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DQ5~友と絆と男と女  (リュカ伝その1)

作者:あちゃ
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63.思い出とは人々の歴史であり美しい物ばかりではない。

<大神殿-地下迷宮>
サンチョSIDE

入り組んだ造りになっている大神殿内をリュカ様は迷うことなく進んで行く。
石像のビアンカ様を小脇に抱えたまま…
「あの…リュカ様…重くは無いのですか?」
「コラコラ。ビアンカが重い訳無いだろ。怒られるよ、そんな事言うと!」
「いえ…そう言う意味では…」
「それにビアンカの何倍も大きい岩を、この場で転がしてたからね…このくらい気にならない…」

私は思わず息を呑んだ。
リュカ様は幼少の10年間を、ここで奴隷として過ごしたのだ…
さぞかし辛い10年間だったに違いない…

「いや~、懐かしいな~!10年間もここで石コロを転がしてたんだなぁ~!」
…辛い10年間…だったのだろう!?
「そうだ!ティミー、ポピー!あそこにある柱の根元を見てごらん。お父さんが名前を彫っておいたはずだから!」
「え!?本当?」
「ティミー、見てみましょ!」
…本当に辛かったのだろうか…?

「ほう…確かにお前の名前が刻まれているな!ついでに相合い傘で隣に『エイデン』と、刻まれているが…どなたですかな、リュカ!」
ピエール殿が冷たく言い放つ…
「……………さ、さぁ!もう少しでゴールだ!気を抜くなよ!」
「話を逸らすな!お前は本当に奴隷だったのか?先程の信者(元奴隷)の中にエイデン殿が居るのか!?また、不埒な事を企んではいないだろうな!」

「…あの中にエイデンは…居ないよ」
…それが意味する事は…
「エイデンは僕等子供達の、お姉さん的な女性だったんだ」
リュカ様が悲しそうに語る。
「美人で優しかったから…みんな大好きだった…本当に美人だったからね…兵士や獄卒共に犯されて身籠もっちゃたんだ…だから…殺された…」
リュカ様はスラリン達と共に先行しているティミー様、ポピー様に聞こえない様に語る…
優しく…悲しく…
「リュカ…その…すまない…」
「構わないよ、別に…ただ、懐かしい思い出が必ずしも良い物であるとは限らないんだ。それだけ…覚えておいて」
やはりリュカ様にとっては地獄の10年間だったのだろう…
今のこの性格は、そのころの反動なのだと私は思う事で納得した!

サンチョSIDE END


<大神殿-最深部>
ティミーSIDE

「イブール君!呪い解いて~!」
教団の大主教が待ち構えている部屋に、必要以上に明るく入って行くお父さん…
何で緊張しないんだろう…この人…

しかしお父さんの明るさとは裏腹に、室内は薄暗く禍々しい気配が漂っている。
気配の元凶は部屋の奥に鎮座しており暗くて顔は見えない。
「良く来たな…伝説の勇者とその一族よ…」
気配の元凶は立ち上がり、こちらへ近付いてくる。
お腹の底から響いてくる様な威圧感のある声を発しながら…

「我々の画策も虚しく勇者などと言うくだらぬ存在が産まれてしまった…ここまでは神のシナリオ通り。しかし、ここからは違う!貴様らを滅ぼし、神をも滅ぼし私が世界を構築してくれよう!」
イブールが暗がりから抜け全身を表した。
巨大なワニの化け物…それがイブールだ!

みんなに緊張が走る!
身構え今にも飛びかかりそうなその時!
「そんなんどうでもいいから、僕の奥さんの呪いを解いてよ。そしたら許してやるから」
………………………………………………………………………………………………………
「………えっと…お父さん!?…状況…分かってる?」
「え!分かってますよぉ~!でも、堅いビアンカは味気ないんだ!早く元に戻して柔らかいビアンカを堪能したいんだ!」
…真面目にやってよ~!
「ふっふっふっ…面白い…リュカよ、私と手を組まぬか?」
「………は?」
え!?
気に入られちゃった!?

