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老害

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第二章

「そうなんですね」
「そうだ、その時にな」
「わかりました、じゃあ今度の日曜朝から研究室にお邪魔して勉強させてもらうつもりでしたし」
 斎藤の研究室でだ、彼の研究室には映像の資料を観る為にテレビを置いているのだ。勿論多くの本やパソコンも置いている。
 その研究室の中でだ、貴丈は斎藤に言った。時間は日曜の朝まさにその時間だ。
「それじゃあですね」
「ああ、そろそろだな」
「この番組のスポーツコーナーですね」
「その時だ」
「元針が出てですね」
「コメントする時間だ」
「そういえばです」
 貴丈は斎藤にこう言った。
「これまでこの番組は」
「観てなかったか」
「詳しくは。元針の言うことも」
 肝心のそれもというのだ。
「これまでです」
「しっかりとはか」
「聞いていなかったですし読んでもです」
「してこなかったんだな」
「はい」
「じゃあいい機会だ」
 斎藤は貴丈の言葉を聞いて自分の席から言った。
「ここでな」
「その元針の言うことをですか」
「聞いてだ」
「そしてですか」
「元針のことを知ることだ」
「そうですね、この目と耳でですね」
「知ることもスポーツだ」
 教師志望の貴丈にだ、斎藤は確かな声で話した。
「何といってもな」
「そうですね」
「そうだ、これから観るのだ」
「わかりました」
 貴丈は斎藤のその言葉に頷いてそしてだった。
 彼は斎藤と共に元針の発言を聴くことにした、すると。
 元針の一連の発言を耳にしてだった、貴丈は忽ち不機嫌になり苦い顔になった。そうしてスポーツコーナーが終わってから斎藤に言った。これ以上はないまでに苦い顔で。
「あのですね」
「酷いな」
「偉そうに喝ばかり言って」
 まずはこのことは気になったのだ。
「しかも言っている内容も」
「細かいところを見ていないな」
「しかも巨人だけ贔屓して」
 野球での発言も気になった。
「碌にものを見ていなくて言ってますから」
「的外ればかりだな」
「自分の実績だけで言ってますね」
「そうだろ、他に何かあるか」
「ないですね」
 貴丈にもはっきりとわかった。
「理論も何も」
「そうだな、しかもな」
「はい、その人間性が」
 巨人ばかり贔屓し何も見ていないのに偉そうに言うところがというのだ。しかも専門外でも何でもだ。 
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