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儚き想い、されど永遠の想い

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127部分:第十一話  断ち切る剣その一


第十一話  断ち切る剣その一

                  第十一話  断ち切る剣
 義正のところに一通の手紙が来た。それは。
 伊上からのものだった。それを見てだった。
 手紙をポストから持って来た佐藤がだ。彼に話すのだった。
「来ました」
「伊上先生からだね」
「はい、旦那様にです」
「早速だね」
「先生にとっても思うところがおありなのでしょうか」
「だからだね」
 手紙がだ。すぐに来たというのだ。
「そうだね。あの人にとっても」
「前から八条家と白杜家の対立について憂いておられましたが」
「それを知っていたから」
 義正は言う。
「あの方に手紙を送ったんだからね」
「そうですね。そのことは」
「うん。それじゃあだけれど」
「はい。お手紙をですね」
「読ませてもらえるかな」
「はい」
 佐藤はその手紙を義正に差し出した。そうしてだった。
 すぐに封が切られてだ。それからだった。
 義正は手紙を読む。そして読み終えてからだ。
 会心の笑みでだ。佐藤に話すのだった。
「お話させてもらうことになったよ」
「伊上先生にですね」
「うん。あちらからも是非にと仰っているよ」
 手紙にだ。そう書かれているというのだ。
「御会いしたいとね」
「旦那様とですね」
「そう、彼女ともね」
 もう一人のだ。彼女ともというのだ。
「二人で。来て欲しいと書いてあるよ」
「あの人のお屋敷で、ですか」
「そう、そこでね」
「伊上先生のお屋敷といいますと」
 そこがそうした場所かというとだ。佐藤もよく知っていた。彼の屋敷は神戸において知らぬ者はない程有名な場所なのである。
「あの洋館ですね」
「そう、そこでね」
「左様ですか。あそこで、ですか」
「会うことになったよ」
 笑顔で話す彼だった。
「先生から是非にとね」
「よいことです」
 佐藤もここまで話を聞いてだった。
 笑顔になりだ。己の主に話した。
「これで話が一歩前に進みましたね」
「それも確かな一歩だね」
「そうです。実りのある一歩です」
 そうした一歩だというのである。
「では。このまま」
「それで日はね」
 具体的にだ。何時かという話にもなった。
「一週間後だよ」
「一週間後ですか」
「その日に来てくれとね」
「先生が仰っていますか」
「うん」
 そうだというのだ。
「そうなったよ」
「わかりました」
 佐藤は笑顔で義正の言葉に応えた。
「そうですか。一週間後に」
「全てお話させてもらうよ」
 義正は確かな声で話す。
「僕達のことをね。全てね」
「真実はです」
 佐藤は義正に対してだ。己のその考えを述べた。
 
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