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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  緑のライダー



東京某所。

そのこじんまりとした店から外に出て右を向くと、真正面に東京の代名詞であった東京タワーが見える。
今ではスカイツリーがその座についているが、長らく「東京の顔」としてこの街に根付いていた貫禄はいまだ衰えない。

その堂々と空に向かって立っている姿は、まるで同じ色をした装甲を纏う、あの男のようでもあり


「来ないな」

「こないなぁ」

「来ないねぇ」


その男と、そしてその妹の二人は揃って右、左と首を傾けてそんなことをぼやいた。


店の名前は洋食店「Bistro la Salle」
男―――天道総司の実妹・日下部ひよりのアルバイト先である。


今日は、月に一度の日和の料理発表会。
とはいっても、そんなに大仰なものではなく、単純に身内での食事会ということになっている。

参加するメンバーはまちまちだが、基本的に天道と、その義妹の樹花は参加している。
そこに、毎回違う面子が顔をそろえに来ているという形だ。

ひよりの新作料理発表会、ということで、毎回彼女の美味しい料理が振舞われると、来たがるものも多いが毎回呼ばれるのは二、三人ずつ。

もともと、人見知りの激しいひよりのコミュニケーションの輪を広げようという、天道の計らいでもあるこの会。
「EARTH」のメンバーも何人か招待されたこともあり、翔一には「うちの食堂に来ない?」と誘われもしているほど(彼の料理には驚いたが)

その中でも、加賀美はダントツに回数の多い人物の一人だ。
もともと同じ世界の知り合いである上に、彼もまた、ひよりが心を打ち解けて許している、数少ない人物の一人だからだ。



そして、今こうして彼らが待っているのも、その男の事だったりする。



「まったく・・・・俺だけでなく、ひよりや樹花まで待たせるとは」

「でもでもお兄ちゃん。おばあちゃんは言っていた。空腹は最高のスパイスだって、ね」

「しかし樹花、こうも言っていた。旨い料理をうまいうちに食わないのは、罪だとも」

「なにか、あったのかな?」


加賀美の遅刻に呆れる天道、考える樹花。
そして、ひよりはというと心配をしていた。


仕事を終わらせてから行くよ。



そういっていた彼の「仕事」とは、十中八九ライダーとしての仕事だろう。
最近はワーム達がどこかで集まって何かをしてるような感じはしていた。



ワーム
この星にやってきた、異星生命体。

彼らの持つ、脅威の能力。
一つは、人間の姿形、さらには記憶までをトレースした擬態・ドッペルゲンガー能力。
二つに、成虫隊へと脱皮したワームが得る、超高速移動能力・クロックアップ。

ワームはサナギ体こそ個体差は見受けられないが、成虫体へと脱皮すると固有の姿を持つことになる。


かつて、この星ではそれらとの戦いが繰り広げられていた。



人類と、その人類に成り代わりこの星を手に入れようとした侵略者・ワーム。
そして、ワームに追われて逃亡してきた別種族のワーム・ネイティブ。

現在地球には、ネイティブしかいない。
仮にワームがいたとしても、人類との共存を望んでいる、若しくはこのままでいいと思っている者だ。

実を言うと、日下部ひよりもネイティブである。
天道の身の上話になるとややこしいので簡潔にいうと、ネイティブが彼の母親の姿に擬態し、彼女を殺害(ネイティブの中の過激派によるもの)。
お腹に胎児がいた状態でそれをしたため、それまで擬態してしまい、後に生まれたのがひよりだ。


かつては侵略や支配で戦っていたワーム(ネイティブ)と人類だったが、今では共存の道を歩んでいる。

とはいえ、何事も過激派というのは存在する。
人類間ですら、差別がいまだに目につくご時世だ。そう簡単に割り切れないものもいるだろう。

それらを現在取り締まっているのが、ZECTだ。
彼らも、地球に逃げてきたネイティブと共にワームと戦っていたが、今はただのワーム対策室の体だ。

複雑化した世界のため、「EARTH」と協力して事に当たる外部機関として存在している。



と、話は妙にずれてしまったが、そんなネイティブであるひよりだから、なんとなくわかるのだ。
どこかでといった細かいことはわからないが、ネイティブがどこかで集まって何かをしていることが。



