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ある晴れた日に

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55部分:穏やかな夜にはその四


穏やかな夜にはその四

「お茶もあるぜ、お茶な」
「お茶って?」
「紅茶だよ。未晴が淹れてくれたんだよ」
「あっ、気が利くじゃない」
「流石は竹林」
「私はそんな」 
 皆に感謝の言葉を述べられて少し恥ずかしそうな未晴だった。
「別に。大したことじゃ」
「大したことじゃなくても凄いんだよ」
 坪本が笑って謙遜する彼女に言う。
「些細なことに気が利く。これだよな」
「そうだよな。女の子らしいっていうかな」
 坂上も未晴に笑顔で話す。
「竹林らしいよ、全く」
「このクラスの女連中ってよ」
 野本が言わなくていいことをタイミングよく言う。
「ガサツでいい加減で気の利かない奴が多いからな」
「あんたカレーに頭からダイビングしてみる?」
 その野本に凛が半分本気で告げる。
「カレー好きみたいだから」
「カレーは好きだけれど何でそうなるんだよ、おい」
「誰がいい加減って!?」
 やはり言うのはそこだった。
「あんたに言われたくないわよ、あんたに」
「何、このバナナ女!」
「何でバナナ女なのよ」
「おめえのカレー見てみろよ」
 ここで凛の持っているカレーを指摘する。
「バナナ入ってるじゃねえか」
「あっ、そういえば」
 見ればその通りだった。カレーの中にバナナが入っている。当然火が通っている。
「バナナも入れたの」
「身体にいいからな」
 入れた本人の佐々が言う。
「だからなんだよ。同じ南方の食べ物だからこれも合うんだよ」
「バナナ入れたカレーっていうのも」
「ほれ見ろ、バナナじゃねえかよ」
 野本は子供じみて誇らしげに凛に言う。
「バナナ女が」
「あんたやっぱりカレールーの中で泳ぎたいみたいね」
「馬鹿、あんな中で泳げるかよ」 
 そのカレールーが入っている巨大な鍋を指差して凛に反論する。
「煮立って沸騰してるじゃねえよ。ゴポゴポってよ」
「大丈夫よ。死にはしないから」
「いや、絶対に死ぬよ」
 凛の横から桐生が突っ込みを入れる。
「沸騰してる中に飛び込んだらやっぱり」
「じゃあ死ねばいいじゃない」
 本気で怒っている凛だった。
「生まれ変わったらひょっとして頭と性格とファッションセンスと口の悪さがなおるかもね」
「・・・・・・俺ってそんなにいいところねえのかよ」
 ボロクソに言われて流石に止まる野本だった。
「頭はいいとして後の三つはへこんだぞ、おい」
「じゃあ反省したら?」
 奈々瀬が呆れたように彼に言う。
「反省する頭もないから言われるんだけれど」
「ちぇっ、俺は深く傷ついたぜ」
「嘘つけ嘘」
「何処がなんだよ」
 こう言えば言うでまた言われる野本だった。
「いつも何言われても平気な癖によ」
「バリケードみてえな心してる癖によ」
「何でこんなに言われないといけねんだよ」
「あんたが最初に言ったんじゃない」
 実に率直な突っ込みは明日夢のものだった。
「そんなんだからワーストドレッサー賞に輝くのよ」
「ベストドレッサーの間違いだぜ、あれはよ」
 しかも本当に反省をしない。
「審査員の先生達がわかってねえんだよ。トップモードってやつをな」
「駄目だこりゃ」
 静華が呆れて言った。
 
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