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大阪の山姥

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第三章

「言ってました」
「何処の子供も同じだな」
「大阪でもありますよね」
「ああ、ただ大阪は本物に言うからな」
「妖怪ですか?」
「いや、ヤクザ屋さんにな」
 妖怪ではなかった。
「そちらにな」
「あの、ヤクザ屋さんにそんなこと言ったら」
 どうかとだ、舞美は琢磨に顔を顰めさせて言った。
「妖怪より怖いですよ」
「山姥よりもな」
「はい、洒落になってないですよ」
「大阪の何処でもいてな」
 それでというのだ。
「よく遊び半分でな」
「そんなこと言ってたんですか」
「ああ、今思うとやばいことしてたな」
 琢磨自身しみじみとして思うことだった。
「相手がヤクザ屋さんだからな」
「大阪多いですけれど」
「これでも昔よりずっと減ったらしいな」
「そうですか」
「色々あってな」
 暴力団新法に資金源を虱潰しに潰していったことにだ、そうしたことをして日本全体で減らしていったのだ。
「それでな」
「そうなんですね、まあ神戸も」
「俺達の大学があったな」
「あそこの拠点ですからね」
「映画で三代目襲名あったな」
「高倉健さん滅茶苦茶恰好いいですね」
「お前本当に今時の若い娘か?」
 琢磨はまた舞美に突っ込みを入れた。
「さっきのどおくまんさんといいな」
「高倉健さんもですか」
「しかもあの映画観たんだな」
「お父さんがファンで。網走番外地シリーズも」
「そっちもか」
「あと地元で働いているお兄ちゃんが菅原文太さん好きで」
「仁義なきとかトラック野郎もか」
 そっちもとだ、琢磨は舞美に問うた。
「観たんだな」
「どっちも全部」
「どんな今時の若い娘だよ」
「親父趣味ですか」
「それ過ぎるだろ、しかしな」
 ふとだ、琢磨はこうも言った。自分の左手の腕時計も見て。
「丁度お昼の時間で腹も減ったしな」
「あっ、お昼ご飯ですね」
「何か食うか」
「それじゃあ牛丼どうですか?」
 舞美は笑って琢磨に提案した。
「特盛つゆだく、玉もつけて」
「それも若い女の子の食うものじゃねえな」
「そうですか?」
「そうだよ、折角顔はいいのにな」
 見れば見る程だ、もっと言えばスタイルもいい。
「それでかよ」
「親父趣味っていうんですね」
「そうだよ、残念だな」
「これでも趣味は家事でお料理得意ですよ」
「いつも自炊してるのかよ」
「お魚を煮たり肉じゃがとか」 
 そうしたものを作っているというのだ。 
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