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銀髪の薬売り

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第二章

「素晴らしい薬売りになったそうです」
「薬剤師でもある」
「そうなったそうです」
「そうしたことがあったんですね」
「はい、そのドラゴンは暫くして退治されたそうですが」
「それは何よりですね」
「森に入ったジークフリート卿に」
「あの英雄にですか」
 この国で一番の剣士と言われている、これまでたった一人で多くのドラゴンや他の強いモンスターを退治し人々を彼等から守ってきている人物だ。
「退治されましたか」
「そうなりました」
「それは何よりですね」
「ですが死んだ命は返ってはきませんね」
「だから彼女はですか」
「今もそのことを悔やんでいるのです」
 大怪我を負った兄を助けられず死なせた、そう思ってというのだ。
「そしてです」
「あの様に立派な薬売り、薬剤師になったのですね」
「今もその努力を続けているそうです」
「よりよくなる為にですか」
「はい、薬売りそして薬剤師として」
「お兄さんのことを思いながら」
「そうなのです」
 神父はこう役人に話した、彼女は今はこの街にいないが。だが彼女は定期的にこの街に来ていてだった。
 役人が神父と話をしてから三ヶ月後に街に来た、そうして薬や薬草を売って病人達を助けていたが。
 役人の母がだ、急にだった。
 床に臥せってしまった、それで彼は母に病気の原因を聞いたが。
 母にはわからなかった、それで医者を呼ぼうとしたが。
 丁度ここでクレアミアのことを思い出した、それでだった。
 彼女を呼んだ、するとだった。
 クレアミアは役人の母を見てすぐにこう言った。
「これはです」
「何の病気かな」
「はい、天然痘ですね」
「天然痘?」
「そうです」
 この病だというのだ。
「かなり危うい病ですね」
「私も知っているよ」
 天然痘と聞いてだ、役人も言った。
「激しい熱が出て」
「はい、多くの人が死んでいますね」
「例え助かってもだよ」
 それでもというのだ。
「顔一面にあばたが残って」
「そうなりますね」
「大変な病じゃないか」
「はい、しかし」
「治せるんだね」
「あばたも出ずに」
 もう一つの懸念もそれもとだ、クレアミアは答えた。
「出来ます」
「君の薬で」
「今から調合します」
 クレアミアはこう言ってだ、すぐにだった。
 調合した薬を出した、それを役人の母に飲ませてだった。
 数日飲ませるとあっという間にだった、役人の母は床から起き上がれるまでになった。その母を見てだった。
 役人はクレアミアに礼を言いかなりの報酬を渡そうとした、だがクレアミアは役人に無表情でこう言った。
「いえ」
「いえ?」
「そこまで多くはいらないです」
「そう言うがお礼としてね」
「報酬の額は薬売りのギルドで定められただけで」
「いいのかい」
「はい」
 そうだと言うのだった。 
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