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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  ディライン その在り方


これまでの、仮面ライダーディケイドは――――――


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仮面ライダーディライドが暴走した。

謎の怪電波を受けることにより発動するそれが、士たちの警戒も虚しく起動してしまったのだ。



今や敵となったであろうディライド。


幾度の出会いを経て、その行き先はどこへと至るのか――――――



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「おい蒔風!!」

バタン!!と扉が勢いよく開かれて、「EARTH」局長室に門矢士が踏み入った。
叫ぶ相手は彼が言った通り、ここの局長・蒔風舜だ。


「どした?士。フロニャルドでなんかあったか」

「どしたじゃない!!ありまくりだっての!!」


フロニャルドでの魔獣の戦闘。
そして、その後でのディライドの暴走。

状況をすべて話し終え、士が訪ねる。


「ディライドを追えないのか!?」

「追えるよ」

「早く追跡方法を・・・・は?」

「ディライドの痕跡は追える。そろそろ座標も特定できるはずだ」


蒔風はそれだけ言うと、席を立って腕を広げた。
すると、部屋全体がうっすらと暗くなり、空中にはホログラムで様々な情報が表示されていく。



「今まで仮面ライダーが次々に現れそのすべてが敵として差し向けられているんだ。こっちだって指くわえてただ待ち受けてるわけじゃないんだっての」

そういう蒔風が、様々な電波波長や地図上のアイコンを操作して、次第に一点へと絞り込みをかけていく。


「朱里、雛里、どうだ?」

『現在ディライドのブレスレットに直結しているエネルギー庫「クラインの壺」からの僅かな波長をとらえています』

『ディケイド系ライダー特有のグレーカーテンの転移先の逆算の結果が出ます』

「長門」

『二つの計算式は同一の方向性を示している。そのほかの情報を合わせ、対象の現在位置を半径2メートル以内まで絞ることが可能』



その結果を聞いて、よし、と頷く蒔風。
姿は見えないが、今頃「EARTH」のオペレータルームでは歴史上最高ともいえる軍師の名を持つ朱里と雛里、そして長門有希が端末を走らせているのだろう。

その様子を見て、唖然とする士。


「一体何が・・・・」

「ディライドが現れた時点で、こうなることは予測していた」

そう、あれだけデミライダーが出現して、しかもWまでもが敗北し、さすがに「EARTH」も事態を放っておくわけがない。
次にライダーが現れた時には、しっかりとその後をつけ、一連のライダー出現事件の黒幕的な存在を暴き出す。

そのために、ディライドは泳がせていた。
直接接触する士には真意を隠し、実際に彼女の監視役は海東大樹がしていたというのだ。


「マジかよ・・・」

「っと、そんなこと言ってる間にディライドの場所わかったぞ」

「どこだ!?」

「あー、ここは・・・・」


士にも見覚えがある。
示されたポイント、そこの光景。

ここは、大ショッカーを超えたスーパーショッカー。
その大戦艦クライシス要塞と、仮面ライダーたちが決戦を繰り広げた場所だ。



「行けるか?」

「俺の方で行く。手は出すな」

否にあっさり事態が展開されているが、場所が分かったなら行くほかあるまい。
バン、と扉をまた強く開き、士が部屋から退室する。


その背を見て、蒔風が通信を切ってひとりごちた。


「手を出すなって?最初から邪魔するつもりはないさ」


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かつて、スーパーショッカーと決戦を行った荒野。
そこに灰色のカーテンが現れ、ディケイド一行を連れてくる。


その数十メートル先には、待っていたかのように二人の人物が立っていた。


一人は、仮面ライダーディライド。
もう一人は、白衣の老人男性だ。老博士、と言ったほうがいいだろう。


「おい!!お前誰だ?」

「鏡花ちゃんを返せ!!」

士に続いて、ユウスケが叫ぶ。
だがディライドは黙して語らず、老博士は彼らの叫びを無視するかのような口調で淡々と言葉を紡いだ。



「おお、お待ちしておりました大首領!!あなたの言う通りになりましたな!!!」

「なんだと?」

士のことを大首領と呼ぶ老人。
一体何を言っているのか。この状況が、門矢士の言う通りだと?


