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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  怒りの鞭



盗まれたカード。アンデッド襲撃。
そして、現れる仮面ライダークイーン。


彼女は叫ぶ。天王路のじいちゃんの仇だと。



――――天王路

剣崎達が、この名を耳にして連想する人物はただ一人しかいない。



天王路博史

彼らラウズカードを使う仮面ライダーが闘っていた敵、アンデッドを研究保管していた組織《BOARD》の創始者にして元理事長だった男だ。


しかし、彼はいわゆる裏切り者と言える存在だ。

封印されたカード状態のまま保管されていたアンデッドたちを世に解き放ち、52種による地球の覇権を賭けたバトルファイトを引き起こした張本人にして、そのためにBOARDを壊滅させた元凶とされているのだから。
しかも、自身をアンデッド化させて自らも参加、自分こそがこの星の支配者になろうと画策していたのだ。

即ち、ブレイドたちの戦いは、全てにおいて天王寺博史が元凶と言えるのだ。



そして、彼女は


「じいちゃんは仮面ライダーにあってくるって言って、そのまま消えた!!あんたたちが何かしたんでしょう!!」

「ちょ、ま」

「言えッ、この!!!」

「あだっ!?」


目的としていた者が目の前にあることで、彼女―――仮面ライダークイーンは興奮している。

鞭を振るい、縦横無尽に飛び交うそれは一撃でブレイドの手から剣を弾き落とした。
ビリビリと痺れる感覚を手に覚えながら、一撃の鋭さにブレイドが思わず飛び退いた。


ヒュンヒュンとクイーンの周囲を覆うように、鞭のボディ(長いひも状の部分)が唸りを上げて飛び交っている。

まるで全方位バリアでもあるかのようだ。
そのままで、クイーンは歩を進める。

アスファルトの地面に何筋もの抉り跡を残しながら、徐々にブレイドに近づいていく。



「ちょっと待てって!!俺らは」

「なに!?悪くないっての!?」

「いや、確かに倒したのは俺たちだけど、それは」

「言い訳無用!!世間じゃあんたたちの事ヒーローだ英雄だ何だ言ってるけど、あたしにとってはじいちゃんを助けられなかった役立たずだ!!」

「マジかよォ・・・!!!」



腕の装甲で鞭を弾きながら、彼女の鞭をガードするブレイド。
その様子を見て、カリスとギャレンが冷静に状況を整理していた。


「天王路がじいちゃん・・・ということは孫、血縁者か」

「あの口ぶりだと、あいつ身内にはいい爺さんだったらしいな」

「腹黒なあいつらしい」

「だがならばあの女が変身バックルを持っていてもおかしくない・・・・のか?」

「自分をアンデッドに改造した男だ。バックルも作っていておかしくはない」

「で、その仇である仮面ライダー―――オレ達を狙ってきたってことか」

「ああ。しかも彼女、天王路のことを「仮面ライダーと何かをやってる正義の味方」か何かだと思っている」

「なるほど。オレ達があいつを見殺しにしたと」

「そして、剣崎はオレ達の中で最も人目についていた。怒りの矛先が向きやすいのも当然か」

「まずは天王路がどんな事をしていたか、そこから徐々にどんな人間だったかを説明するしかないな」



そんなことを話しながら、状況から敵の素性を探る二人。

ちなみに二人とも、剣崎にガードしきれないであろう鞭を的確に銃や弓で撃ち落としながらである。



ブレイド自身はどうか。
今の状況をみると、ブレイドが防戦一方で成す術がないような印象を受ける。

が、事実はそうではない。



上級アンデッドカードであるクイーンを四枚まとめたカードによるライダー。
鞭という広範囲にして適確適打の武器。

そして奪ったカードによる陽動に加え、ブレイドは今武器がない状態だ。


だがそれだけの不利な要素があれども、仮面ライダーブレイドが劣勢であるというわけではない。



第一に、すでに五分ほど鞭の猛襲のただ中であるが、ブレイドはいまだ無事である。

上半身の逸らし、体捌き、脚運びで前後左右にスッスッ、と回避し、不味いのは腕の装甲でガードしていて、ダメージと言えばそんな表面的なものばかりだ。


第二に、ブレイド―――剣崎一真はアンデッドの高レベル融合計数の保持者だ。

人間にアンデッドの力を装甲として纏わせるこのライダーシステムは、その数値が高ければそれだけアンデッドの力を引き出せる。
相手は確かにクイーンのカードで変身しているが、おそらく融合計数はそう高くない。

対して、高いレベルでアンデッドの力を引き出せる剣崎は、最初の頃とは比較にならないほどにこの力になじんでいる。
今や通常形態でも、ジャッククラスのアンデッドなら容易に相手ができるだろう。


