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179部分:ラグナロクの光輝その三十三


ラグナロクの光輝その三十三

「総帥」
 ワルキューレの最後の一人が彼に声をかけてきた。
「シュヴェルトライテです」
 そのワルキューレは名乗った。最後の一人であった。九人のワルキューレが今名乗り終えたのであった。
「貴方の御聞きになりたいことはわかっています」
「左様ですか」
「御自身のことですね」
「はい」
 パルジファルはその言葉にこくりと頷いた。彼にとって一番の謎はそれであったのだ。
「貴方の謎は。最も大きなものです」
 シュヴェルトライテはそう語った。
「貴方はある意味。ニーベルングと同じなのです」
「ニーベルングと」
「はい。言うならば貴方はアースの体現者でもあります」
「我々の中でも絶対的な存在」
 ブリュンヒルテも言った。
「そうされています」
「おかしなことを仰いますね」
 パルジファルはブリュンヒルテとシュヴェルトライテの話を聞いてこう述べた。
「私が。アースの体現者であり、しかも何者かによってそうされているとは」
「私達も何によってそうされているのかはわからないのです」
 それに対するシュヴェルトライテの返答は実に奇妙なものであった。これにはパルジファルも他の六人も首を傾げざるを得なかった。彼等にもそれはわからなかったのだ。
「ですが。貴方はとりわけ重要な方なのです」
「言うならば。この戦いの中心にあられる方」
「中心」
 パルジファルは己が中心と言われ声をあげた。
「そうです。パルジファルという名前は」
「聖なる愚か者という意味なのですから」
「聖なる愚か者」
「それは一体」
「どういうことなのだ」
 他の六人にもそれはわからなかった。だがパルジファルにはそれはわかった。
「お待ち下さい」
 六人の仲間達とワルキューレに対して言う。
「それは。私の記憶のことなのですか?」
「おそらくは」
 シュヴェルトライテはそれに答えた。
「私達も。そう思っています」
「貴方の記憶は。徐々に戻ってきていますね」
「はい」
 ワルトラウテの質問にも答えた。
「その通りです。ですがその記憶は」
「太古からの。宇宙が出来た時からの記憶ですね」
 今度はパルジファルが問うた。
「それからの膨大な記憶が私の頭の中に蘇ってきます。これは一体どういうことなのでしょうか」
「おそらくは。それこそが貴方がアースの体現者である由縁なのでしょう」
「パルジファル=モンサルヴァート。聖なる愚者にして聖杯の守護者よ」
「聖杯の守護者」
「何時か貴方はその記憶を全て取り戻されるでしょう。その時は間も無くです」
 そう告げられる。
「間も無く」
「はい、その時こそ」
「クリングゾル=フォン=ニーベルングが倒れ、全ての戦いが終わる時」
「それは間も無くなのです」
「では行きましょう」
 ワルキューレ達はその名に相応しく戦士達を戦いへ誘う。七人の戦士達はその言葉に逆らうことは出来なかった。それが戦士としての血であり、運命であるのだから。
「ニーベルングとの戦いへ」
「はい」
 七人を代表してパルジファルが頷いた。
「では」
「参りましょう」
 彼等は武器を手に戦場へ向かう。七人とその選りすぐりの部下達の他には九人のワルキューレがいるだけである。だがそれで充分であった。今の彼等は誰にも止めることは出来なかったのだから。
 彼等はスルトの要所を次々と押さえていく。そしてクリングゾルがいるというアルベリヒ教の祭壇を目指していた。そこに至るまでの敵は実に多かった。だが彼等はそれを退け遂には祭壇の門まで辿り着いたのであった。
 
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