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ドリトル先生の競馬

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第三幕その七

「僕も」
「それは何よりだね、自分の名前が好きなら」
「それならですね」
「それだけで幸せなことだよ」
「そう言ってくれるんですね」
「うん、それで君も八条学園の学生さんだね」
「高等部の普通科、二年J組にいます」
 ホフマンは自分から名乗りました。
「楽しく過ごしています」
「そのことも何よりだね」
「ドイツのチューリンゲンから留学しに来ています」
「かつて東ドイツの一部だったね」
「はい、ただ僕が生まれた時は」
 ホフマン自身も言うことでした。
「ドイツは統一されていて」
「君が生まれる十年以上前かな」
「そうなっていまして」
 それでというのです。
「僕自身は東ドイツのことは知らないです」
「歴史になっているんだね」
「実際には知らないです」
「そうだね」
「両親は共に東ドイツ出身で」
「ご両親から聞いてはいるんだね」
「東ドイツだった頃のことは。ですが」
 どうしてもとです、ホフマンは先生にお話しました。
「西の方と比べますと」
「東の方はだね」
「やっぱり違いますね」
「経済格差があるんだね」
「僕が子供の頃もそうで」
 それでというのです。
「今もまだありますね」
「統一して結構な時間が経つけれどね」
「そこは仕方ないですね、ただ」
「ただ?どうしたのかな」
「もう代用コーヒーはないです」
 ホフマンは先生に笑ってお話しました。
「僕も飲んだことはないです」
「やっぱりそうだね」
「あとガムも子供の頃から知ってますし」
 こちらもというのです。
「それにバナナもよく食べていました」
「東ドイツではなくなっているね」
「そうですね、食べものは両親から聞きますと」
「東ドイツの時よりもだね」
「ずっとよくなっていますね」
「そうなっているんだね」
「それで僕は高校一年、日本の学年では」
 ホフマンは先生にさらにお話しました。
「その時からです」
「日本にいるんだね」
「高校の入学式から」
 その時からというのです。
「こちらにいます」
「そうなんだね」
「日本は噂以上にいい国ですね。ですが」
 ここでホフマンは少し苦笑いになって先生にこうも言いました。
「ジャガイモを食べることが」
「ドイツにいた時と比べてだね」
「少ないですね」
 このことがどうもと言うのでした。
「こっちでは主食ではないですね」
「うん、それはね」
「仕方ないですね」
「ドイツは本当にジャガイモだね」
「パンも食べますが」
 それだけでなくというのです。
「ジャガイモもです」
「食べているね」
「主食として」
「そうだね、けれど日本ではね」
「どうしてもですね」
「ご飯が主食だからね」
 それでというのです。 
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