「覚えてらっしゃらないのも無理はない。あなた様はあの後の記憶がいくらかまだ欠落しておられるし」

「・・・おまえ誰だ?」

「かつてのあなたの部下でございます。ディライド、行きなさい」

ヴン、と
ディライドのマスクが軽く発光し起動する。


コツ、コツと歩を進め、そして次第にその動きは大きく。
十歩目を踏み込むときには、すでに猛然と向かって来る速度に達していた。


「ユウスケ!任せていいか?」

「ああ、お前はあの爺さんが誰なのか思い出しとけ!!」

「行きましょう!!海東さんも」

「えーボクも?」

「笑いの―――」

「わかったって!!!ハァ・・・」


「「「変身!!」」」


向かってくるディライドに対し、クウガ、キバーラ、ディエンドの三人が立ち向かう。
対して、士は歩を進めて老人へと近づいていった。


「俺が、お前に、何を言った」

一言一言を、踏みしめるように、噛みしめる様に、刻みつけるかのように、門矢士は老人に聞く。
一体俺は、過去にまた何を言ったんだ?


「あなたは言いました。正義はどこから生まれても正義なのかと」

「・・・は?」

「あなたは言いました。何故、仮面ライダーは悪から生まれるのかと」

「・・・・」

「それは私自身が抱いていた、靄のかかっていた疑問をはっきりと言葉にしてくれたものでありました」


悪から生まれた。
それでも尚、正義であった。

その出自が悪たる闇の中からであろうとも、わが身の一片までをも正義の礎足らんことを。

そうして戦った男がいた。
そうして剣を振るった戦士がいた。
そうして命を落とした勇士がいた。

そうして伝説となった英雄がいた。



ならば、悪とは?
悪になるとは何なのか。

悪から生まれた悪は滅びた。
幾度となく生れ出ようとも、幾度となく滅ぼされる。

悪からの出自という、歪な経歴の正義が、なぜここまで生き延び
悪であれと闇の深淵から生み出された正当なる悪は、ひと時の煌きで消え去るのか



「あなたは言いました」

ならば、悪のなんと儚いこと。
今や悪の組織として、疑う余地のないこの大ショッカー。

その大首領たる自分は、このままならばおそらく滅びる。
いずれ脱した正義の輩の、容赦のない一撃で大地に踏みつぶされるのだ。


「あなたは言いました」

ならば抜けよう。
そうだ、自らがそれになればいい。

悪を抜け、正義を行う仮面ライダー。
その存在に、自分がなるのだ。

これまでのことを考えるに、その方式で生き残れる。



ならば生半可はだめだ。
本気で会心せねばなるまい。

記憶を消した。
素性を消した。

そして、彼は出自不明の謎を秘めた「主人公」となったのだ。
世界のどこかで、自分の物語が始まるのを、待った。



「あなたが言ったのです」

残された男は考えた。

大首領は行ってしまった。
自分だけにすべてをお話になった。

なるほど、それは確かに納得だ。
その論理は理に適ってる。


だったなら。

自分たちの存在は何だ。
いずれ滅びるために、今我々はここにいるのか?


「あなたが言った言葉です」

悪から生まれた。
正義になった。
戦い、勝利し、その名は永劫に刻まれる。




「ならば!!」

正義から生まれた。
悪になった。

「ならば、その名は永劫に紡がれ(ラインす)る!!」


だから彼女が選ばれた。
悪の心なき、純粋な少女よ。

貴様のような存在だからこそ。
我々とっておぞましき正義の心を持つ少女よ。

そこから生まれ出でたる悪は、滅びること無き存在となろう。



「だから、私は、作り上げたのだ」

「貴様・・・・」

「大首領。あなたの言葉には大いにヒントをいただきましたよ」

「貴様!!!」


ディラインと三人のライダーの激闘の轟音を背景に、士が詰め寄って老人の襟を締め上げた。

だが、触れてわかった。
この男は、すでに――――――


「ガガッ・・・如何なるショッカーもホロビタ!!私ダケガ残ッタ!!ワタシハ存続人。アットウテキナデータベースにササエラレシ、しょっかーノズノウ!!」

「ロボット・・・人格を植え込まれたアンドロイド・・・!!!」

「イイやダイシュリョウ!!ワタシハニンゲンサ。歴史テキニ見テモ、コンナコトをスルノハ「ニンゲン」ダケサ!!!」

「ふざけるな!!!」

ガシャッ!!!

