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儚き想い、されど永遠の想い

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68部分:第六話 幕開けその十二


第六話 幕開けその十二

「今からな。またはじまるぞ」
「そうですか。それなら」
「本当にいい時に戻ってきた」
 またこう言う長兄だった。
「見計らった様だな」
「別にそれはないですが」
「見計らってはいないか」
「もう戻らないといけないと思いましたが」
 何をしていたのかは話さずに答えた義正だった。
「それで」
「そうか。いい頃合いだったな」
「はい、そう思います」
「いいロビーだからな」
 義愛は末弟がそこで何をしていたのかは考えずに述べた。
「くつろぐには最適だ」
「はい、本当にそうです」
「ロビーも大事か」
「欧州のオペラハウスですが」
 義智がふとだ。長兄に対して言ってきた。二人の話に加わった形である。
「ロビーもまた重要とのことです」
「ただ。音楽を聴くだけではないか」
「ロビーの充実もまた優れたオペラハウスの条件の一つだとか」
「オペラハウスか」
 欧州の華やかさの象徴の一つである。その話を聞いてだ。
 義愛はだ。遠くを見る目になった。そのうえで弟達にこう話すのだった。
「我が国でオペラハウスができるのは何時になるだろうか」
「オペラハウスですか」
「それがですか」
「オペラの為だけの劇場」
 そうした条件を付け加えたのである。
「それができるのは何時だろうか」
「それはどうも」
「わかりかねます」
 弟達はいぶかる顔になって述べた。その間にだ。義正は己の席に戻っていた。そうしてそのうえで兄達と話を再開するのだった。
「芸術もまたその国の文化の成熟の一つですし」
「オペラはその中で最も重要なものでしょう」
 総合芸術だからだ。
「ですが。今の我が国では」
「オペラハウスは」
「夢か」
 義愛は少し残念そうに述べた。
「それはまだ夢か」
「残念ですが」
「そうではないでしょうか」
「夢ならばだ」
 しかしだった。ここで義正はだ。
 気を取り直した声になってだ。この言葉を出したのであった。
「現実になるな」
「夢はですか」
「現実になるというのですね」
「そうだ、夢と現実は別物ではない」
 彼もだ。そう考えているのだ。だからこその言葉である。
「同じなのだ。つながっているのだ」
「夢は現実になり」
「現実は夢に現れる」
「だからですか」
「夢と現実は別ではありませんか」
「同じではないが別ではない」
 こう夢と現実について話す。
「その通りだ。夢は現実になり現実は夢に現れるものだ」
「ではそのオペラハウスの夢もまた」
「現実のものにですね」
「そうしたいものだ。何時かな」
 こう話しているうちにだ。はじまりを知らせるベルが鳴った。それを受けてだ。
 義正は顔を前にしてだ。こう弟達に話した。
「はじまるな」
「はい、今からですね」
「はじまりますね」
「音楽に専念しよう」
 弟達に告げた。
 
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