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儚き想い、されど永遠の想い

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138部分:第十一話 断ち切る剣その十二


第十一話 断ち切る剣その十二

「そこからはじまるのだ」
「そこからはじまる」
「はじまるのですか」
「そう、舞台なら結ばれて終わりだ」
 伊上もこれまで多くの舞台を観てきている。そのうえでの言葉だった。
「しかし現実は違う」
「そこからまたはじまるのですね」
「別の話が」
「そういうことだ。現実はそうだ」
 これが伊上の二人への言葉だった。
「現実はそうなのだ」
「そうですか。私達の話がですか」
「遂に」
「そう、はじまる」
 また話す。伊上はだ。
「そしてその話を幸せにはじめてだ」
「幸せに進めていく」
「そうしていけというのですね」
「そうだ。今度はその話をはじめてだ」
 二人が結ばれてからだ。その話をなのだ。
「幸せに進めていってくれ」
「はい、わかりました」
「そうさせて頂きます」
 二人もだ。同時に答えた。
 その答えを述べてからだった。義正も真理もだ。
 確かな、そして晴れきった顔になってだ。話すのだった。
「それでは今から」
「私達は二人で幸せに生きていきます」
「そうしてくれ」 
 伊上もだ。晴れきった、彼がこれまで滅多に見せたことのない笑顔でだった。二人に述べた。
 そしてその笑顔でだ。二人に告げたのだった。
 そうした話をしてだ。二人はだ。
 笑顔で洋館を後にした。そして帰り道でだ。
 二人並び歩きながらだ。こう話すのだった。
「よかったですね」
「はい」
 真理はだ。義正の言葉に頷いた。
「とても」
「実は不安でした」
 二人になったところでだ。義正は話した。
「伊上先生は信じていましたが」
「それでもだったのですね」
「はい、不安でした」
 そうだったとだ。真理に話すのだった。
「果たして。本当に先生が賛成してくれるか」
「信じていてもですか」
「先生ならば必ず」
 伊上自身はだ。信じていたというのだ。
 しかし彼は不安を抱いていた。その不安の原因も話した。
「しかし。それでも。果たしてと思いまして」
「私もです」
 そしてだ。真理もだった。
 俯いた顔になってだ。それで述べるのである。
「先生が私達を認めて下さるかどうか」
「不思議ですね。先生を信じていても」
「それでもですから」
「人は信じられても」
 それでもなのだった。
「恋というものは」
「どうしても不安になってしまうものなのですね」
「そうですね」
 二人で話すのだった。
「恋は。そうさせるもの」
「人を不安にさせるもの」
「そうなるとわかっていても不安にさせるもの」
「不思議ですね」
 二人で話していく。
「そのことは」
「ですがそれでも」
 今はというとだった。
「嬉しいですね」
「そうですね」
 義正も真理も言った。
 
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