士が老博士―――ロボットを投げ捨てる。

そこに刻まれた人格が何かは知らない。
誰かなんてどうでもいい。

だが、そこにあるのは確かに存在した人間の「悪」だ。


「悪アッテコソノ、ヘイワヨ、セイギヨ、ソノヌクモリヨ。ワスレルナヨ。キサマラが私ヲ機械とイウナラバ・・・キサマラのショギョウハこの程度ではない」

「黙れ!」

ガツッ!!

士がライドブッカーを機械の頭部に突き立て沈黙させる。
そしてカードを取出し、ディライドへと向き直り、ディケイドライバーを起動させた。


「変身!!!」

無数のシルエットに包まれながら、ディケイドに変身した士が剣を振るって駆けだした。
対してディライドも、周囲にまとわりつく三人を圧倒的な力で蹴散らし、ディケイドへと向かっていった。


その姿を見ながら、機械音声が紡がれる。

「ハ・・メツ・・・が・・・チィ・・・カぁ・・・イぃぃぃ・・・・」


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《ATTCK RIDE―――CLOCK UP》

ディケイドが開口一番、クロックアップのカードを使用し高速移動に姿を消した。


周囲を駆けまわり翻弄し、背後から飛び掛かりながらライドブッカーを振り上げる。

ディライドの行動はノロい。
だがディケイドが飛び掛かり、地から足が離れ神津堂の変更ができなくなった瞬間に、ディライドの腕がディケイドの咆哮へと向けられた。


「あ!?」

ガッ!!と、首根っこを掴まれるディケイド。
その瞬間クロックアップが解除されるが、そうされながらも剣を振り下ろすディケイド。

しかし


《Charge―――ATTCK RIDE―――Blast PEGASUS・Basher Aqua Tornado》

ドンッ!!!

「ゴハッ!?」

クウガのブラストペガサス、キバのバッシャーアクアトルネードの重ね掛けされた一発の銃弾が、ディケイドの腹部装甲に至近距離から直撃しその体を吹き飛ばした。


ガシュウ!!ピピピ

《Stock―――ATTCK RIDE―――Rider Rocket Punch・Rider Punch・Rider Sting・Gran Impact》

《Charge―――ATTCK RIDE―――shoot vent・SHIPPU ISSEN・Rider Shooting・WILD SHOT》

《Stock―――ATTCK RIDE―――Rider Jump・DEN-RIDER KICK・Strike Wizard・dragon rider Kick》

《Stock―――ATTCK RIDE―――RX KICK・Dimension KICK・ZX SENCOH KICK・V3 HIBASHIRA KICK》


あの機械博士に改良されたのか、もはや手での操作もなしに次々と技がストック、又はチャージされていく。
ちなみに音声の発動先は、上から順に右手、左手、右足、左足だ。


吹き飛ばされて立ち上がろうとするディケイド。
そこに向かって、チャージされた銃撃系アタックライドが放たれる。


ディケイドは再び凶弾に襲われ、その姿が爆発とともに消える。


と、攻撃直後のディラインに突っ込む、クウガタイタンフォーム。
堅牢な鎧を利用した特攻、攻撃直後の硬直を狙ったカラミティタイタンの発動。

が、それはディラインのノーモーションのライダージャンプ―――垂直飛びで回避され、上空を見ると同時にライダーロケットパンチで落下してきたディラインの一撃、さらにはパンチホッパーの物であろうライダーパンチに、ザビーのライダースティングを立て続けに喰らい、大地に伏せる。


そのクウガを助け出そうと、海東の召喚したライダー(ファムとラルク、朱鬼)と共に、キバーラが全員で斬りかかっていった。

だが、残ったグランインパクトの一撃。
その踏みつけるかのようなパンチで、ファムが沈んで反動でディラインが跳ねる。

跳ねながら腰を捻って方向をかえ、次に来たラルクをRXキックで粉砕、着地と同時に回し蹴りタイプのデンライダーキックで朱鬼の仮面を破壊する。

そして着地からそのまま、背後に回り込んでいたキバーラの方向へとストライクウィザードを発動させ撃破。


《FINAL ATTCK RIDE―――DE DE DE DEEND!》


そこに放たれるディエンドのディメンションシュート。
だがそれに対して龍騎のドラゴンライダーキックで相殺し、変えた左足のディメンションキックでディエンドを吹き飛ばした。


