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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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父親と息子

<海上>

朝の潮風香る大海原…
アルルは割り当てられた自分の船室で目を覚まし、身支度を調え甲板へと上がる。
しかし甲板では激しい剣撃の音が響いている!
アルルは慌てて剣に手を掛け、周囲を警戒するが………
ティミーがリュカ目掛け剣を振るっていた!

それを見た全員が、リュカが毎度の如くティミーを怒らせたのだろうと呆れるのと同時に、この二人が本気でやり合ったら周囲に被害が出かねないので、ビアンカに止めてもらおうと彼女を目で捜す。
しかしビアンカも甲板におり、剣撃を交わす二人を柔和な表情で見つめている…
一体何があったのだろうか?


≪30分前~甲板≫

ティミーは悩んでいた。
真面目なティミーは悩み、誰かに助言を請いたいと思っていた。
しかし悩みを打ち明けるべき人物が居ない……いや、居る事は居るのだが…
一般的に少年が悩み、人生の壁に阻まれたら、父親に相談するのが最善だろう…
彼も父に相談すれば良いのだが、困った事に彼の父親はリュカなのだ!
彼の悩みは、もっと強くなりたい事だ…
最近アルルに魔法を教えているのだが、彼女の成長は著しく、教える側として嬉しい反面、自身の成長に関し、このままで良いのかと悩んでしまう…

父に相談出来ないのであれば、自分より強いと思われる人物に相談すれば良いのだが…
残念な事に、それもリュカなのだ!
他人がリュカにこんな相談をしたら、ティミーはその人に『何であの人に相談したの?意味ないのに…』と言うだろう。
だが…それでも誰かに相談したい…打ち明けてすっきりしたい…そんな思いでリュカに相談を持ちかけた。

「父さん…ちょっといいですか?」
「ん?…どしたの?」



「…と言うわけで、父さんに剣術の御指南を戴きたいのです!」
ティミーは『え~めんどくさ~い!』とか『そんな事して何になるの?』とか『アルルの前で、恰好つけようとしてるんだぁ~』とか…そんな事を言われるのを覚悟で悩みを吐き出した!

しかしリュカの反応は予想に反し、真剣な眼差しでティミーを見据え、静かに問いかけてきた。
「一つ…聞きたい。強くなりたい理由は何だ!?恰好を付けたいのか?…それともアルルを守りたいのか?」

「………勿論、アルルを守りたいからです!」
本来こんな質問は無意味である。
ティミーの性格上、『恰好を付けたい』等と言うはずなく、答えは決まっている…
しかしリュカはあえて質問をし、そしてティミーもそれに答えた。
リュカは静かにドラゴンの杖を構え、ビアンカを下がらせる。
それに合わせティミーも剣を抜き、リュカに向かい構える。

二人は同時に踏み込んだ!
(ギンッ!!)
鈍い金属音が辺りに響く!
重いリュカの攻撃に、剣を持つ手が痺れる。

しかし一々怯んではいられない!
リュカの連撃の合間を突き、ティミーは反撃を仕掛ける。
しかしリュカは紙一重でそれを躱し、流れる様に攻撃を仕掛けてくる!

「魔法を使って構わないぞ!」
リュカの一言にティミーは遠慮せず、ライデインを唱えた!
ティミーの唱えたライデインは、リュカの頭上に落ちると思われたが、寸でで放り投げたドラゴンの杖に阻まれ、杖と共にリュカより離れた位置へ落下する。
だがティミーはチャンスと思い、武器を手放したリュカへ突進する!
「バギマ」
一瞬ティミーは怯んだが、リュカのバギマは自分に向かって来なかった為、勢い良く踏み込んだ!
しかしリュカはバギマをドラゴンの杖に当て、風の力で杖を手元に吹き飛ばしたのだ!

ティミーが気付いた時には手遅れで、リュカの手には杖が収まっている。
そして勝負は着いた。
ティミーの剣は後方に弾かれ、リュカの杖がティミーの腹部で寸止めされる。
「ま…参りました…」



ティミーがリュカとの鍛錬を終え、弾かれた自分の剣を鞘に収めると、アルルが心配気に近付いてきた。
「大丈夫ティミー!……一体どうしたの、急に?」
ティミーは既に息も上がり顔が上気しているのだが、自分の事を気遣い近付いてきたアルルを見て、更に顔が赤くなる。
恰好を付けたいと思った事はない…しかしアルルに恰好の悪い所を見られたくないとの思いはあるらしく、父にとは言え負けた所を見られたのが恥ずかしいらしい。

「…最近、生意気なんだよね!パパに対して楯突くんだもん、この子!だからお灸を据えてやったんだ!『オメェーなんか、まだまだだ!』ってね♥」
リュカはチャラい口調で、ティミーの頬を杖でグリグリ突きながら、自分の強さをアピールする。

「呆れた…大人気ないわねぇ~!楯突かれたくなければ、父親らしく振る舞えばいいじゃない!」
緊張感無くヘラヘラ笑うリュカを見て、ティミーの擁護に回るアルル。
「ティミー…疲れてるとこ悪いけど、私にも稽古をつけてくれる?」
「アルルぅ~…稽古なら僕がつけてあげるよぉ~!何ならベットで実践式に!」
サムズアップをし爽やかな笑顔で言い寄るリュカ。

「引っ込んでて下さい!リュカさん、デイン系を使えないでしょ!私には勇者ティミーの指南が必要なんです!それに私は何処ぞの女王とは違い、貞操を守る主義なんです!」
手の甲を上に『シッシッ!』とばかりに手を振るアルル。
「それは不敬罪なのでは?」
「貴方に言われたくありません!」
そう言い残し、ティミーの手を取り船首の方へと行くアルル。
そしてアルルとティミーの組み手が始まる…
意識してしまっているのか、ティミーの動きが若干鈍い…


「さすがリュカ!見事な誘導ね…アルルちゃん、自然な形でティミーの手を握ったわ」
「あの二人…上手くいくと良いね」
「そうね…ティミー、純情だから…心配ね」
「うん。僕にそっくりだよ、あの子!」
「…それ…ギャグよね?」

そこで夫婦の会話は途切れた…
リュカの一言がギャグなのか、確認する事が出来なかった…
多分ギャグだろう…
もし本気でそう思っているのなら…重傷だ!



 
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