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儚き想い、されど永遠の想い

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205部分:第十五話 婚礼その十四


第十五話 婚礼その十四

「その彼等が素晴しいことはいいことだ」
「その中でもあの方は」
「そうだと仰るのですか」
「いや、この場合において人は比べない」
 それはしないというのだ。これは我が子達への配慮と共にだ。もう一つの理由があった。
「伴侶とは不思議なものだ」
「不思議ですか」
「そうなのですか」
「そうだ。相性というものがある」
 彼がここで話すのはこのことだった。
「どれだけ素晴しい者同士でも相性が悪ければだ」
「その婚礼は悪いものとなる」
「そうなるのですか」
「真理にとって彼は」
「あの八条家の方は」
「相性がいいのですね」
「素晴しいまでにな」
 西洋風の椅子に座ったうえで。満足している笑みを浮かべての言葉だ。
「いいのだ」
「では。真理は」
「その方と結ばれるのですね」
「真理さんにとって最も素晴らしい伴侶と」
「そうなる」
 まさにそうだというのだ。
「これだけ素晴しい相手はいないだろう。真理にとって」
「そうですか。あの方は」
 真理もだった。
「私にとっての」
「そう、最高の伴侶だ」
 娘に対しても笑みを向けての言葉だった。
「だからだ。御前はだ」
「幸せにですね」
「なる。絶対にだ」
 こう言うのであった。
「二人でな」
「幸せにでるね」
「それをはじめられる」
 娘にだ。確かな言葉で告げる。
「安心していい」
「はい、それでは」
「では行こう」
 その真理に告げた言葉である。
「今からな」
「お父様と二人で」
「因果なものだな」
 ここでだ。父は苦笑いも見せた。
「西洋の結婚式というものは」
「因果ですか?」
「それはまたどうして」
「結婚は娘を。最愛の娘をだ」
 その娘をだ。どうするかというのだ。
「他の相手に手渡すのだからな。それも実際にだ」
「そうですね、それは」
 真理の兄がだ。父のその言葉に頷いた。
「確かに因果であります」
「それがわかってくれるか」
「私はまだ子供はいませんが」
 それでもだというのだ。家庭を持ちそれでわかったというのだ。
「ですがそれでも。娘ができてそうなるとなると」
「想像して。わかるな」
「辛いものでもありますね」
「そうだ。辛い」
 その気持ちをだ。彼は言葉にも出すのだった。
「とても辛い。ただだ」
「ただ?」
「それと共に嬉しくもある」
 今度は純粋な笑みになってだ。家族に話したのである。
「同時にな」
「そうですね。それは確かに」
 母がだ。笑顔でまさにそうだと頷くのだった。
 
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