「まだだ――――!!!」

が、そこでディケイドが土煙と爆炎を晴らしながらコンプリートフォームへと強化変身する。


ディラインがその方向へとゆっくりと振り返ると、ディケイドがハイパーカブトを召喚する音声がした。
ファイナルアタックライドを発動し、ハイパーキック×2を放つディケイド。

上空にジャンプし、まっすぐに向かってくるディケイドとハイパーカブト。


それに対し、ディラインもワンテンポ遅れながらもググッ、と体に力を籠め

ブゥンッ!!と、腕を振るった。


ZX穿孔キックの前段階。
本来敵を投げるライダーきりもみシュートを、何もない状態で振るうことにより発生する竜巻。

それにより敵の退路、回避先を断ち、竜巻による翻弄で敵の動きを封じた。

そして

ガゴォっ!!



竜巻にもまれるハイパーカブトが、回転を加えられたZX穿孔キックに敗れる。
そしてディラインはその消えかかるハイパーカブトの頭部を掴み、そこを軸にしてグワンと反転。

残るディケイドの背部に向かって、最後の一撃を叩き込む。



「ヤバ・・・」

ドォンッッ!!!


仮面ライダーV3の、V3火柱キック。
あまりの高熱に左脚は真っ赤に発光し、その火力、爆発力共に他のライダーの追随を許さない。



だが、ディケイドもさるもの。
爆炎の中から姿が見えたのは、召喚された電王超クライマックスフォーム。

心苦しいが身代わりに使い、自身はインビジブルで離脱。





直後、ディラインは自らの背後に気配を感じた。
振り返ると、等身大のホログラムカードが迫りこちらに向かってマゼンタの弾丸が飛来する。


それを腕で弾き払うが、なおもホログラムカードは消えない。
自身を囲うように展開されるホログラムカードは、おそらく一発や二発分のものではあるまい。



だが、その中にいてディラインの性能はすでにディケイドを凌駕していたと言わざるを得ない。


ディラインは様々な必殺技を発動させ、ストックをし続けながら、その砲弾を次々と叩き落としていったのだ。
そして、最後に姿を現した、ディケイドのディメンションキックに対しても


ガッ!!

「な!?」

カードから飛び出して来たディケイドの足を掴み取り、キックの勢いをそのまま殺さないように地面に投げるように叩き付けた。
そして、その威力が完全に死ぬまで地面に何度も繰り返し叩き潰していったのだ。



「がァァアアアア!!!」

そして最後にポイ、と捨てられるように放られたディケイド。
バチバチと火花を爆ぜながら、しかしそれでも変身が解けないのはさすがといったところか。


だが、限界だ。
コンプリートフォームは解けているし、今この状況で強力なカードを使えば彼の身体が持たないだろう。

あのロボットとの会話の間に、他の三人はすでに疲弊しきっている。



これ以上の戦闘は可能か、否か。
このままではWの二の舞だ。


しかし


「やっぱりか・・・・大体わかった」

ディケイド・門矢士の判断。

それは


「だったら、こうだ」

ガシュウ
《KAMEN RIDE―――BLADE!》

何の変哲もない、ただのカメンライドであった。



その行動に、動きが止まるディライン。


理解不能だ。
なぜこの状況でカメンライドなのだ?



