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真田十勇士

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巻ノ百五十一 決していく戦その十

「そのお主を背から襲えばどうする」
「お主はせぬ」
 一言でだ、根津は双刀のその言葉を否定した。
「負けを認めた、だからな」
「それでか」
「そうしたことはせぬ」
 一切と言うのだった。
「だからな」
「それでか」
「わしはこのまま殿の御前に向かう」
 勝ったからだというのだ。
「そうする、ではな」
「わしの首を取らずにか」
「殿の御前に向かう」
「ではな」
 こう話してだ、そしてだった。
 根津は幸村の下に向かった、双刀はその彼を背を向けたうえで見送った。そうして己の刀を手に取ったのだった。
 筧は幻翁と術の術の応酬を続けていた、幻翁は幻術を使いその中で手裏剣や他の術を放っていた。しかし。
 あらゆる術を使う筧にだ、彼は言った。
「わしは幻術なら誰にも負けぬが」
「それでもですか」
「お主のあらゆる術を使う力にはな」
 それにはというと。
「適わぬか」
「そう言われるとは」
 筧は幻翁のその言葉を受けて言った。
「有り難きこと、しかし幻術では」
「わしの方が上か」
「はい、それがしにはです」
 とてもという言葉だった。
「幻翁殿の様な幻術が使えませぬ」
「幻術ではわしか」
「ですが」
「他の術ではか」
「それがしは絶対の自信があり申す」
「それでわしには負けぬか」
「はい」 
 一言での返事だった。
「その自負があります」
「そうか、ではな」
「その自負に相応しいものをですか」
「見せてもらう」
 こう言うのだった。
「是非」
「それでは」
「わしも見せよう」
 幻翁も鋭い目になり言った。
「これよりな」
「天下一の幻術で以て」
「お主のその術に向かおう、一つの術で天下一か」
「あらゆる術に秀でているか」
「それを確かめよう」
「はい、しかしそれがしの術は言うならば」
 ここでだ、筧は幻翁にこう話した。
「妖術になるので」
「では天下一の妖術か」
「はい、そうなります」
「そうか、では天下一の幻術とな」
「天下一の妖術がですな」
「競うか、どちらの力が上か」
「幻翁殿かそれがしか」
 筧も応えて言う。
「どちらが上か」
「確かめようぞ」
「これより、では」
「はじめるとしよう」
 まずは幻翁がだった、全身で以て念じると。
 四霊獣に麒麟を出してだった。その獣で筧に向かった。だがその四霊獣達に対して筧はどうしたのかというと。
 獣達に対して一人の大元帥明王を出した、その身体は様々な力を帯びているのか赤に青、黒、白、黄色に光り十八の頭と三十六の腕でだった。
 獣達と戦ってだった。
 彼等を倒した、だがそれと共に。
 明王もその戦いで激しい傷を負い姿を消した。それで幻翁は言った。 
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