そして第三に、クイーンの鞭という武器。

もともとある程度鍛錬している様子はうかがえるし、変身したことにより扱い方も数段にうまくなっているのだろう。
だが、やはり長年にわたり鍛錬、そして実戦経験を積んできたブレイドに対しては一歩及ばないのだ。

そもそも、鞭という武器自体が慣れ親しむものではない。
手首のスナップ一つで敵を打てる反面、手首のスナップ一つで的外れな方向に飛んでいく。

しかも、ブレイド一人を打ち叩くのにこれだけの範囲攻撃。
この技の技量や範囲の広さはさすがなものだが、使い方を間違っているというほかない。



これらの要因から、変身者の身体、格闘能力が異常に高くない限り、この状況でブレイドがこのような力技で押し負けることはほぼない。




現にだんだんと空間を飛び交う鞭の数は減っていき、腕でカードしていたブレイドも手の平で弾く程度にまで威力が落ちていく。


「なあ、そろそろわかってるだろ?このままじゃ君の負けだ」

「くっ、うるさい!!」

「オレ達も君に話さなきゃいけないことがあるんだ。だからさ」

「いまさら・・・何を話すっていうの!!!」

ギュチッ!!

「じいちゃんが死んでもう何年になる?その間。あんたたちはのうのうと世界を守ってた!一緒に戦っていたじいちゃんのことを、まるでなかったかのように!!一緒に戦ったじいちゃんのこと、何も言いに来なかったじゃない!!それは後ろめたいことがあるから!違う!?」



そこまで叫び、クイーンが鞭を引いた。

あれほどの空間を覆うだけの長さの鞭が、ミチミチと音を立てて収束されて彼女の手元に。
その構えは、まるで剣術の突き――――


「聞いてくれ!天王路さん」

「ん?」

「オレ達が君のおじいさんについて話さなきゃいけないことがある!!」


「橘さん!」

「剣崎、ここは俺に任せろ」

「・・・わかりました」


叫びながら、ブレイドとクイーンの間に入っていくギャレン。
敵意はないと示すためか、変身を解除しながらまっすぐに彼女と向かい合う。



レンゲルは暴れるアンデッドを再びカードに戻しながら思った。
――――あの人なら論理的にうまく説明するんだろう。感情的にキレられそうだけど


カリスは変身を解きながら思った。
――――言ってわからないようならその時は気絶でもさせるか・・・・


ブレイドは説明を任せて橘の背を見ていた。
――――説明できれば大丈夫だけど・・・・・嫌な予感がする



そんな各々の思いがそれぞれの中で一瞬で頭の中に浮かんだ後、橘朔也が説明のために第一声を放った。



「天王路さん!オレ達は確かに君のおじいさんを倒した!!」

「・・・は!?」


カリスは思った。
確かに、オレ達が倒した敵だ。

ブレイドも思った。
まあ、間違っちゃないな。

だがレンゲルだけは気づいた。
あれ、あの人たしか天王路の事・・・・


「一緒に戦った仲間を、倒したですって!?」

「あ」

「やば」

「マズいぞ」

「shit!」


「あんたたちは、一緒に戦った仲間のじいちゃんを、見殺しにしたどころか・・・・・」

「あのだな、これは」

「殺したっていうの!?」



激昂するクイーン。


完全に説明の手順を間違えた。
とはいえ、彼らにとって天王路はあらゆる戦いの苦しみ、悲しみの元凶だ。

「アイツは悪い奴だから倒したんだ」

という感情が頭にあっても責められまい。
とはいえ、もう少し言い方は考えてほしかったが。



纏まっていた鞭が、より一層軋みを上げて収束する。

そして


「信じらんない・・・あんたたち、あんたたちは―――――ァ!!!」

ドゥオッッ!!!


集まり固められた鞭が、弾かれたように解放される。
同時に、クイーンの鞭を握る腕がまっすぐに突き出される。



瞬間、ブレイドは橘を抱えて横に飛んだ。


直後、彼らのいた場所を、鞭がまっすぐに伸びて貫通していた。
ブレイドが背にしていたビルを貫き、さらに反対側にあるビルまでだ。

長く、そして貫通力に長ける一撃。
ビュッ!と彼女が手元に鞭の先端を戻した時には、ビルにきれいな円形の穴が開いていた。


崩壊も爆発もないが、あれに貫かれたらただではすまい。



「あんたたち、絶対に・・・・絶対に許さない・・・!!!」


クイーンは歩を進める。
その先端をバチィ!!と地面にぶつけ鳴らしながら、ブレイドたちに怒りを向ける。



橘を放し、即座に立ち上がるブレイド。

(まずい・・・あの威力だと、さすがに武器なしじゃ耐えられない!!!)

