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優しいお義母さん

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第一章

               優しいお義母さん
 猫の里親募集を行っているボランティア団体のサイトを見てだ、内田樹里は夫の雄太郎に対して言った。
「この子ね」
「黒猫か」
「何でも動けなかったところを反故したらしいけれど」
「名前はメグロか、目も黒いからか」
 雄太郎は樹里が開いているそのサイトを見つつ言った、見ればそこには雄で生後三ヶ月と書いてある黒猫の画像があった。
「だからか」
「名前はそうみたいね、ただ」
「この子後ろ足が動かないんだな」
「左のね」
「それは大変だな」
「それでだけれど」
 樹里は夫の丸い顔を見つつ声をかけた、髪の毛は縮れた黒髪で眼鏡も目も円い。ついでに言えば体形も丸く外見に相応しい性格だ。仕事はサラリーマンである。
「この子ね」
「うちでか」
「飼わない?」
 こう夫に提案した。
「子供達にも話して」
「そうだな」
 雄太郎は腕を組んで言った、妻のその顔を見ながら。妻はもう四十だがショートの黒髪は奇麗なままではっきりとした大きな目と小さな唇を持つ顔には皺もシミもない。スタイルもすらりとしていて二十代後半に見える。その妻にこう言った。
「うちにはもうハナコがいるがな」
「ええ、あの娘にね」
 家で飼っているゴールデンレッドリバーの犬の話もした。
「もう一匹ね」
「今度は猫か」
「どうかしら」
「飼うか」
 雄太郎は一言で決断を述べた。
「そうするか」
「ええ、じゃあね」
「早速そっちに連絡するか」
「そうするわね」
 樹里はサイトにメールを送った、それから話は文字通りにトントン拍子に進んでメグロは内田家に来ることになった、すると。
 サイトの説明通り目黒は実際に左の後ろ足が動かない、それに。
 雄太郎達も子供達も見て覚える、雄太郎はその彼を見て妻に言った。
「ひょっとしてな」
「ええ、この子野良猫だったっていうけれど」
「その時に随分酷い目に遭ったんだな」
「保護された時傷だらけだったらしいのよ」
「そうだったんだな」
「何でも足は先天的に動かないらしいけれど」
「よくそれで野良で生きてこられたな」
 雄太郎は妻の話を聞いて目を曇らせて言った。 
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