「魔界には魔族の王、ミルドラースが人界に進出しようと力を蓄えている。そなたの母を攫い、その力を利用して…」
魔族の王ミルドラース!
「我と手を組み、魔王も神も共に滅ぼそうぞ!後の世界を支配するのだ!」
なんて奴だ…

「答えを聞かせて貰おう…リュカ…」
「…………」
お、お父さん!?
「ビアンカを元の姿に戻してよ。話はそれからだ」
お母さんの事しか頭に無いのかな…?
「ラマダに聞かなかったのか…我が生きている限り、呪いは解けん!しかし世界を手にすれば女など幾らでも好きに出来るぞ!」

「ふむ………じゃ、答えは単純!ビアンカが良い!お前死ね!!」
悪の誘いを断る理由としては、前代未聞だと思う。
でも、ある意味一貫している。
「愚かな男よ!死ぬがいい!!」
イブールは輝く息を放つ!
お父さんはそれをバギクロスで防ぐ!

慌てて僕等も戦闘に加わった!
イブールがイオナズンを唱え、みんなを吹き飛ばす!
何故だかほぼ無傷のお父さんが、ベホマでみんなを回復させる。
ポピーのマホカンタ、僕のフバーハ、サンチョがスクルトで守りを固める。
ザイル、プオーン、ゴレムスがそれぞれ打撃を加える!

しかし、然したるダメージを与えられない!
スノウがマヒャドを唱えるが、魔法が弾かれスノウを襲った!
だが、間一髪のところでお父さんがスノウを庇った!
「お父さん!!」
強烈なマヒャドにより氷の様に真っ白になるお父さん!
「さみー!!!もうヤダー!!後は任せた!」
またも、ダメージは負ってなさそうだ…何故?

意識を切り替えイブールへ斬りかかる!
お互いに魔法が効かない状況の為、直接攻撃のみになった!
イブールは堅く、なかなか決定的一撃を与えられない。
しかし後方にさがったお父さんが、随時ベホマをかけてくれるので、戦況はこちらに有利である。



戦闘開始から凡そ1時間…
僕の天空の剣がイブールの身体を貫く!
激闘の末、辛うじて勝利する事が出来た…

みんなボロボロだ…お父さんを除いて…さすがに腹が立つ…
「ば、馬鹿な…私が…敗れるなどとは…」
「伝説の勇者様を舐めるなよ!」
お父さん…黙ってて下さい…貴方は何もしてないでしょう!

「ふっふっふっ…良かろう…私がお前らを魔界へ送ってやる…魔界でミルドラースに滅ぼされるがよい!!」
血だらけの身体でイブールが両手を掲げる!
…………が、何も起きない…
「何も起きねぇーじゃねぇーか!コノヤロー!!」
間髪を入れずにイブールへ蹴りを入れるお父さん。
酷い………
「な、何故だ!?何故、何も起きない!?」

「ほ~っほっほっほ。何時まで大教祖のつもりなのです。貴方の企みなど、当に気付いておりましたよ」
ボブルの塔で聞いた、耳障りな笑い声…
「「ゲマ!!」」
お父さんとイブールの声が重なった。

突然、イブールの頭上に巨大な火球が現れイブールに直撃する!
「ぐはぁぁぁぁ!!!」
イブールの身体が跡形もなく消し飛ぶと、辺りからゲマの声だけが響き渡る。
「ほ~っほっほっほ。リュカ、束の間の幸せを味わいなさい。いずれミルドラース様自ら、人界を滅ぼすでしょう。ほ~っほっほ「あー!」
ゲマの笑いを遮って、突然お父さんが騒ぎ出す!

何事!?
「ビアンカに温もりが戻ってきた!!」
お父さんは一人、色を取り戻すお母さんを抱き締め、喜び騒ぐ…どうやらゲマの事など眼中に無い様だ!
本当にお母さんの事しか頭に無いのか?
僕は本当にこの人と血が繋がっているのだろうか?
不安になる…

ティミーSIDE END



 
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