他のライダーの能力、武器を使用できる。
あらゆるライダーの力を我が物に。

そのコンセプトのもと、ディケイドライバーは開発された。
その過程において、他のライダーへの変身機能も搭載された。




他のライダーを我が僕に。
あらゆるライダーを己の駒に。

そのコンセプトのもと、ディエンドライバーは開発された。
自らの性能もそこそこに、他のライダーを使役しその力を行使するのだ。



そして、それらを超えてなお強力に。
すべてのライダーの力、技、能力をその手に。

ディケイドよりも早く、強く
ディエンドよりも多く、隙無く

その力の行使の上で、姿までをも模する必要はなくなった。


故に、ディラインには他のライダーの力や武器だけで、姿を変える機能は搭載されていない。

要は、必要のない機能とされたのだ。
事実ディケイドも、様々なライダーの力をそのままで使えるようになってからはほぼディケイドの姿だ。


だというのに、今更になってカメンライド?
解せない。何かある。

ディラインは動きを止める。
対して、ブレイドにカメンライドしたディケイドはゆっくりとライドブッカーからカードを取り出す。


「―――――」

ヴォン



ディラインが動いた。
構うものか。たとえどの状態、状況で何を繰り出されたところで、こちらの性能の方が上だ。

何が出て来ようとも、それを正面から叩き伏せるだけの力が、こちらにはある。


《Stock―――ATTCK RIDE―――Lightning Slash・Four Card・Loyal Straight Flash》

ディラインがストックする。
技のラインナップはそろいもそろってブレイドの物。

正面から叩き潰すうえで、これ以上のものはあるまい。


ダウッ!!と、ディラインが飛び出す。
右手に出現したブレイラウザーに電火が迸り、ディラインが低空飛行して接近した。


(あのライトニングスラッシュは・・・なるほど、ジャックフォームでのものか。だが)


対して、ディケイドはそんなことを考えながら手にした一枚のカードを見た。
そして、すれ違う直前に装填、それを発動させる。


《ATTCK RIDE―――Slash!!》

「!?」

「ゼァア!!!」


ディケイドが倒れる。
たが、攻撃を受けたからではなく、自ら仰向けにだ。

ディケイドの首を狙ったディラインの刃が空を切り、回避したディケイドブレイドの刃がディラインの装甲を弾いた。


「ガッ!?ウぅ!」

体勢を崩しズシャぁ、と着地するディライン。
対し、倒れ込みながらディラインを斬ったディケイドは即座に転がって体制を整えていた。


見ると、ディケイドの手にあるのもまた、ブレイライザー。
先ほどのアタックライドはブレイドのスラッシュか。



だが、解せない。

あれは必殺技ですらないアタックライドだ。
唯、剣での攻撃を強化するだけのもの。それも、ノーマルフォームでの斬撃だ。

対して自分が放ったのはジャックフォームのライトニングスラッシュ。
ノーマルフォームの物よりもはるかに威力が上がったものを、正面からではないとはいえ、斬り落とせるものか?


「ふん」

「――――!!」

それに対し、ディケイドが鼻を鳴らす。
唯の一息ついた呼吸だったのかもしれないが、ディラインにはそれだけでも腹立たしい。


「オオォォオオ!!」

突進する。
その手のブレイライザーは、黄金に輝くキングラウザーに。

ストックされた次なる技はフォーカード、そしてロイヤルストレートフラッシュ。
文句なしの必殺技だ。


だが

《ATTCK RIDE―――Metal!》

フォーカードの突進を、上腕で横からずらし、受けきれない威力を自ら転がって回避するディケイド。
むろん、ダメージは相当あるだろうが


「どうした!お前はその程度か!!!」

ディケイドの姿には、ダメージなど一切見られない。
どういうことだ。装甲は火花が時折爆ぜ、呼吸も肩を上下させているにもかかわらず、ディケイドの姿には「満身創痍」とは言えない何かがある。


「ヌゥウウ!!」

フォーカードを外したディラインが、そのまま反転して踏み出した。

五枚のカードを超え、放たれるロイヤルストレートフラッシュ。
ディケイドは動かない。この余波だけでも十分な威力のはずだが、ディケイドはその場から動かず――――


《ATTCK RIDE―――Lion Beat!》

「ラァッ!!」

ゴシャッ!!と、ディケイドの拳がディラインの顔面に突き刺さった。
五枚目のカードを通過してきた瞬間のディラインに、ディケイドがメタルで強化した拳を、パンチ増強のライオンビートでカウンターしたのだ。

突進力のすさまじさをそのままに、体勢を崩したディラインは地面に突っ込み大地を削った。



「やっぱりな」

「ゴぉぉぉおお!!ぁああああああ!!」

《ATTCK RIDE―――Lightning Sonic》

ついにキレたか。
ガランとキングラウザーを投げ捨てて、その右足にエネルギーをチャージする。

ブレイド必殺のライダーキック。
それに対し


《ATTCK RIDE―――Thunder!》
《ATTCK RIDE―――Mach!》
《ATTCK RIDE―――Kick!》


ディケイドはブレイドのまま、三枚を発動させた。
一枚一枚、まるで噛みしめるかのように、しっかりと。

ディラインにはそれが何だかわかっていない。
なんだ?何が違うというのだ?

