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ダンシングキャット

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第一章

  ダンシングキャット
 結城翔はふと会社帰りの自宅に向かう道の横を見て恋人の常盤百合に言った。
「ねえ、あそこ」
「あっ、猫ね」
「野良猫みたいだな」 
 翔はその猫を見て言った、見れば。
 身体と顔の上それに尻尾が黒く下は白い。そんな猫で首輪がなかった。その首輪がないのを見て言うのだった。
「この子は」
「そうね、何かね」
 百合はその猫を見て言った、黒い髪の毛を右で分けた二十代半ばと思われる女で細い眉と気の弱そうな顔立ちである。背は一五七程だ。
「お腹空いてるみたいだし」
「何かあげようか」
「けれど今何も持ってないし」
「じゃあうちに連れて行こうか」
 翔は自分も猫に餌としてあげられそうなものを持っていないことに気付いてそれでこう提案した。薄茶色の髪の毛で優しい顔立ちをしている、穏やかな目が印象的だ。年齢は百合と同じ位で背は一七六はある。
「それで何かあげようか」
「そうしてあげる?」
「うちペット可だし」
 翔は二人が住んでいるマンションの話もした。
「若し連れて行ってもおかしく思われないし」
「それじゃあ」
「それなら」
「連れて行きましょう、とりあえずお腹空いてるみたいだから」
 だからだとだ、百合は翔に応えて言った。
「ご飯位あげないとね」
「お水とかな」
「そうしてあげましょう」
 百合は自分も言ってだった、そのうえで。
 自分が猫を抱えて二人の部屋まで帰った、そしてご飯の残りに鰹節をふりかけて出した、そこで翔が百合に言った。
「猫に塩分が多いとよくないから」
「お醤油はね」
「かけない方がいいよ」
「それじゃあ」
「かけるにしても」
「少しね」
「それ位にしよう」
 こう恋人に言うのだった。
「そうしよう」
「それじゃあ」
 百合は翔の言葉に頷いて醤油は少しだけ垂らした、そのうえで猫に所謂猫まんまを出すと猫は食べはじめた、その様子を見てだった。
 二人はまずはよしとして水も猫に出した、それから二人で溜息をついてだった。
 お互いに仕事のストレスを話した、特に百合が深刻だった。それで髪の毛に手をかけると翔は言葉で止めた。 
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