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儚き想い、されど永遠の想い

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7部分:第一話 舞踏会にてその四


第一話 舞踏会にてその四

「凄かったらしいからね」
「ああ、あの人はね」
「まさに英雄色を好むで」
「派手だったからね」
「よく聞いてるよ」
 彼等は笑いながら話していく。実際に伊藤博文は艶福家としても有名であった。
「常に女性をはべらしていたとか」
「夜になるとだったね」
「一度に二人を愛手にすることもざらだったとか」
「いやいや、男はそうなりたいかな?」
「ははは、そうだね」
「確かにね」
 彼等は冗談めかして話していく。そしてだ。
 その中でだ。義正はこう話すのだった。
「伊藤公爵のその話には」
「興味がないかい?」
「そうだっていうのかい?」
「うん、人の女性関係にはね」
 そのこと自体がだというのだ。
「興味がないんだよね」
「そうなのか」
「まあ公爵は確かに女好きだったけれど節度はあったしね」
「それはね」
 有力者の愛妾と思われる相手には手を出さない、そして芸者を相手にするのが常だった。女性関係は派手でも女性問題は避けていたのだ。
「その辺りはしっかりしていたからね」
「そうしたところは凄いけれどね」
「流石というべきか」
「けれど君はそうしたことにも」
「うん、興味がないんだ」
 また言う彼だった。
「恋愛は節度があればいいと思うしね」
「節度のある恋愛だね」
「道ならぬ恋ではなく」
「あくまで純粋な、っていうのかい」
「君の望む恋愛は」
「そうなんだ。そうした相手が欲しいんだ」
 言葉がだ。切実なものになっていた。
「僕はそうなんだ」
「真面目だね」
 友人の一人が笑いながらこう述べた。
「君らしいよ」
「僕らしいかい」
「恋愛にも真面目なところがね。君らしいね」
「ううん、そうなのかな」
「そうだよ。けれどそれがいいよ」
「いいんだね、それで」
「何ごとにも節度があるのはいいことだよ」
 だからだというのである。
「君らしくもあり。いいことだよ」
「じゃあ僕はこのまま」
「間違ってもおかしな相手には惚れないでくれよ」
 このことが釘を刺されるのだった。
「世の中そうした相手もいるからね」
「だからだね」
「そう。道ならぬ恋も」
 それも駄目だというのだ。
「それも駄目だからね」
「それもわかっているよ」
 義正はそのことにだ。真面目な顔で答えた。それは友人達だけでなく自分自身にもだ。そのことを言い聞かせているのであった。
 そうしてだ。彼は言っていく。
「ではね」
「うん、それではだね」
「いい恋愛をしてくれよ」
「君の夢を適えるんだ」
「そうしてくれよ」
「わかってるよ」
 笑顔で応える。彼は今はそうしていた。その日はそれで終わりであった。
 そして数日後またパーティーが開かれた。場所は同じであった。
 その場に入る時にだ。彼はこう執事に言われた。若い、代々彼の家に仕えている家の者だ。幼い頃からの知り合いであり彼より一つ年少の執事である。
 
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