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真田十勇士

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巻ノ百四十七 吉報その一

               巻ノ百四十七  吉報
 大助は一人真田の忍道を通り大和に向かっていた、この道を忍の者特有の風の様な速さで進みそうしてだった。
 彼は瞬く間に大和まで来た、そこで一旦飯を食う為に奈良の街に入るとだ。
 奈良では秀頼達のことを話していた、彼等はこんなことを話していた。
「右大臣様はまことに亡くなられたのか」
「どうであろうな」
「城からお逃げになられたというが」
「わからぬな」
「国松様は都で切られたのじゃな」
「いや、それはわからぬらしいぞ」
 国松のことも話していた。
「切られたのは何処かの人を殺めた札付きの悪童であるらしい」
「何と、では国松様はご無事か」
「お護りしていた大野主馬様も行方知れずというが」
「あの方は生きておられるか」
「そして右大臣様も」
「そうであるのか」
 秀頼親子は生きているのではという話をしていた、そして。
 幸村達についてもだ、こんなことを話していた。
「真田様は素晴らしい働きをされたがな」
「討たれて残念であったな」
「いや、真田様の御首も影武者だとか」
「何っ、ではあの首は偽の首か」
「そうであるのか」
「他の誰かの首か」
「では真田様は」
 幸村、彼もというのだ。
「生きておられるのか」
「そうであるのか」
「あの方は」
「そういえば十勇士のことも聞かぬな」
「そうじゃ、真田様の十人の腕利きの家臣の方々もな」
 今度は十勇士達のことが話された。
「噂を聞かぬな」
「そうじゃな、討たれたとな」
「戦の最後の方でお姿を消したというが」
「果たしてどうなのか」
「ことの真実はのう」
「若しかするとどの方も今も何処かで生きておられるのやもな」
「いや、きっとそうであろう」
 誰かが希望を以て言った。
「きっとどの方もまだ生きておられるわ」
「大坂から落ち延びられてか」
「そうしておられるか」
「そうじゃ、きっとじゃ」
 秀頼も幸村達もというのだ。
「きっと生きておられるわ」
「そうか、戦には敗れたが」
「そうなったか」
 奈良ではこうしたことを話していた、しかし。
 大助はそうした話を聞くだけで飯を食うとすぐに奈良の街を後にした、そしてだった。
 また真田の忍道に戻り大宇陀に向かった、すると。
 そこは一見して普通の村だった、だが。
 ここで大助は耳を澄ませた、すると村人達の声が聞こえた。
「あの方もご無事で何より」
「全くじゃ、ここに来られた時は瀕死であったがのう」
「それが思わぬ位に傷が治られて」
「今では稽古もはじめられた」
「このまま無事にな」
「ここで生きておられて欲しいのう」
 こうしたことを小声で話していた、それを聞いてだった。
 大助は確信してだ、大宇陀の外れの方に行った。そこから大きな何かを振り回すかの様な音が聞こえたからだ。
 それでそこに行くとだ、まだにだった。
 後藤がいて槍を振るっていた、大助はその姿を見てすぐにだった。
 後藤のところに行って彼に声をかけた。
「後藤殿、お久しぶりです」
「おお、これは真田殿のご子息の」
「はい、大助です」
 後藤に畏まって応えた。
「お元気そうで何よりです」
「ははは、お互いにな」
「ご無事と聞いていましたが」
「この通りな」
「実際にですな」
「傷は深かったが家臣やここの百姓達に助けられてな」
 そうしてというのだ。 
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