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儚き想い、されど永遠の想い

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148部分:第十二話 公の場でその六


第十二話 公の場でその六

「恋というものは続くのだと思います」
「結婚して夫婦になってもですか」
 喜久子は真理の話を聞いたうえで彼女に問うた。
「それでも恋は続くのですか」
「私はそう思います。何故ならです」
「何故なら?」
「結婚しても男女ですね」
 そのだ。男女ならばだというのだ。
「男女ならです。恋はあるものですから」
「例え夫婦だとしても」
「夫婦は男女です」
 夫婦というものをその関係において話す真理だった。そして彼女のその言葉を喜久子は聞くのだった。当然麻実子もである。
「ですから恋愛はです」
「結婚してからも続きますね」
「絆ができてそれはさらに」
「さらに?」
「深くなるものだと思います」
 それがだ。夫婦の恋愛だというのだ。
「生涯を共に過ごすだけのです」
「そうなのですか」
 ここまで聞いてだ。喜久子はだ。
 深い思慮を宿らせた顔になってだ。真理に答えたのだった。
「では私はこれからあの方と」
「私もですね」
 見合いをした喜久子だけでなくだ。海軍中尉と結ばれる麻実子も言った。
「生涯に笑って恋愛をしていきますか」
「そうなっていくのですか」
「そうなると思います。そして」
 話をしているうちに心が上気してだ。ついだった。
 真理はだ。こんなことを言ってしまった。
「私も」
「私も?」
「私もですか」
「はい、私もです」
 真理はそのまま言っていく。やはり気付いていない。
「結ばれそうなります」
「幸せになられますか」
「真理さんの配慮となられる方と」
「そうなります」
 義正のことをだ。頭の中に思い浮かべながらの言葉だ。
「私もまた」
「そうなるといいすね」
「真理さんもまた」
 人生経験がまだ少ないせいだろうか。喜久子と麻実子は真理にとって幸いなことに彼女の言葉にあるものに気付きはしなかった。
 そうして純粋にだ。彼女の言葉を受けて話すのだった。
「相応しい方と共に」
「幸せを育んでいかれると」
「そうなりたいです」
 笑顔で話すのであった。真理はさらに。
「もうすぐ」
「私達もその年齢ですし」
「それならばですね」
 気付かないまま応える二人だった。
「三人で幸せになりましょう」
「そうなりましょう」
「はい。そうなりたいです」
 友人達の言葉を受けて真理は微笑んだ。その微笑みの中でだ。
 ふとだった。咳き込んだ。それは何度か続いた。喜久子と麻実子はその彼女の咳を見てだ。少しいぶかしんだ顔になって尋ねた。
「風邪ですか?」
「どうされたのですか?」
「少し。胸がむせたような」
 真理はだ。こう二人に答えた。
「それでつい」
「そうですか。風邪ではないのですね」
「むせられただけですね」
「はい、それだけです」
 こう答えるのであった。このことに嘘はない。
 
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