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儚き想い、されど永遠の想い

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104部分:第九話 知られたものその十


第九話 知られたものその十

「ただ」
「ただ?」
「ただといいますと?」
「御名前は申し上げられません」
 それはだ。どうしてもというのだ。
「それはです」
「申し上げられない方」
「そうした方ですか」
「御名前を申し上げますと」
 それを言えばどうなるか。真理はよくわかっていた。
 白杜家と八条家の間柄はだ。神戸においては特に知られていることだった。
 それを話すことはできない。そういうことだった。
 だから彼の名前は出さなかった。しかしだ。
 真理はだ。微笑んでこう言うのだった。
「それでもです」
「素晴しい方ですか」
「そうした方ですか」
「そうです。とても素晴しい方でして」
 それは確かだとだ。彼女は言うのだった。
「一緒にいられるその時がとても幸せです」
「そうですよね。想い人と一緒にいられるのは」
「とても素晴しいことです」
「それがわかってきました」
 そうだと話す真理だった。
「私もです」
「では。私達はこれから」
「想う方と共にいて」
「そうしてですね」
「幸せになるべきなのですね」
 二人も話していく。そうしてなのだった。
 真理は彼女達と共にいてもだ。義正のことを感じるようになった。そうしてその中にだ。幸せをはっきりと感じ取っていたのである。
 その真理はだ。再びだった。
 義正と会う。その場所は。
「やはりここですか」
「はい、ここにしました」
 義正が微笑みで真理に話す。そこはというと。
 森だった。周りに木々が並びだ。足元にも碧がある。緑と幹の茶の二色の世界の中でだ。二人はお互いに微笑みを浮かべてそこにいるのだった。
 木々の間から白い光が差し込む。その光を見てだ。
 真理はだ。こう義正に話すのだった。
「この光も」
「御気に召されましたか?」
「いいですね」
 微笑みが笑顔になった。
「とても」
「森林浴といいまして」
「森林浴?」
「欧州ではよく行われているそうです」
 ここでまた欧州を話に出す義正だった。
 そのうえでだ。真理にその森林浴のことを話すのである。
「こうして森の中に入りです」
「木々の間にその身を置くのですか」
「そうです。そして木の空気や差し込む日の光を浴びるのです」
「それが森林浴ですか」
「心が落ち着きますね」
 実際にだ。落ち着いた微笑みを彼女に見せる義正だった。
「こうしていますと」
「そうですね。それもかなり」
「これが森林浴です」
「日本にはなかったものですね」
 真理はその森の中を見回しながら言うのだった。「こうしたものは」
「確かに。そうですね」
「森は日本にはよくありますが」
「はい、日本の森は山と共にありますね」
「普通に入ることができますが」
「どうでしょうか。意識して入られると」
 そのことをだ。真理に尋ねるのだった。
「やはり違いますか」
「そうですね。何かが違います」
 実際にそうだと答える真理だった。やはり森の中を見回している。
 そしてそのうえでだ。彼女はまた言うのだった。
「森の中というのは」
「どうですか?それで」
「ずっといたいです」
 こう義正に言うのだった。
 
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