤを消したいので実行することにした。

「ドウセツ、外に出るよ」

「なんで?」

「イフ・トリップを使ってみる」

「あっそう。頑張ってね」

「一緒について行かないの!?酷い!いくじない!」

「別に私がいかなくてもいいことでしょ?」

「証人になって欲しいのと、説明通りならドウセツと見たいの!」

説明通りに、誰も見たことのない景色が見られたなら、それは人の言葉も思考も表すことができないくらい素晴らしいものが見られるかもしれない。そんな風になったら、一人で見るより、好きな人と一緒に見たいなってね。

「……誰も見たことのない景色が見られるってことは、想像以上に禍々しく醜いものが見られる可能性もあるのよ?」

「そ、そうかもしれないけどさ……」

ま、まぁ……そう言う捉え方もあったわね。相手が不明な人から押し付けられたアイテムだから、そっちの方が可能性あるかも……。

「まぁ、いいわ」

「え?」

「出るわよ」

そう言うと、ドウセツは後片づけをして、外に出た。否定的な言葉を言っておいて、結局行くんかい。

「もう……ちょっとめんどくさいよ」

自然と顔がほこらんでしまった。笑った後、ドウセツを追うように私も外に出た。

天気は晴れ、曇りはなし、星空たくさん、太陽は沈んで月が浮き上がっている。

満天の星空。……条件は合っている。後はイフ・トリップを使用すればいいだけ。

「じゃあ……いくよ」

「いつでもどうぞ」

ドウセツは頷いてくれたところで、アイテム一覧を開いてイフ・トリップと言うアイテムを取り出して起動させる。

「…………」

「…………」

「………ん?」

「……なるほど、キリカは下手なサプライズがどうしてもしたくなったのね」

「そ、そんなんじゃないよ! ドウセツだったらもっと素敵なサプライズ用意するから!」

遠回しにドウセツを騙して茶番につきあわせる気なんてなかったから全力で否定した。

でも、ドウセツがそんなこと言うには、使用しても何も起きないのだ。誤解されるのも当然な気がする。

「おっかしいな……」

「そうね、貴女の全てが」

「私の存在がおかしいの!?そりゃ酷いよ!あんまりだよ!こんなにドウセツを愛しているのに!」

「く、くっつかないで!」

イフ・トリップを差し置いて、私は自分の存在がおかしくないことを証明するためにドウセツにしがみついた。当然、相手は素直に受け入れてくれず抵抗されてしまった。

「いい加減にしない……と……」

「ドウセツ?」

一瞬殺意を表したと思った瞬間、急にドウセツは抵抗せず、殺意は打ち消され、呆然したかのように言い切らなかった。様子が変わったドウセツを伺うと落ち着いた口調で口にした。

「……浮いている」

「なにが?」

「イフ・トリップ」

「え?」

――――それは当然のことだった。

振り返ってみれば、地に置いてしまったイフ・トリップと言うクリスタルが宙に浮いていた。不気味な如く、無音のまま少しずつ空へと上がっていく。

そして、予告なしに、

抗うこともなく、

動くこともなく、

考えることもなく、

「「!?」」

一瞬で、視界全てが白く塗りつぶされ、

一瞬で、視界全てが黒く塗りつぶされた。



これはそのために用意された物語がある世界が、けして関わることもない別の物語が合わさってしまった、別の物語のプロローグである。 
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