「何かに巻き込まれているんじゃ」

「なに。心配するな。加賀美は俺ほどではないが相当の戦士。そう負けることはない」

自分ほどではないが、という評価が、まさしく天道らしい。
思い返せばガタックの戦績は負けなし、というものではないが、その強さを知る天道だからこそこう言うのだ。


そう。
天道と加賀美では、戦闘能力に差がある。それは事実だ。

だが、タイプが違うだけで実を言うと二人の実力云々はそう差はない。
ようは相性の問題で、相手を見定めて戦いカウンターで決める天道と、猛攻に次ぐ猛攻の勢いでの攻撃で敵を撃破する加賀美では、あまりに分が悪いだけのこと。

加えて、加賀美は(いい意味で)扱いやすい性格をしているため、天道などかからすれば「カモ」なのである。



だが、だからこそ加賀美に勝てるのはそうはいないと思うのだ。
よく知っているからこその判断。安心。信頼。

天道が心の底から「友」と呼べる男は、伊達ではない。



相手が、並大抵でない敵の場合でも、なければ。


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バチバチと爆ぜる機器。
天井から揺れるコード。
何かが入っていたのか、割れて中の溶液のこぼれ出ているガラス管。
コンクリートが剥げ、中の鉄骨が見えてしまっている柱。
それと、崩れた壁に煤けた床など。


間違いなく戦闘の跡だ。それも、被害者はおそらくワームの誰か。
この際、ネイティブかワームかという判断はいいだろう。どちらも同じ種族だ。

それらがこの場で、少なくとも3体は葬られた。
地面が煤けているのは、ワームが死亡した際に発する緑色の炎の為。

反応が出たのが三か所というだけで、吹き飛ばされてやられたなら被害者はそれ以上。


現場を見るのは、ZECTの特殊鑑識班。
その周囲や建物内を、ゼクトルーパーが警備、周回している。

そしてその中に、ガタックベルトを装備した加賀美もいた。


とはいえ、この戦闘跡は加賀美によるものではない。
匿名の通報を受け、現場に駆けつけてきたときにはすでにこのありさまだったのだ。



(はぁ・・・・こりゃ今日の食事会には行けないかな)

そう溜息をつく加賀美だが、この現場での携帯の使用は禁止されている。
一度出て連絡するか、それともいっそ変身して天道のカブトゼクターにメッセージを飛ばすか。

そんなことを考えながら周囲を見回して時計を見ると、時間は集合時間からすでに10分遅れていた。
やっべ!と声を思わずあげると、周囲からの視線にさらされてしまう。


すんません・・・とおずおずと頭を下げ、しかし加賀美という人間を知っているZECTの人間からは「まあ加賀美さんだし」と思われてすぐに仕事に戻ってしまった。


(慕われてる・・・ってことでいいのかなぁ?)

そんなことを考えながら、外に向かって小走りで進む。
出入り口のゼクトルーパーの敬礼を軽く返し、上司の田所と岬のいる小型バンへと入っていく。


「すんません。携帯使っていいすか」

「どうした?」

「いや、ひよりの」

「あー、そうだったわね。してあげなさい」

短い会話でやり取り。
これができるのも、長らくチームを組んできた田所班メンバーだからこそだ。


バンから出て、携帯をいじって電話を掛ける。
少し長めの呼び出し音の後に、ひよりの元気―――とまではいかないが、いつも通りの声がしてきた。


『はい。日下部です』

「あー、ひよりか?オレオレ。加賀美だけど」

『・・・・来れないのか?』

「わるいっ!こっちの現場がややこしい感じで」

パンっ!と器用に肩で携帯を挟み、両手を合わせて謝罪する加賀美。
対して、いいよいいよと苦笑しながらも許してくれるひよりは、じゃあ気を付けてねとだけ言って電話を切る。

そっけない気もするが、彼女なりに労っているのだろう。



そして、携帯を閉じ




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「加賀美か?」

「うん。現場がややこしいとかだってさ」

店の中で、すでに食事を始めてしまっていた天道が、席をはずしたひよりに声をかける。
「これ以上置いておくと、質が落ちる。せっかくのひよりの料理、そしてひより自身に失礼だろう」と言って、食べ始めていたのだ。


