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大阪の山姥

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第二章

「茶臼山何とかにって歌あるだろ」
「それ何の歌ですか?」
「昔のアニメの歌だよ、じゃりんこっていうな」
「そんなアニメあったんですね」
「大阪舞台にしたな」
「どおくまんさんみたいですね、大阪舞台だと」
「おい、何で女の子がどおくまんさん知ってるんだ」
 琢磨はさらっとこの漫画家の名前を出した舞美に驚いて突っ込みを入れた。
「普通女の子は読まない漫画家さんだぞ」
「同居してたお祖父ちゃんが好きで」
「それで知ってるのかよ」
「そうなんですよ、応援団の漫画とか暴力何とかとか熱笑とか任侠とか超人何とかとか」
「よく知ってるな、まあ応援団載ってた雑誌に連載してた漫画でな」
 琢磨は舞美にあらためて話した。
「そのアニメの歌だよ」
「茶臼山ですか」
「大坂の陣で徳川家康さんも本陣置いたしな」
「日本全土ではそちらの方が有名ですね」
「そうだけれどな、大阪じゃな」
 この地域限定でというのだ。
「そのアニメがいつも再放送しててな」
「先輩もご存知なんですね」
「面白いぜ、それで大阪にも山があって」
 その茶臼山にしてもというのだ。
「平地ばかりでもないんだよ」
「そうなんですね、いい勉強になりました」
「天王寺店の店長さんのお話と同じ位な」
「あの店長さんやり繰り上手ですね」
「ああ、ああしたやり繰りはな」
「経理としても勉強しないといけないですね」
「全くだよ、あとな」
 琢磨は舞美にさらに話した、四天王寺の方からその茶臼山の方を見つつ二人で地下鉄の駅に向かっている。会社まで地下鉄で戻るつもりなのだ。
「山があるとな」
「低い山ですか」
「山の妖怪とかいるかもな」
「まさか。山にいる妖怪は」
 その話になるとだ、舞美はこう琢磨に返した。
「山姥とか山爺とか」
「そんなのだよな」
「はい、山奥にいて」
 舞美は山の妖怪の話を琢磨にした。
「それで人を襲って取って食う」
「それが定番だよな」
「山姥とか」
 舞美は真っ先にこの妖怪の名前を出した。
「そんなので」
「山姥か」
「はい、さっきお話しましたけれど名張って周り山です」
 舞美は琢磨に共に大阪の街中を歩きつつ話した、賑やかな街中は人も多く平地で山なぞ全く無縁な感じだ。
「ですから」
「山姥もか」
「いるとかお婆さんを山の中で見たら」
「山姥とか言ってたんだな」
「子供達の間で」
「それはないと思うがな」
 流石にとだ、琢磨は舞美にどうかという顔で返した。
「ただ筍とか茸とか獲ってた婆さんだろ」
「それか山の中にあるお家に住んでいた」
「そんな人でな」
 それでというのだ。
「普通の人だろ」
「考えてみればそうですけれどね」
「子供だからか」
「冗談半分で言ってました」
「山姥がいるってか」
「だから近寄るなとか」
 取って食われるからだ、冗談半分の後の半分は怖さだ。子供の中ではこうしたこともよくあることで舞美達もだったのだ。 
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