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戦国異伝供書

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第九話 天守その四

「弓矢もです」
「持っておるか」
「左様です」
 その通りだというのだ。
「あの悪弾正ですぞ」
「だからじゃな」
「例え殿がそう言われましても」
「そなた達はか」
「何もさせませぬ」
 松永、彼にというのだ。
「ですからご安心下さい」
「心配し過ぎじゃがな」
「何としてもです」
「わしにはか」
「指一本触れさせませぬ」
 こう言ってだった、平手は信長を守る様にして彼の傍にいた。当然護衛役の毛利と服部も傍を離れない。
 そうして信貴山城まで行った、そしてだった。
 松永の居城であるその城を見てだ、信長は笑みを浮かべて言った。
「見事な城じゃな」
「はい、確かに」
「見事な見事ですな」
 家臣達もこのことは認めた。
「整っております」
「奇麗な城です」
「特にあの城の本丸にあるあれが」
「あれが一番いいですな」
「ふむ。あれは確かな」
 信長も本丸から見えるそれを見て述べた。
「天主というな」
「天主?」
「天主といいますと」
「それは」
「伴天連の者達が言っておった、あちらの城にはじゃ」
 南蛮の城にはというのだ。
「一番見事な塔、こちらで言う櫓があってな」
「そしてですか」
「その櫓がですか」
「城にある」
「そうなのですか」
「そうじゃ、それをじゃ」
 信長はさらに話した。
「弾正は城に置いたのじゃな」
「本朝の建て方で、ですか」
「そうしたのですか」
「この城において」
「そうじゃな、ではこれよりな」
 信長は家臣達にさらに話した。
「城を見ていくか」
「間もなく弾正めも来ますし」
「そうしますか」
「これより」
「あ奴の案内を受けてですな」
「城に入りますか」
「そうしようぞ」
 こう言うとだった、その松永が来て一行を城に入れた。だが殆どの家臣達は武装したままで彼を見据えていた。
 しかし松永がそれを気にしない素振りで案内した、無論兵達もだ。
 そして城主の間にて信長を上座に案内してだ、自ら頭を垂れて挨拶をした。
「この度はどうも」
「招いてくれたな」
「応じて頂き有り難うございます」
「うむ、見事な城じゃな」
 こう言うのだった。
「あの天主もな」
「天主をご存知ですか」
「伴天連の者から聞いた」
 既にとだ、信長は答えた。
「そうした、ではな」
「これよりですか」
「城の隅から隅までな」
「見て頂きますか」
「案内してもらいたいが」
「わかりました」
「では殿」
 佐久間がその松永を睨みつつ信長に言った。 
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