「加賀美ったらさ。電話じゃ見えないのにこうやって手合わせて謝ったんだよ」

「・・・わかったのか?」

「パンっ、て音がしたから」

「あ~、わかる。なんで電話越しでサラリーマンの人とか「ごめんなさい」って言いながらペコペコするんだろうね」

「たとえ相手に伝わらずとも、その誠意を見せるところが日本人の奥ゆかしさというものだ」

「でも、ボクは加賀美に奥ゆかしさは合わないと思う」

「相手のことを考えるのは加賀美さんらしいけどね~」

「あ、それはわかる」


気づけば、樹花とひよりが楽しそうに話し始めている。
その光景をほほえましく眺める天道だが、ふと気づいて言葉を漏らした。


「・・・・加賀美のことでやたら盛り上がるんだな」

「え~?だって加賀美さんいい人だし。面白いし」

「うん。ボクも加賀美のことは嫌いじゃないし」

「そうか」

「どうしたの?声がほんの少し上がったよ?」

「も、問題ない」

「ナイフとフォークが震えているぞ?大丈夫なのか?」

「ふふッ、ふ・・・加賀美のことが・・・好き、なのかな?」


「う~ん、いいんじゃない?」

「ぼ、ボクは嫌いじゃないというか」



「加賀美メ」

「うわぁお兄ちゃんなんでナイフとフォーク構えて出ていこうとするの!?」

「食器を武器みたいにするな。あと、いつの間にそんな黒い服に着替えた」


「あくまで、しつj」

「それはダメだよ!?」

「クソッ。ならば加賀美のこれまでのイタい言動をまとめた小説一本掻き揚げて小説大賞を」

「いや、やめておいて。というか何それボクも聞きたい」



天道総司
世の中の大半のことはパーフェクトにこなす男だが、予想外の出来事に取り乱すこともある。



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そして、そんな会話が和やかに流れている間に




《clock over》

ガシャッ

「ッ、グぁ・・・・・」

すべては終息していた。


倒れ伏すのは、マスクドライダーシステムのうち、最強のスペックを誇るガタック。


《clock over》

遅れて現れたのは、見たこともないマスクドライダー。
緑を基調とした、大きな複眼をもつライダーだった。

その複眼は、カブトやガタックのものと比べてなお大きく、端が側頭部に掛かるほど。


そして、問題のゼクターは、ベルトの真正面に装備されていた。

設置の仕方は、カブトやガタックと異なり、こちらに側面を見せる形だ。
ホッパーシリーズと同じと言っていい。

頭部を使用者から位て右側に。
そのモチーフとなった昆虫は、生物的にみてもかなり上位に入る「捕食者」だ。

鎌がある。
その一つのキーワードで、おおよそ思いつく昆虫。


倒れ伏すガタックに対し、そのライダーは大いに笑った。

「マスクドライダー・ガタック。お前だけは手に入れないと、残られても面倒だからな」

そんなことを言って、腹に重い一撃を蹴りこむ。
転がるガタックだが、まともに防御もできずに息を吐き出す。


「貴様らのシステムでは俺には勝てん。そも、人間が俺に歯向かうのが間違いだ」

「人間だとか、そうじゃないとか・・・そんなことはもう関係ない!!」


ヨロリと、敵の言葉に反応して立ち上がるガタック。
彼は知っている。たとえ人間でなくとも、人間らしく生きる者たちのことを。

この敵の発言は、彼らの生き方を否定するも同然。
自分をコケにされるより、億倍許せないことだった。


しかし、敵のライダーからすれば、そんな言葉はどうでもいい。
ただ、立ち上がってきたことには驚嘆していた。


「凄いな。さすがは戦いの神。高スペックに救われたな。人間」

「そういうこという奴は、俺は嫌いなんだよ・・・・!!」

駆けながらも、時空を超えて飛び出してきたハイパーゼクターを握り締めて飛び出していくガタック。


それに対して、敵は――――緑のライダーは、仮面の下で愉悦に笑いながら襲い掛かった。



腰に装着された、その昆虫は「蟷螂」


マスクドライダー・マンティス


自覚もできないほどの刹那の間に、勝利はこの男のものとなった。







 仮面ライダーカブト
~God Class Position~

 
 

 
後書き

始まりました、カブト編!!


マンティスのゼクターはマンティスゼクター(まんまですね)
装着は、パンチorキックホッパーと変わりません。


正面から見るとこんな感じ

    ∧〇

「∧」は鎌、「〇」は胴体です。

鎌を除けば、胴体の造形はホッパーと同じです。後ろ足とか。
頭部が蟷螂になるだけです

で、ベルトの台座に「〇」が乗るので、鎌は(使用者から見て)右にかなり余ります。

それを、根本と「∧」の頂点にある関節部で畳み込んでカチリと入れます。
後ろ足と並んで「///」みたいにくっつきますね(左と真ん中が鎌、右が後ろ足)



いやぁ、こういうゼクターとかの操作って、どうも文章じゃ伝えにくいですね。
他にどのような機能があるかは、劇中に出てきてから必要ならばどんどん出します。

ご質問はいつでも大丈夫ですよ!!
「つまりこういうこと?」という確認でもいいですので。



天道
「次回。ガタックと敵の戦闘は」

ではまた次回

 
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