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消えた仙人

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第四章

「そうしておったぞ」
「その家族から依頼が来てたんや」
 王がまた仙人に話した。
「あと弟子の人達からな」
「いや、わしは確かに伝えたぞ」
「ご家族にここに行くことをかいな」
「うむ、ここには仙薬に使える苔があってな」
 それでというのだ。
「それを摂りに時々来ておるのじゃ」
「そうやったんか」
「そうじゃが」
「ぼけてここまで来たかと思ってたわ」
「いや、わしはまだ百歳、ぼけるにはまだまだ若いぞ」
「百歳でかいな」
「不老不死ではないが仙人は長生きが多いからのう」
 仙人はこの世界では職業でありあくまで不老不死ではない、寿命が来ればそれで死んでしまうのだ。
「百歳でじゃ」
「若いっちゅうんか」
「そうじゃ、しかし家族に伝えたのにのう」
 このことについてだ、仙人は残念そうに述べた。
「伝わっておらんか」
「家族って誰に言うてん」
 そもそもとだ、王は仙人に尋ねた。
「それで」
「玄孫じゃが」
「曾孫さんのお子さんか」
「あの子に言うたがのう」
「そうやったんか」
「四つのな」
「おい待て爺さん」
 四歳と聞いてだ、王は仙人にすぐに突っ込みを入れた。
「そんな子供に言うたんか」
「そうじゃが」
「そんな子供に言うても忘れるやろ」
「そうかのう」
「そや、四歳やぞ」
 言った相手はというのだ。
「それで話がわかるか」
「そうかのう」
「わかる筈ないやろ、それこそ言った側から遊びに行ったやろ」
「うむ、腕白で友達も多くてじゃ」
 仙人は玄孫のことを上機嫌で話した。
「子供が元気が一番じゃと再認識しておる」
「その時ももう忘れてるわ」
「それでか」
「そや、そんなもん他の人に伝えとかんかい」
「息子や孫や曾孫にか」
「奥さんとかお弟子さんとかな」
「女房はもう耳が遠くなっておるわ」
 だから話をするのに難しいというのだ。
「それでたまたまじゃったがのう」
「ひいひい孫さんに言うたか」
「それがよくなかったか」
「当たり前や、それで苔はたっぷり手に入ったんやな」
「この通りじゃ」
 仙人は左手に袋を出して王に答えた。
「大漁じゃ」
「それはええな、しかしな」
「家にか」
「帰るで、さっさとな」
「ご家族もお弟子さん達も心配してるでし」
 郁の言葉は完全に呆れ返ったものだった、その声で仙人に言った。
「早く帰るでし」
「術で洞窟出てや」
 王は仙人を早く家族や弟子達に会わせようと思ってそうすることにした。 
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