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リング

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172部分:ラグナロクの光輝その二十六


ラグナロクの光輝その二十六

「間違いないですか」
「そうです。ですから」
「今は動揺しないことが第一と」
「宜しいですね」
「はっ」
 部下達はそれに応えた。一斉に敬礼する。
「動揺さえなければ。勝利が我等が手に」
「我等が手に」
 パルジファルは兵を上手く統率していた。他の六人もそれは同じであった。そして帝国軍を待っていた。
 やがて帝国軍が迫るとの報告が届いた。潮流に乗りこちらに高速で向かって来ているという。
「そうですか」
 その報告を聞いたパルジファルの兜の奥の目が光った。
「やはり」
 それもまた彼の予想通りであったのだ。ならば。彼の用兵は決まっていた。
「すぐに全軍に指示を」
 彼は即座に動いた。全軍に指示を出す。
「右手の潮流に入ります」
「右手の潮流に」
「そうです」
 ムスッペルスヘイムを流れる複雑な宇宙潮流。その中の一つに入るというのだ。
「そしてその流れに従って動きます。いいですね」
「全軍ですね」
「そう、全軍です」
 彼は確かにこう言った。間違いはなかった。
「敵もまた全軍で来ているならば」
「我々もまた」
「そうです。そして決戦に挑みます」
「わかりました。それでは」
 連合軍は潮流に入った。そしてそれに従って動く。帝国軍はそれとは違う潮流に乗って連合軍に向かう。その流れは速く、止められないものであった。
 二つの潮流は複雑に絡み合っていた。帝国軍は連合軍が後ろに来たのを見て一斉に反転する。そして彼等はそこで激突する。ここで異変が起こった。
「帝国軍の動きが」
 見ればモニターに映る帝国軍の動きがおかしかった。彼等はこちらに向かおうとしながらもその足が遅かったのだ。
「これは一体」
「かかりましたね、彼等は」
 パルジファルはそんな帝国軍を見て言った。
「かかったとは」
「潮流です」
 部下に応えて言う。
「潮流!?」
「そうです、彼等には確かに地の利があります」
「ええ」
「それを使って短期間でここまで来ました。それは間違いないです」
 地の利は明らかに敵にある。パルジファルはそれを完全に把握していた。それに誤りはなかった。
「しかし。それが仇になりました」
 それこそが彼の最大の狙いであったのだ。
「近付いて来る我が軍に対して彼等は反転しました」
「はい」
「しかしあの潮流の流れは強い」
「動きを阻害する程に」
「そう。彼等はそれを忘れていました。そして今」
「我々に。向かって行けない程にまで」
「しかし我々は違います」 
 動きが鈍る敵軍を見据えながら言う。
「潮流は我々の方から敵の方に流れています」
「では」
「はい。敵の攻撃は退けられ、我々の攻撃は乗る。最高の状況です」
 その通りであった。これこそがパルジファルの狙いであったのだ。
「全軍に伝えて下さい」
 そのうえで言う。
「総攻撃です」
「総攻撃」
「今こそここでの戦いを制する時です」
「うむ」
 
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