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世界をめぐる、銀白の翼

作者:BTOKIJIN
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第七章 C.D.の計略
  猛撃する絶鬼


深夜二時過ぎ。
草木も眠る、丑三つ時。

しかして眠らぬ、異形の者共。


人食らい、襲い暴れる妖魔・魔化魍。
それを打ち滅ぼさんと猛るは、清めの音撃操る鬼たち。



そして残るは、二方のうちの一つのみ。
鬼の姿が(ひと)(ふた)(みっつ)


しかして、一人の鬼が刃を剥いた。


問答無用斬捨御免


襲い掛かるは群青鬼・絶鬼
残る鬼―――響鬼、強鬼の二人の鬼は、如何に




ここは一つ、日も昇りし翌朝まで時を流してみてみよう―――――


------------------------------------------------------------


「ッ・・・ハっ!!」

「響鬼さん!!」

「ぐ・・・ぅ・・・京介、か?」

「はい!!」



翌朝
とはいえ、もう午後から夕方に移り変わるほどの時間だが。

響鬼は、村の宿で目を覚ましていた。
額に乗っていたのだろうタオルがズルリと落ち、それを広げてそのまま顔を拭いてしまう。


「あぁもう。新しいのありますよ」

「いや、すまんね・・・・えっと・・・・」


起き上がろうとすると、身体が鈍く痛む。
その痛みで、起き上がってから1分半の時間をかけて、ようやく昨晩のことを思い出していた。


「そうだ!!確か俺は・・・・」

『響鬼、目覚めたようだね』

「おやっさん?」

響鬼が本格的に目覚めると、そこにスピーカー越しの声がしてきた。

立花勢地郎
響鬼の所属する、猛士の関東支部事務局長だ。


関東支部は甘味処「たちばな」にカモフラージュされて置かれており、おそらく彼がいるのは地下にある資料庫。
調査隊の持ち込んだアンテナで通信を可能とし、あちらと中継をつないでいるのだ。


