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儚き想い、されど永遠の想い

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29部分:第三話 再会その四


第三話 再会その四

「真理、そこだったか」
「お父様」
「今日もそこにいるのだな」
 こうだ。娘に対して言うのだった。彼は何時の間にか庭に出ていた。
「そして緑を見ているか」
「はい、少し」
「緑はいいものだな」
 父はだ。庭のそれについてはこう言った。
「見ていればそれだけで落ち着く」
「そうですね。ですから今も」
「何か悩んでいるのか?」
 娘の表情からだ。それを察しての言葉だった。
「まさか」
「悩みですか?」
「そんな風に見える」
 娘の顔を見てだ。こう話すのだった。
「違うか、それは」
「それは」
「言えぬか」
 口ごもった娘を見てだ。また言う父だった。
「そうなのか」
「いえ、別に」
「言えぬのならいい」
 ここではだ。寛大なものを見せるのだった。父親としてだ。
「それはな」
「ですから私は」
「悩みがないのならいいがな」
「はい」
「それでだ。今度だが」
 父は娘を気遣いながら話を変えてきた。彼女が口ごもっているのを見てだ。そしてそのうえでだ。父はまた話すのであった。
「今度のパーティーだが」
「パーティーですか」
「高柳さんの主催のな」
 その人物の開くものだと話すのだ。
「それだがな」
「私が出るかどうか」
「どうする?それは」
「そうですね。それは」
「出るか」
「はい」
 そうするとだ。静かに答えた真理だった。
「そうさせてもらいます」
「宴はいいものだ」 
 父は微笑んでだ。こんなことも娘に対して話した。
「ただ楽しむものではない」
「楽しむものではないですか」
「人を知る場でもある」
 そういうものだと話すのである。宴がどういったものかをだ。
「そうした場でもあるのだ」
「人をですか」
「そうだ、人をだ」
 こう話すのだった。
「人と出会い。そしてだ」
「そのうえで、ですか」
「知る場だ。はじめて出会って知る者もいれば」
 それに限らないというのである。
「知っている相手に対してもだ」
「そうした方にもですか」
「より深く確かに知る場でもあるのだ」
 宴はだ。そうした場所だというのである。
「それが宴なのだ」
「だからこそ出るべきですか」
「そうだ。だから宴は出るべきだ」
 彼は確かな声で娘に話した。
「わかったな」
「はい、それでは」
「行くぞ」
「わかりました」
 こうしてだった。真理もその宴に出ることになった。宴はその代議士、高柳が用意したホテルにおいてであった。そこで行われていた。
 そこに義正がだ。佐藤を連れて入った。既に正装に着替えている。
 その姿で白と黄金に輝く場に入った。するとだ。
 早速、である。小柄で白いカイゼル髭の額の広い男が来てだ。彼に笑顔で声をかけるのだった。
「おお、来てくれたね」
「あっ、これは」
 義正もだ。その男に笑顔で応えた。
「高柳先生、お久し振りです」
「いやいや、元気そうで何よりだよ」
 その高柳もだ。義正に笑顔で返す。
 
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