それを発動させるなら、たった一枚のカードでいいはずだ。
なぜそこまで手間をかける必要があるのか。



ディラインの疑問。
だが構うものか。


ディケイド、ディライン両者が駆けだした。
加速、そして同じように右足に稲妻の力を宿し、力の限り突き出した。


「ヌゥァ!!」

「ハァアッ!!!」

ガァンッッ!!バチッ――――――ドォンッッ!!


「げっ―――ボァッッ!?」

両者の足が空中で激突し、一瞬電撃が爆ぜた後に爆発した。

そして



その結果






ディラインが大地にその身体を叩き付けられていた。



「ギ・・・・ギキ・・・・」

「何で負けたかって顔してんな?」

「ガ・・・・」



「当たり前だ。お前は力だけだからだ」



ディラインのアタックライドは強力だ。
発動過程の短縮に加え、武器だけでなく技の忠実な再現。

ディケイドが同じことをしようとすると、その技の種類などがかなり制限される。



だが、ディケイドは出会ってきた。

様々な世界のライダーに。
自らの世界に内包される様々なライダーの世界。
ここにきて出会った各ライダーの「本人」。

そして、彼らの戦いの軌跡、想い、信念、覚悟、誇り。


それら無くして、彼らの技も力もありはしないのだ。



血反吐を吐き出して放った拳があった。
涙を流しながら打ち砕いた敵がいた。
苦しみの中で振るった剣があった。

ただ敵を倒すだけでない。

人類の―――人間の自由と平和のために戦った彼らには、戦いの功績があった。

そして、それ以上に苦しみと別れ、そして絶望があった。


もはや人に戻れぬ苦痛。
人並みの幸せは望めぬ身体。
家族を目の前で奪われる怒り。
絶対だったはずの存在に裏切られる。
自分が自分で無くなる恐怖。
人ならぬ異形への変貌。
どうしても救えぬ運命。
先に歩を進めるほど増える人、仲間の死。
決して以前の日常には戻れぬ絶望。
いつまでも果てない、終わりなき戦いの連鎖。
何かを救うために何かを切り捨てなければならない苦悩。
大切なものが消えていくのを、ただ見ていることしかできない哀しみ。
ただ一人理解されぬまま戦いを続ける苦しみ。
失うとわかっていながらも、戦いを続けるしかない恐怖。
自らを投げ捨ててでも続けなければならない争い。
すべての友を救うつもりで、友を倒さなければならない悔しさ。
守り続けていた者を失う虚無感。



栄光よりも、なお濃い挫折。
希望よりも、なお深い絶望。
勇気よりも、なお暗い恐怖。


彼らはそれらを知り、そしてそれらを踏破した者。

だからこそ彼らは破れなかった。
だからこそ、彼らは強く、敗れることなく存在し続けたのだ。


「裏切ったから強いんじゃない。脱したから残ったんじゃない!!強かったから、何者にも屈しない思いがあったから、仮面ライダーは勝ち続けるんだ!!」


「それを理解しないお前に、俺の行動は確かにわからないだろう。あいつらを知っているからこそ、俺はあのカードの力を引き出せたんだ」


「ギッィ・・・ギギギ・・・ライダーの・・・・チカラ・・・ソレガスベテ!ソレガツヨサ!!ワカラヌワカラヌ。ワレニハワカラヌ。ナゼダナゼダ。ワレニハトケヌ。キサマハナゼツヨクナッタでぃけいど!!」


