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七人同行

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第二章

「すぐに手配を致します」
「宜しく頼むぞ」
 こうしてだった、容堂は自らその道に赴き東洋はその手配をすることになった。容堂はお忍びで東洋と共にその道に行くことになったが。
 上士が外に出歩く姿で城の外にいる容堂にだ、同じく上士が外に出歩く姿になっている東洋がある者を連れて来て話した。
「この者も連れて行きましょうぞ」
「その者は確か」
 容堂はその耳の大きな者を見て言った。
「城に詰めておる」
「はい、江川次郎左衛門という者です」
「そうであったな」
「この者面白いことが出来まして」
 東洋は容堂に話した。
「耳を動かすことが出来まする」
「それだけ耳が大きければな」
「あと剣術の他に手裏剣も得意で」
 東洋はさらに話した。
「そちらは百発百中しかもその投げた手裏剣はやたらと速い」
「そちらの達人でもあるか」
「左様です」
「手裏剣使いをわしの警護とするか」
「いえ、それはそれがしが」
 東洋は剣術の達人でもある、それでそちらはというのだ。
「させて頂きまする」
「では何故この者を連れて行く」
「先程申し上げた通りこの者耳を動かすことが出来まする」
「それは今聞いた」
「それが出来る者は七人同行が見えるのです」
「そうであるか」
「はい、ですから」
 だからだというのだ。
「この者を連れて行きまする」
「そうした事情があったか」
「はい、では」
「この者をじゃな」
「釣れて行きましょうぞ」
「わかった、ではな」
 容堂も頷いた、こうしてだった。
 容堂は東洋とその江川という者を連れてその道に向かった、途中容堂はこんなことを言った。
「駕篭にも馬にも乗らず街を歩くというのもな」
「よいものですな」
「時としてな」
 容堂は持っている瓢箪に入れた酒を飲みつつ応えた。
「実にな」
「そうですな」
「外を歩きつつ飲む酒も美味い」
 こうも言うのだった。
「実にな」
「それはよきこと、ただ」
「その道に来ればじゃな」
「ご用心を」
 東洋は今度はくれぐれもと話した。
「何しろ迂闊に出会えば」
「死ぬであるな」
「そうした相手ですので」
 だからだというのだ。
「くれぐれもです」
「承知しておる、こうした時はな」
 どうかとだ、容堂も東洋に応えた。
「酒は程々じゃ」
「そのことをご承知なら」
「よいか」
「はい、それでは」 
 実にとだ、東洋は容堂に応えてだった。
 道を行く途中で立ち寄った農家で百姓に話をして金を奮発して渡して牛を一頭借りた、ここで容堂は東洋に尋ねた。
「耳が動く者を連れて行くのはわかる」
「牛は、ですか」
「これも七人同行と関係があるな」
 このことは容堂もわかった。
「そうであるな」
「左様であります」 
 その通りだとだ、東洋も答えた。
「牛の股と股の間から覗くとです」
「七人同行が見えるか」
「そう言われています」
「成程のう」
「ですから」 
 それでというのだ。 
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