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リング

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171部分:ラグナロクの光輝その二十五


ラグナロクの光輝その二十五

「大丈夫なのか?」
 自軍の布陣する場所を見て危惧を覚える者もいた。
「ここにいて。若し敵が来たら」
「磁気に阻まれて動けなくなって」
「お陀仏、なんてことにならないよな」
「いや、まずいだろ」
 そう考える者もいた。
「本当に。ここにいたら」
「やられるよな」
「そうだよな」
「けどここまで来たらやるしかないだろ」
 同僚の一人がここで言った。
「どっちみち敵の方が多いんだぜ」
「けどよ」
「覚悟決めろって。それに敵さんはあの化け物みたいな竜じゃなくて普通の戦力だけなんだからな。その連中には別に苦戦はしてこなかっただろ」
「まあな」
「それはな」 
 彼等はそれぞれの主の下多くの戦場を潜り抜けてきた歴戦の者達である。戦いというものがわかっていた。帝国軍を幾度となく破ってもいる。だから同僚のその言葉でまずは落ち着いた。
「敵の方が多い戦場だってあったしな」
「それでも勝ってきただろう?」
「ああ」
「だから今ここにいるんだ」
「だったら。どっしり構えていようぜ」
 彼は言った。
「おたおたしてたらかえって勝てる戦いも負けちまうからな」
「そうか」
「そうだよな」
 それを受けて彼等の顔にも覇気が戻る。
「おどおどしてたら駄目だよな」
「ああ、どっしり構えないと」
「よし」
 兵士達は今覚悟を決めた。
「じゃあ待つか」
「敵が来るのをな」
「勝つのをな」
 彼等はパルジファル達を信じることにした。今その心に覚悟と宿った。その話はパルジファルの耳にも入った。彼はそれを聞いて満足したように頷いた。
「よいことですね、流石です」
「流石ですか」
「今まで多くの戦場を潜り抜けてきたことはあります」
「ですね」
 六人は多くの激戦を戦い抜いてここまで来ているのだ。その将兵達も。だからこそ彼等はすぐに落ち着きを取り戻し、戦いに向かう気構えを整えたのだ。激戦を潜り抜けた経験が彼等をそうさせたのだ。
「では将兵の士気に関しては問題ないですね」
「後は我々が彼等を上手く率いるだけです」
「はい」
 パルジファルは応えた。
「それさえ整えば。そして」
「作戦はお任せ下さい」
 パルジファルは部下に対して言った。
「全ては私の頭の中にあります」
「では」
「勝利は。間違いないです」
 彼の言葉は力強いものではない。だが絶対の説得力がそこにはあった。そうした人を納得させることの出来る言葉もまた彼の持つ能力の一つであった。
 
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