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180部分:ラグナロクの光輝その三十四


ラグナロクの光輝その三十四

「ここか」
 既に七人とワルキューレ達の他は殆ど残ってはいない。部下達の多くは倒れるか、重要拠点を守っている。従ってここまで来れたのは僅かな者達だけだったのだ。そのことがこの星での戦いの激しさを何よりも雄弁に物語っていたのであった。見れば七人も、そしてワルキューレ達も大なり小なり傷を負っていた。ワルキューレ達の白い、全身を覆う戦闘服もダメージを受けており、その手に持つ槍に似たビームライフルにも損傷があった。だが彼等はそれでもここで止まるわけにはいかなかったのである。
「遂にここまで来ましたね」
 ブリュンヒルテが言った。見れば七人とワルキューレ達の周りは既に多くの戦士達の屍が転がっている。帝国軍のものもあれば連合軍のものもある。赤い黄金で飾られた祭壇の門はさらに血で塗られ、戦いの後の焦付く様な匂いが充満していた。このことだけでもこれまでの戦いがどの様なものであったかがわかる。
「ですが。これで終わりではありません」
「それどころかこっからが本番ってわけだな」
「はい」
 彼女はジークムントの言葉に頷いた。
「その通りです。
「では宜しいですね」
「ああ」
 ローエングリンが頷く。他の戦士達も同じであった。
「では行くか」
 ジークフリートが進み出た。
「この固く閉ざされている門を開いてな」
 トリスタンがそれに続く。
「中にいるニーベルングを」
 そしてタンホイザーが。
「今度こそ捕らえる。そしてこの戦いを」
「ですが御注意を」
 ワルキューレ達がヴァルターまでもが言ったところでそう言って彼等をまずは制止した。
「この奥にこそ。帝国軍の切り札がいます」
「帝国軍の」
「はい、ニーベルングの親衛隊です」
「親衛隊!?そんなものまでいるのか」
 六人はそれを聞いて思わず声をあげた。
「そうです、その名はベルセルク」
「ベルセルク」
 ブリュンヒルテの発した名に不吉なものを感じた。それはかって狂える戦士と言われた戦士達のことである。その名を聞いて不吉なものを感じずにはいられなかったのも無理はなかった。
「彼等がこの奥にいます。ですから」
「これまでとは。比較にならない戦いになるということか」
「はい。御気をつけ下さい」
「ですが。行かなければならないことには変わりありません」
 パルジファルがここで述べた。
「総帥」
「我々の目的はニーベルングを討つことですね」
「うむ」
「確かに」
 六人はその言葉に頷いた。
「それでは。行かなければその首は得られません。違いますか」
「ですが総帥」
 ブリュンヒルテが彼に言う。
「ベルセルクの力はあまりにも」
「無論それは覚悟のうえです」
 パルジファルもそれは把握していた。
「ですが。それでも」
「左様ですか」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず、ですね」
「ではもう答えは出ているな」
「門を開けよう」
「わかった」
 六人が門を開く。ゆっくりと、鈍い金属音を発して門が左右に開く。そして今地獄の門が開いた。その上にはこう書かれていた。古い、かって神々が使っていたという文字だ。
「ルーン文字ですね」
 ブリュンヒルテがそれを見て言った。他の者達にもそれはわかった。
「あの魔力を持っていたという文字ですか」
「はい。これは」
「この門をくぐる者、アルベリヒの加護なくして進むことは出来ない」
 突如としてパルジファルが呟いた。
「!?総帥」
「どうやらまた記憶が蘇ったようです」
 パルジファルは驚きの顔を見せるワルキューレ達に対して顔を向けて述べた。
 
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