ブレイラウザーは遠い。
誰かが取りに行くにしても、二、三撃は攻撃を喰らうことを覚悟せねばならない。

しかも、それは彼女が邪魔をしなかった場合。
鞭という武器を最大限に生かされた場合、取りに行くこともままならなくなる――――!!!


と、その瞬間


『「EARTH」だ!全員その場を動くな!!今すぐ武器を捨て、変身を解除せよ!!命令に従わぬ場合、即刻敵対因子としての対応に切り替えさせてもらう!!』


バラバラと轟音を立てながら、三機のヘリが周囲を包囲した。
現場を風が掻き乱し、モウモウと上がる土煙を一気にどこかへ吹き飛ばす。

うち一機から、三人の人影が飛び降りてブレイドと橘、そしてレンゲル、カリスのそばに着地した。
おそらく、変身解除させた場合に彼らを守るためだろう。


それを見て、三人は変身を解除する。

だが、鞭を握る手をワナワナと振るわせるクイーンはそうではなく・・・・


『そこの!!変身を解除しろ!!もし解除できないのであれば、武器を捨てその場に伏せろ!!繰り返す!!今すぐ・・・うぉっ!!!』

ヘリのスピーカーから聞こえてくる声が揺れる。
クイーンは一瞬で鞭を伸ばし、ヘリの足に絡ませてぶら下がったのだ。


「ち、あいつ・・・!!」

「撃ちます」

「待て!あっちのヘリが落とされる!!」


残り二機に乗る隊員がそんなことを話していると、クイーンはグンッ!!と腕を引いて一気に宙に飛び、そのまま鞭をヘリから離して落ちていった。
放物線を描いて落ちていくその後を、引かれた体勢から何とか持ち直してヘリが追う。


だが時すでに遅く、ザパンという音が一つした。
彼らが見た時にはもう彼女の姿はなく、川に波紋が広がっているだけだった。



仮面ライダークイーン。
復讐者は、どこかでライダーを狙う。

祖父を正義と、彼らを仇と信じて。




to be continued
 
 

 
後書き

仮面ライダークイーン!!
名前はあるけどまだ未公開。

イメージとしては、戸田恵梨香。
性格的には涼宮ハルヒ。


蒔風
「まんまSPECの当麻紗綾やないかい!!」

ええ、まあね。
もう暴走というか爆走っぷりがいいでしょ?

アリス
「勘違いから始まるバトル!ヒーローの定番ですね」


でもまあ身内問題ですからね。

蒔風
「天王路のジジイの完璧なキャラづくりもあって、なかなか誤解は解けそうにないな」

アリス
「それにしても橘さんは・・・・」

蒔風
「始にやってもらった方がよかったんじゃ?」

あいつはあいつで同じようにド直球から攻めそう。

蒔風
「・・・・確かに」


と、ここで判明しているクイーンの現状SPEC!!

変身に使用するカードは4カテゴリの「Q」を融合させた「クイーン」

BOARD理事長であった天王路博史の孫娘。21歳。

「世界を平和にする」という話を祖父から聞いていた彼女は、彼の最後の言葉を元に、四人のライダーに行き当たった。
実際には天王路の「世界平和」とは、人類を滅ぼして新たに作り出した都合のよい人類による支配だったのだが、それを彼女は知らない。

彼女は四人のうちの誰か、若しくは全員が祖父の仇と信じている。


必殺技は、クイーンのカードを読み込ませてから放つクイーンロールダンス。

ウィップラウザーを巻き付けた敵を、浮かせてから思い切り引いて宙で回転させる。
そしてその敵に向かって真上から叩き付ける蹴りで大地に叩き伏せる。ただしこの蹴りの際に四肢はすべて地面につくため、大きな隙ができてしまう。

つまり、あの鞭の貫通突きは別段必殺技ではないのだ。



クイーン・・・チェンジ
武装・醒鞭ウィップラウザー

所有カード(四人から奪ったもの)
ブレイド
 タイムスカラベ
 トリロバイトメタル
カリス
 バイオプラント
 リフレクトモス
 フロートドラゴンフライ
ギャレン
 ロックトータス
レンゲル
 ラッシュライノセラス
 リモートテイピア

カテゴリーQ(アブソーブ)
 カプリコーン
 オーキッド
 サーペント
 タイガー


アリス
「え、必殺技違うの?」

ええ、だって読み込ませてないでしょ、カード。
あれは彼女の気合いによるもの。

蒔風
「マジかよ」




アリス
「次回。どこ行ったクイーン」

ではまた次回
 
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