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儚き想い、されど永遠の想い

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31部分:第三話 再会その六


第三話 再会その六

「結婚とかそうしたことはまだ」
「考えられないんだね」
「そうだよ。ちょっとね」
 微笑んでだ。そのうえで彼等に話す。
 その口調は真面目であった。冗談めいたものは何処にもない。
 そしてその口調でだ。彼はさらに話すのだった。
「それでだけれど」
「高柳さんのことじゃなくて」
「他のことだね」
「うん。最近ね」
 彼はだ。穏やかな口調に戻って彼等に話す。
「映画で面白いのはあるかな」
「映画?」
「映画かい」
「何かあるかな。最近映画にも凝っててね」
 話題を変えたのだ。そちらにだ。
「何か面白いものをね」
「そうだね。最近だとね」
「何かあるかな」
「日本のものも増えてきたけれど」
「洋画で何かあったかな」
「亜米利加の映画であったかな」
 ここで出て来たのはだ。この国の映画だ。
「あの国は随分映画に力を入れているみたいだけれどね」
「じゃあ亜米利加の映画がいいかな」
「そうだね、どうだいそれじゃあ」
「亜米利加の映画で」
「それでどうかな」
「そうだね」
 義正もだ。彼等の話を聞いてだ。そちらに傾いた。
 そしてそのうえでだ。あらためて彼等に話した。
「じゃあ。亜米利加の映画を観ようかな」
「亜米利加は文学もいいしね」
「そうそう、マーク=トゥエンなんかいいね」
「作品だと若草物語とかね」
「風と共に去りぬもいいね」
「そうした作品の映画があればいいね」
 義正はここでまた言った。
「是非観たいね」
「そうだね。名作を映画で観るのはいいものだね」
「文章で読むのと目で観るのとはまた違うから」
「実にいいものだね」
 こう話していくのだった。彼は今は文学やそうしたものの話に興じたのだった。
 その時真理はだ。白いドレスを着て宴の場にいた。そしてだ。
 電車で彼女と共にいたあの女学生とは別のだ。小柄でまだ幼い顔の少女がいた。黒髪を左右でまとめている。目が優しい感じで唇が厚い。淡い黄色のドレスに身を包んだ彼女と共にいてだ。そしてその彼女に対して話すのだった。
「お父上の宴ですが」
「お父様のですか」
「はい、素晴らしいものですね」
 穏やかな笑顔で話す真理だった。
「西洋の場に。こうして」
「お寿司があることがですね」
「それが素晴らしいです」
 こう話すのだった。
「それにお酒も日本のものですね」
「お父様はこうしたものがお好きでして」
「西洋の中に日本のものがあることがですか」
「いえ、東洋がです」
 日本だけでなくだ。東洋自体がだというのだ。
「東洋があること自体がお好きなのです」
「そうなのですか」
「西洋だけに目を向けていてはならないと仰っていまして」
 この考えは明治から戦前まで共通しているものだ。日本人は西洋文明を受け入れたがそれでもだ。東洋の中にいたのである。
 それはだ。彼女の父も同じだというのである。
「ですから。こうして」
「お寿司もですね」
「他にもです」
 さらにだと話すのだった。
「支那のものもです」
「あの国のものもですか」
「はい、どちらもです」
 彼女は笑顔で真理に話していく。
 
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