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ある晴れた日に

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44部分:妙なる調和その五


妙なる調和その五

「これないとな。やっぱり」
「まるで身体の一部ね」
「その通りさ」
 微笑んでその未晴に答える。
「こいつは俺にとってはな。相棒どころじゃない」
「身体の一部なのね。本当に」
「ここでも弾くぜ」
 他の荷物は両手に持っている。
「やっぱりな」
「そうなの」
「ああ、それはそうとな」
「何?」
「荷物貸せよ」
 バスを降りたところでまだ中に残っている未晴に対して言ってきた。
「あんたの荷物。ほら」
「いいの?」
「いいさ」
 こう言って左手を前にやって来た。右肩にギターを担ぎ右手に自分の荷物を持っている。しかしそれでも彼女のものを持とうというのである。
「だからな。ほら」
「けれど私のは」
「遠慮することはないさ」
「いいの」
 しかしこう言って断ってきた。
「それはいいわ。自分のは自分で持つわ」
「そうなのか」
「自分のものは自分でって」
 バスの階段に足を下ろしながら正道に答える。
「だから。いいの」
「そうか」
「気持ちだけ受け取っておくわ」
 今の言葉と共に微笑む。
「音橋君のその気持ちだけね」
「それでいいのか」
「気持ちだけで充分よ」
 今度はこう言って微笑んでみせてきた。
「その気持ちだけでね」
「わかったよ。じゃあさ」
「何?」
「早くバスから出ようぜ」
 にこりと笑って未晴に告げた。
「もう俺達だけだし皆待ってるしな」
「そうね。それじゃあ」
「おおーーーーーーーい、未晴」
 ここで春華が彼女を呼ぶ声がした。
「早く来いよ。皆待ってるぞ」
「あっ、春華」
「ほらな」
 正道は春華の言葉を聞いたうえで笑って未晴に告げた。
「やっぱり言ってきただろ」
「ええ」
「だからさ。行こうぜ」
「うん。それじゃあ」
「荷物は本当にいいんだな」
「これ位自分で持てるから」
 バスから出てまたにこりと笑ってみせてきた。
「いいわ、本当に」
「そうか。じゃあな」
「ええ。また後でね」
「早く着替えないとあいつが五月蝿いぜ」
「あいつって?」
「だから野本だよ」
 苦笑いと共に未晴に告げた。
「すぐにベストドレッサーの審査だろ。だからな」
「そうね。じゃあすぐに私服に着替えるわ」
「そうさ。それにしてもな」
 ここで首を捻る正道だった。
「考えてみれば変な学校だよな」
「何が?」
「だからよ。何でこんな場所で私服のチェックなんてするんだ?」
「そういえば」
「ジャージでいいじゃないか」
 自分のジャージの胸を左手で引っ張りつつ未晴に話す。彼は黒いジャージだ。
「違うか?それって」
「そういえばそうだけれど」
「まあそれもいいか」
 しかし諦めたかのように認めもする正道だった。
 
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