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儚き想い、されど永遠の想い

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336部分:第二十六話 育っていくものその二


第二十六話 育っていくものその二

「私も母親に」
「何か夢の様ですね」
「そうですね」
 喜久子がだ。麻実子の言葉に頷いていた。
「ですがそれはです」
「私達もですね」
「そうです。私も麻実子さんも」
 麻実子にこう話す彼女だった。
「やがてはです」
「母親になる」
「信じられないですね」
 喜久子はこんなことも言った。
「それは」
「はい、とても」
 麻実子は素直に喜久子に答えた。そのうえでの言葉だった。
 それでだ。彼女はこうも言った。
「夢の様な御話です」
「しかしそれは夢ではなく」
「現実なのですね」
「そうです」
 まさにそうだというのだ。現実だとだ。
「私達にとっても」
「女性なら誰でも」
 麻実子はまた言った。
「そうなるとしても」
「現実に。私達自身にそれが起こらない限り」
「夢に思えて仕方ありません」
 実際にだ。夢を見る様な顔で麻実子は話す。
 そのうえでだ。真理を見てだ。そして言うのだった。
「真理さんにとってそれは」
「いえ、私も」
 真理もだ。ここで言った。
「何か。今も」
「夢みたいですか」
「そうなのですか」
「現実のものとは思えないのです」
 そうだとだ。二人に話すのだった。
「夢幻の中にいるような」
「子供がお腹の中にいても」
「それは」
「はい、現実には思えないところがあります」
 真理はまた麻実子と喜久子に話した。
「今もです」
「左様ですか。実際に妊娠されていても」
「そうした風に思われるのですね」
「女性が結婚して子供を産む」
 真理はまた言った。このことを。
「そして育てることですが」
「人間の中で最も神秘的ですね」
「不思議なことですね」
「かえってそのことについてよく考えるようになりました」
 子供ができたことによりだ。そうして。
 病になったことも大きかった。だがそのことは二人には話さず。
 子供のことだけを話してだ。彼女は二人に述べた。
「女性にあるその特別なことについて」
「何故でしょうか」
 麻実子がまた言った。
「私達女性が子供を産めるのか」
「そうですね。男性は宿し」
 男からそれが入れられ。そうしてだと。喜久子も話す。
「そして女性が産む」
「御互いがいないと果たせないことですが」
「でも。女性が産めるというのは」
「こう思うのです」
 まただ。真理が話してきた。
「女性は太陽だと」
「あっ、その御言葉は確か」
「あの方の御言葉ですね」
「平塚らいてうさんでしたね」
 麻実子と喜久子に続いてだ。真理も言った。そうして。
 
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