「俺は、すべてのライダーを破壊し繋いだ。仮面ライダーディケイドだ」

「ガガガ・・・・」

「全部のライダーの力があるかわからんが、それも知らずにかかってくる何ざ・・・・仮面ライダーだと?10年早ぇよ」


ただ一撃。
まともに喰らったのは、最後にキックのみ。

だというのに、ディラインのダメージは増えていく。
徐々に、徐々に増えていく。

まるで内部に記録されたライダーの記録が、呼び覚まされていくかの如くそのシステムを浸食し




パキン



そしてついに、マスクが割れた。
さらにディラインの装甲がザラリと鉄屑のようにバラケていき、後に残ったのは眠ったように倒れる鏡花のみだった。



その鏡花を抱え上げるディケイド。
いわゆるお姫様抱っこだ。

大丈夫かと駆け寄る、変身の解けた仲間たち。
ギャーギャーと騒ぐ彼らに、うっとおしそうに叫ぶディケイド。

「うーっせ!!お前らのほうが大丈夫かよ」

「なにお?いいか士。俺はこれから究極の姿に変身してあんな奴バッタバッタとだな」

「あーわかったわかった」

「ていうか士君。何で最初からああしなかったんですか?」

「うん?あー、なんだ・・・・気分?」

「ナツメロン君」

「ミカンです。ていうか夏ミカンでもない!!」

「アはッ!?あれ、なんで僕に!?そこは士にあはははははは!!!」

「助かったか・・・」

「士君はあとでやりますよー」

「なん・・・だと・・・?」



ギャーギャーと騒ぎながら、荒野を後にする四人と、抱えられる一人。

と、あまりに煩いからかその一人が目を覚ます。


「う・・・うぅん・・・・」

「お、起きた」

「えと・・・・」


まるで本当に寝起きのように、目が全く開かないまま意識だけが起きる鏡花。
ぐりぐりと目をこするが、まだ瞳がうす開きだ。

目の前に誰かがいるのはわかるが、一体誰だかわからない。


「うーん・・・むにゃ・・・誰ですぅ?」

まったく、この娘は。
あれだけのことがあって、本人は完全に寝てたと来た。

いつもなら落としてやるところだが、まあいい今回は特別だ。

バシュウ、とディケイドの変身が解ける。
その光で目がはっきりと開く。


それと同時に、門矢士はこう答えるのだ。


「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えとけ」



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さぁて、回収回収。
Wの後だからドキドキだったけど、ディケイドが勝ってくれてほんとによかったよか・・・ん?


ズゾゾゾゾゾゾゾ――――――


「が・・・ギ・・・・我ハ、ディライドッォ・・・・」


マジかよ。
自己修復機能?

てかこれ変身者いらないのか?


「ゴォォォオオオオオオオオオオオオ!!」

------------------------------------------------------------



「ゴォォォオオオオオオオオオオオオ!!」

「「「「!?」」」」


遥か後方。

これからバイクに乗りここから去ろうとする士たちの耳に、咆哮が聞こえてきた。
丘の上から見ると、ディラインが崩れた場所がはっきりと見えた。


土塊のように崩れたはずのディラインが、変身者もなしに身体を再構築し、再び身体を手に入れていた。

その近くには、フードをかぶった人影が一人。
そいつも驚いているような様子を見せていることから、そいつにとっても想定外の事らしい。


「チクショ。やっぱアーいうのはちゃんと爆発させないとダメか!!!」

「どうする士!?」

「どうするも何も、もう一回ブッ飛ばしに行くぞ!!夏海、鏡花を頼む!!」


崖から飛び降り、ディケイド、クウガ、ディエンドがディラインへと向かう。


すると、近くにいたフードの男が叫んできた。

「おぉ来たな!!てかお前がちゃんと倒さないからいけないんだぞコラ!!」

「お前!!お前にも話を聞かせてもらうぞ!!」

ディラインよりも、彼らの近くにいたフードの男。
その男に向かって、一足先にクウガが殴りかかった。

「いやいや俺はただの回収班!ってことで後は任せた。三十六計なんとやらだ!!」

「待て!!」


下がろうとする男。
だが、彼がその場からどのように去ろうとしたのかはわからない。


何故なら、暴走状態のようになったディラインが、その拳を大地に叩き付けると、バキバキバキと地面が盛り上がり、荒野の姿を途端に渓谷へと変えてしまったからだ。
その変貌の速度はすさまじく、まさしく天変地異と言わんばかりの物だった。

その変動に巻き込まれ、ディケイド、ディエンドはディラインを見失ってしまった。
クウガもまた、男を取り逃がしてしまったらしい。


あるところは隆起し、あるところは陥没し、あるところは割れている。
もはやめちゃくちゃだ。

二、三か所からは水脈を割ったのか、水が噴き出している。



「チッ・・・!!」

「まずいんじゃない?これ」

「絶対に逃がさないからな・・・・!!!」


拳を握り、すでに一つの狂気と化したディラインへと叫ぶディケイド。

しかし、その行き先は誰にもわからない。



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ってぇ・・・・
マジかよぉ・・・

マキシと言いディラインと言い、今回のグループヤバいんじゃねぇのか?



