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女王への愛

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第二章

「アントニウス殿を見ているとな」
「女王もですね」
「あの方もですね」
「自害するかもな、そのことには気をつけよう。それでだ」
 オクタヴィアヌスの目が光っただ、そのうえで周りに話した。
「一人注意したい者がいるが」
「女王の侍女カルミオンですね」
 アグリッパがこの者の名前を出した。
「あの女ですね」
「そうだ、女王の傍に常に控え忠実に仕えているそうだな」
「今も尚」
「最早女王もエジプトも命運は定まっている」
 滅亡、それが決まっているというのだ。
「最早な、だがそれでもだな」
「あの女だけはです」
 アグリッパがオクタヴィアヌスに話す。
「アントニウス殿を女王の下に運ぶことも手伝い」
「それからもだな」
「傍にい続けて世話をしています」
「見事な忠義だ、しかも聡明とも聞く」
「ならばですね」
「女王の自害を助けるかも知れない」
 だからだというのだ。
「ならばあの女もだ」
「女王と共にですね」
「目を離すな、いいな」
 こう周りに告げてだった、オクタヴィアヌスはエジプトの富と女王の身柄を手に入れる為に女王自身との交渉を行った。エジプトの富は無事にローマに入ることになりアントニウスとクレオパトラとの間に生まれた子供達の命も保証された。
 ここでオクタヴィアヌスは女王の身柄も確保することを校章しようとした、クレオパトラはこの時王家の霊廟の中にいて自分の身を守っていたが。
 霊廟にローマの兵士が秘かに入ったのを見てだ、オクタヴィアヌスが警戒していた侍女のカルミオンは流麗な眉と利発な緑の目を持つ小柄な身体で奇麗に黒髪を肩の高さで切り揃え切れ長の目と高い鼻と小さな唇を持つ顔を見ごとにメイクし豪奢な服を着た女王の下に着て囁いた。
「女王様、ローマの兵が来ました」
「そうですか、では」
 そのことを聞いてだ、クレオパトラは静かに述べた。女王としての覚悟がある顔であった。
「時が来ました、短剣を」
「いえ、ここで無闇に失敗すれば機会は二度と訪れないです」
 カルミオンは自害を決意した女王に強い声で述べた。
「ですから」
「無闇に、ですね」
「そうです、ここはわざとです」
「取り押さえられるのですね」
「ローマの兵達に、そして」
「その後で、ですね」
「その時はお芝居をお願いします。私もお供致します」
 カルミオンはクレオパトラに慎んで述べた。
「それでは」
「カルミオン、そなたは最後まで私に尽くしてくれますね」
 クレオパトラは今死と滅亡を前にしている、だからだった。
 今カルミオンの忠義を受けてだ、深く感じ入った声で述べた。 
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