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儚き想い、されど永遠の想い

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359部分:第二十八話 余命その一


第二十八話 余命その一

                 第二十八話  余命
 真理は義正と共に病院に行った。真理の身体が落ち着いてから。
 そのうえで病院に行き診察を受けた。その結果は。
「残念ですが」
「そうなのですか」
「あと一年です」
 真理の余命はだ。それだけだというのだ。
「奥様はあと一年です」
「そうですか。一年ですか」
「病の進行がとにかくです」
 どうかというのだ。その進行が。
「予想以上に進んでいます」
「それはやはり」
 義正がその医師の診察に問うた。
「出産のせいでしょうか」
「はい、それが大きいです」
 実際にそうだとだ。医師も答える。
「そしてそれと共に」
「まだあるのですか」
「病の進行自体が早かったです」
 真理自身のだ。それがだというのだ。
「ですから。もう」
「そうですか」
「私達はこれで」
「はい、あと一年です」
 一年しかだ。二人は共にいられないというのだ。
「残念ですが。ただ」
「それでもですね」
「その一年の間。お二人で、です」
 医師もだ。義正と真理に話した。
「どうかその間」
「わかりました」
「そうさせてもらいます」
 二人も頷きだ。そうしてだった。
 共にだ。病院を出てだった。
 二人で義正が運転する車の中で話をした。真理は助手席にいる。
 その中でだ。義正が言った。
「急ですね」
「本当に」
 俯いてだ。真理は義正に応えた。
「思いも寄りませんでした」
「そうですね。ただ」
「ただ?」
「一年です」
 義正が言うことはこのことだった。時間のだ。
「一年あります、まだ」
「その一年の間ですね」
「共にいましょう」
 これが義正のだ。真理への言葉だった。
 車は神戸の町の中を進んでいく。神戸の街並みはいつもと変わらない。しかしだ。
 二人は今はその街並みを見ずにだ。それで話すのだった。二人で。
 義正はだ。その中で真理に言った。
「一年の間」
「そうするべきですね」
「それしかないと思います」
 選択肢は一つ、そうだというのだ。
「ですから」
「そうですね。一年なら一年で」
「共に過ごしましょう」
 また言う義正だった。
「是非共」
「わかりました。それでは」
 真理もだ。選択肢は一つしかなかった。そして二つの選択肢は同じだった。
 同じ選択肢を決めてからだ。二人はだった。
 屋敷に着いた。今は冬があるだけだ。雪は消えている。
 その今は枯れて風に揺れている丹羽を見ながらだ。義正は話した。
「せめてですね」
「せめて?」
「一年なら」
 その一年に。どうかというのだ。
「四季を全て味わいたいですね」
「二人で、ですね」
「はい、二人で」
 こう言うのだった。その冬の庭の中で。
 
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