何とかあの場から脱したフードの男。
そんなことを独り言ちながら、手の平でそれを転がす。



「構わぬ。それぞれの成るように、成せばよい」

「お、ダンナ」

「各人が倒すのであれば、我が手を煩うこともなく」

「んで、そうじゃなくても旦那が倒すって?」

「しかり。その過程でライダーを倒すのであればまたそれも行幸であるがゆえに、な」

「ま、今回は・・・・これだけでも回収しておいたからいいとしますかね」


カラン、コロン、と、新たに表れた、旦那と呼ばれるローブを羽織った男―――初老の男性のようなそいつに、軽口の男が手の平のものを渡す。
受け取ったそれを見ながら、初老の男は聞く。


「こちらのは何事もなく?」

「ああ。こっちのはなんか内輪もめ見たいのであっさり終わってて、危うく取り逃すところでしたわ」

「ご苦労」

「では、俺は引き続き」

「うむ。この計画、完遂させるには貴様の力が不可欠よ。その仕上げも含めてな」

「はいはいっと。じゃ、確かに渡しましたぜ?ブレイドの分」


そう言って、男がどこかに去る。



残る男は手の平のそれをコロコロと回し


「ブレイドに向かいしライダー・・・クイーンのものか」

そうつぶやき、闇の中に消えた。




to be continued
 
 

 
後書き

仮面ライダーディライン

変身者は京鏡花(かなどめ きょうか)
偶然にディライドライバーを拾うことでディラインの変身者となる。

境遇は士がディケイドライバーを拾ったのに近い。


ディケイドは離反、ディエンドが盗まれ、後のない大ショッカーが作り出した最後の一品。
製造者はコゴロウという老人。だがその老人も老衰で死去し、結果として次元の波に流れたドライバーが彼女の手に渡った。

その後は彼の意思を継いだアンドロイドが何事もなく計画を継続させた。

存在を強固にするため彼女とドライバーの融和性が高まるまで待ち、信号を受信することで彼女がディラインという存在へと塗り替えられていってしまう。


後に、ディライドライバーが彼女のもとに渡ったのは完全なランダムではなく「悪性のない人間」の中から選ばれたものだと判明する。

大ショッカーという悪の組織にいながら――――というより、いたからこそ抱いた疑問。
彼女はその被害者に他ならない。




鏡花自身の性格としては、基本的にお気楽気質の高校生。
ディライドライバーを入手し、ちょくちょく授業を抜け出すことも多くなり授業との両立に苦心していた。

友人は多いが親友はいない。

ドライバーの形は左手首に装着するブレスレットタイプ。
カードを読み込み、目の前に現れたホログラムに手足を通すことで発動する。

所有カード(ディライン)は

スラッシュ
ダッシュ
ファイナルアタックライド・ディライン
その他ライダーカード

ライダーカードを使うと、そのライダーの武装を手に入れる。
変身も召喚もできない。その分、掛け合わせが可能になるため、組み合わせ次第では強力。

また、一旦変身者を取り込んだ後だと、単体でも活動可能になるようで・・・?



「私、別にそんなたいそうなこと考えてるんじゃないんですよ~?」

「やっば!?授業遅れちゃうのに何で出てくんのぉ!?」

「あっが・・・・た、助け、て・・・・のみこ、ま・・・れ」


彼女は溺れることもなく、その力をあるがままに使った。
自分にできることならばと、カードを取り出す。

だがその力そのものに意思があったとき、人はそれにあらがえるのか。


「個体名、京鏡花の肉体を完全掌握。これよりライダーの全滅を開始します」





ディライド設定~
初期設定から書き直しているので、どっかおかしいかもしれないけど許してね?




ディライン、単体にて暴走。

蒔風
「マジこいつしぶてぇ!!」

まあ生存、存続目的のライダーだからね。
粘り強さというか、そういうのはすごいよ。

アリス
「しかも地形を変えるほどのパワー・・・・」

ま、ライダーの力を使う機能は死んでるみたいだけどね。

アリス
「お、勝機?」

でもその分のが全部パワーに上乗せ状態だからねー。
常時解放みたいな?

蒔風
「最悪だ・・・」


そしていつの間にか終わってたブレイド編!!
ディケイドに並行してあったみたいだけどね!!


アリス
「次回、目的は何だ?敵の名はクイーン!!」

ではまた次回
 
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