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ドリトル先生と姫路城のお姫様

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第十一幕その四

「こちらもな」
「そうさせてもらいます」
「その様にな」
「洋食とワインもいいですね」
 富姫はお姫様の右隣にいます、そこで飲んで食べています。
「和食もいいですが」
「そうであるな」
「あまり食べたことはないですが」
「時にはこうした宴もよいな」
「実に」
「そうじゃな、ではな」
「これからは」
「時折洋食も出すとしよう」
 宴にというのです。
「中華も考えるか」
「満漢全席ですね」
「あれもな」
「では今度私の方で宴を開きましたら」
「満漢全席をか」
「出させて頂きます」
「その時を楽しみにしておるぞ」 
 お姫様は富姫に妖艶な微笑みを向けて答えました。
「まことに」
「その時もまた」
「共に楽しもうぞ」
「それでは」
「さて、お主達もじゃ」
 お姫様は周りにいる妖怪達にも声をかけました。
「それぞれの勤めが終わったならな」
「はい、その時はですね」
「私共も」
「馳走と美酒を用意しておる」
 今自分達が食べているものをというのです。
「存分に楽しむのじゃ、そして催しもな」
「わかりました、それでは」
「その様に」
 お姫様のお付きの姫路城の妖怪達だけでなく富姫と一緒にここに来ている猪苗代の妖怪達もでした。
 富姫に言われて頷きました、そしてでした。
 皆で楽しく飲んで食べてです、天守物語も楽しんで。
 その後は落語でした、剽軽なそれの後で能の幽幻の世界が姿を現しましたが。
 動物の皆は能の舞台に思わず息を飲んでしまいました。
「こんな世界あるんだ」
「この世にあるのにこの世にないみたいな」
「そんな舞台ね」
「不思議な空間があってそこに何かがある」
「そんな神秘的なね」
「独特の世界よね」
「これが能じゃ」 
 お姫様も皆に応えます。
「よいものであろう」
「いや、本当にね」
「この世界にないみたいな」
「物凄い世界だね」
「能を本格的に観ると」
「こうしたものなんだね」
「そうじゃ、では観ていくぞ」
 お姫様は微笑んでいます、そうして舞台を観ていて。
 最後の最後まで皆で観てです、舞台が終わって言うのでした。
「見事であった、やはり能はいいのう」
「ここまで見事な能の舞台は」 
 先生も素晴らしい舞台を観て感動したお顔になっています。そのうえでの言葉です。
「この目で観たことはなかったです」
「ではよい経験になったのう」
「はい」
 その通りだとです、先生はお姫様に答えました。
「能はこうしたものですね」
「そうじゃ、そしてじゃ」
「この能の舞台をですね」
「忘れぬことじゃ」
 お姫様は先生にこうも言いました。 
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