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女王への愛

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第一章

                女王への愛
 オクタヴィアヌスはアントニウスそしてクレオパトラとの決戦であったアクティウムの海戦に勝ち無事にアントニウスが逃げ込んだアレクサンドリアに迫り入城を果たした、ここでアントニウスが自害を試みてクレオパトラの腕の中で死んだと聞いてまずは瞑目した。
 そのうえでだ、親友であり腹心であるアグリッパに対して言った。
「敵であり戦ったが」
「それでもですね」
「長い付き合いの方だったしな」 
 それにとだ、オクタヴィアヌスはその整った顔に憂いを込めさせて話した。
「滅ぼさなくてはならなくともな」
「どうにも憎めない方でしたね」
「不思議とな、立派な方であり」
 アントニウスを認めている、それが明らかな言葉だった。
「最期も聞いたが」
「自ら腹に剣を刺されクレオパトラ女王の腕の中で息絶えられるとは」
「潔くまたいい死に様ではないか」
「あの方も満足でしょうね」
「名誉を汚してはならない」
 アントニウスのそれはとだ、オクタヴィアヌスはアグリッパだけでなく周りにいる自身の兵達にも話した。
「決してな、女王との間に生まれているあの方の子達もだ」
「お命まではですね」
「取りませんね」
「あの方は自害されたのだ」
 それで責を取ったからだというのだ。
「ならばな」
「これで、ですね」
「よしとしよう」
 こう言ってだった、オクタヴィアヌスはアントニウスの名誉は汚さないことにして残ったもう一人の敵であるクレオパトラとの交渉に入った。目的はエジプトの富と領土でアントニウスとクレオパトラの間に生まれた子達のことは助けるつもりだったが交渉を有利にする為に今はこのことを隠してだった。
 そのうえでクレオパトラとの交渉に入ったが彼は夜にアグリッパや他の腹心の者達に対してこう語った。
「確かにアントノウス殿の名誉と子供達の命は保証するが」
「クレオパトラ女王はですね」
 アグリッパは日に焼けた精悍な軍人らしい顔をオクタヴィアヌスに向けて彼に問うた。
「ローマの恒例に従い」
「そうだ、ローマでの私の凱旋式の時にだ」
 エジプトとの戦いに勝った凱旋式だ、ローマでは敵との戦いに勝った将軍がこれを行うのだ。そしてその時に倒した国の君主を引き回しにしその後首を絞めて処刑する慣わしがあるのだ。
 それでだ、彼も言うのだ。
「クレオパトラ女王は処刑する」
「そうしますね」
「そのことは絶対に行う、だが」 
 オクタヴィアヌスは整った顔を曇らせてアグリッパ達に述べた。 
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