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ダンシングキャット

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第二章

「ストレスで髪の毛を抜く癖は」
「あっ、つい」
「気をつけよう。そうした時は身体動かすか飲むかお風呂で」
「ストレス解消ね」
「そうしていこう」
「そうね」
 百合は自分の頭から手を離して髪の毛を抜くことを止めた、強いストレスを感じるとついつい抜く癖があるのだ。
 それでいつも翔に止められる、すると。
 そこでこれまで猫まんまを食べていた猫が何を思ったのか食べることを中断して二人の前に出て来てだった。そうして。
 後ろ足で立つと前足を動かして何か動きはじめた、二人共それが何か最初はわからなかったが。
 次第にそれが何かわかった、それで百合が言った。
「これダンスよ」
「そうだね」 
 翔もそれだと思って頷いた。
「これは」
「そうよね」
「若しかして百合を慰めてるのかな」
「私が元気を出す為になの」
「そう、その為に」
 それでというのだ。
「踊ってるんだよ」
「そうなの」
「深く考えないままうちに連れて来たけれど」
 ただお腹が空いてるのでご飯をあげようと思ってだ、それだけだった。だがその踊りを見て翔は言うのだった。
「百合を気遣ってくれる様な猫なら」
「うちで飼うの」
「そうしようか」
「そうね、このマンションペットいいし」
「問題ないし」
「それじゃあね」
「ニャア」
 こうしてだった、百合も猫の鳴き声を聞きつつ決めた。その踊っている猫を見て。
 猫を家で飼うことにした、猫は雄でしかもユーモアがある感じの猫なので百合がユネと名付けた。二人はすぐに猫のトイレやその砂、爪とぎ、キャットフードや食器それにおもちゃも買った。そうしてユネとの生活をはじめた。
 ユネはキャットフードの好みは五月蠅かったがそれでもだった。
 賢くトイレも爪を研ぐ場所もすぐに覚えて二人に懐いた、そして二人特に百合が仕事や日常のことで強いストレスを感じた時に。
 目の前で踊ってみせて元気付けてくれた、百合はそんなユネを見てその度に気を取りなおした。それで翔にも言った。
「ユネが来てね」
「ストレス感じてもだね」
「すぐにユネが励ましてくれて」
 その踊りでというのだ。
「それでね」
「かなりましになってるね」
「ええ」
 その通りだというのだ。
「本当に」
「それは何よりだよ」
「これまでもね」
 人間どうしても生きているとそれだけでストレスを感じることがある、特に引っ込み思案で人の言葉を気にする百合はそうだ。それで仕事それも理髪店という接客業であるので色々な客と接するので余計にストレスを感じていた。尚翔はバス会社で経理をしている。 
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