『お前さんがやられたって聞いて、こっちは驚きっぱなしだよ』

「すみません・・・とんでもなく強くて」

『で、キョウキから聞いたんだけどね。鬼なんだって?』

「・・・・はい」


すでに京介から簡単に話を聞いていた勢地郎は、改めて響鬼からの報告を聞こうとまっていたのだ。

響鬼の口が開かれる。
あの夜、あの時、何が起きたのか――――――





~~~~~


「うぉっとぉ!?」

バジュゥ!!と、煙とともに吹き上がる音。
絶鬼と名乗る群青の鬼が振るった水鞭は、響鬼がとっさに放ち命中させた烈火弾によって蒸発し断ち切られていた。

バシャン、と落ちる水鞭。
放たれた炎の、思いの外に高い威力に首を傾げる絶鬼。


響鬼と絶鬼の間に、バラバラと木の枝や葉が落下してくる。
勢いで千切れたりしたものではない。振るわれた水鞭は、形状こそ鞭ではあるが効果は刃のそれだ。


一方、絶鬼は両手に二本構えていた音撃棒の一本を腰の後ろに収め、一本だけを構える。
両手で握り、肘を張って、顔の横に縦に構える。


まるでそれは、刀を振るうかのような姿勢だった。
八相の構え。


そして絶鬼はその構えのまま、一気に響鬼へと駆け、突っ込んできた。


「下がれ京介ぇ!!」

振り返らずにドンッ!!と後ろ肩で強鬼を突き飛ばし、迫る絶鬼に構える響鬼。



響鬼から見て左から横薙ぎに振るわれた音撃棒を、二本の音撃棒をクロスさせて受け止める。
同時に腹に蹴りをあてに行くが、即座に絶鬼は下がってそれを回避した。

攻撃に反応して下がった、というよりは、防がれた時点ですでに回避を決定していたかのような動きだ。



「なんで鬼のあんたが同じ鬼の俺に突っかかって来るのか。教えてくんないかな?」

「知れたこと。人は鬼よ。悪気こそが魔化魍を生みよる。それを捨て置く今世の鬼に、躾を与えてやろうというまでのことよ」

「躾だってぇ?俺、もうそんな歳でもないんだけどねぇ」

響鬼の言葉は、どこか気の抜けたように絶鬼の言葉に応えていく。
だが内心、響鬼は相手の力に対してどうしようかを考えあぐねているところだった。


力は自分とそう変わらないだろう。
その点において、絶望的と言うわけではない。


問題は相性だ。
鬼には、それぞれ属性がある。

炎であったり、雷であったり、風であったり。
それは使用する音撃とは関係なく決まるものだ。

響鬼は炎の打撃の鬼。
他には、雷の弦の鬼であるトドロキや、風の管の鬼である威吹鬼、という感じになる。


だが、水の鬼などというのは聞いたことがない。
水中戦が得意な鬼は過去にもいたらしいが、水属性となると――――


「確かに、人の悪い気が魔化魍を生む可能性。十分にあると思う。だけど、それを俺らのせいにされても」

「鬼とは、古来より魔を討つべき武士(もののふ)であるべし。それをのうのうと生き晒させる今代の鬼もまた、我が「悪」の為すところ也」

「ガッチガチだねぇ・・・「もののふ」なんて言葉まで使っちゃって」

「もはや交わす、言葉なし」


絶鬼が、口を閉じた。
おそらく、ここから何を語っても帰ってくる答えはないだろう。

ならば、勝つまで。


しかし、響鬼と絶鬼の圧倒的な違いといえば――――


(鬼との戦いってのも、修行しとくんだったな!!)

そう。

鬼同士での手合わせ程度ならば確かに経験はあるものの、それはあくまでも「魔化魍との戦い」を前提としたものだ。
鬼を敵とした戦いなど、ヒビキに経験があるわけもない。

(でも泣き言言ってもしょうがないし、人と戦うのなら一応経験あるしね!!)



そうして前向きに考え、迫る絶鬼を迎撃せんとする響鬼。
しかし、恐るべきは絶鬼の技術だ。

一刀流と二刀流を、どちらが上かと問うことはあまり意味はないが、それでも絶鬼は一本の音撃棒の攻撃で、響鬼の二本を完全に後手に回させていた。


(こっちは左右あるってのに、一本の攻撃を防ぐのに精一杯とはねっ!!)

ガンガンガンガン!!と打ち付けあう音撃棒。
響鬼も時折反撃するものの、それが通るためしはない。

それどころか、段々押されてしまいその隙すらなくなりつつあった。


と、そこに飛来してくる烈火弾。
強鬼の放った炎弾が、絶鬼の肩に命中したのだ。

だが、それは絶鬼の皮膚に触れた瞬間ショボッ!と消えてしまった。
皮膚に覆われた水の膜が、強鬼の炎弾を消火してしまったのだ。


「ハァっ!!」

だが、それでも強鬼の炎弾は止まらない。
それどころか、強鬼は接近して響鬼に加勢しようと攻撃を仕掛けた。


「ムッ!!」

「ぜぁっ!!」

ガキィ!!

「貴殿も鬼か。この者の弟子と見たが!!」

ドカァッ!!!と、強鬼の振り降ろしをもう一本の音撃棒を取り出して受け止めた絶鬼が、強鬼の腹に見事な足刀蹴りを命中させて宙に浮かす。


その瞬間、響鬼は口内より炎を吐き出し、絶鬼の顔面に攻撃を加えた。
ゴォッ!!と絶鬼の頭が炎に包まれ、更に上半身をも包み込む。

効くとは到底思ってはいないが、相手の視界を防いでいるこの隙に、音撃鼓をセットすればいい。


そう思っていたのは響鬼だけではなく、強鬼も同じであった。

蹴られて吹き飛んだとはいえ、その距離は二メートルほど。
痛みに身体が軋むが、即座に立ち上がり音撃鼓のセットは可能――――!!


「ハァっ!!」

響鬼がベルトから音撃鼓を外したのと同時に、先に強鬼の音撃鼓が絶鬼の左腰にセットされた。
オォン―――!!と勇ましい音とともに、音撃鼓が肥大化して強鬼の体を強張らせる。


そして、そこに「爆裂強打」をぶち当てようと、軽くステップしながら踏み込んだ強鬼。
大きく振りかぶり、強力な二連打を入れようとして、強鬼の間合いに入った。



「ぬ、ォあっ破ァ!!」

しかし、絶鬼はその状況を覆した。
窮地を脱しようとしたような、そんな気合の入れ方ではない。

「少しばかし本気を出そうかな」
その程度の大きな掛け声とともに振られた腕は、響鬼の炎を掻き消して無効とする。


そして、再び一本だけ握られた音撃棒を両手でつかみ、ぞの全身から水流を迸らせて強鬼の胸に向かって一撃を振るい当てた。


「音撃打」

カッッ!!

「剛撃一破の型」

ゴ――――ドンッッ!!!


振り抜かれた音撃棒。
まるで、野球のバッターかのような豪快にフルスイングされた音撃は、強鬼の胸に音撃鼓のエネルギーを張り付けさせながらその身体を遠くへと吹き飛ばした。


闇の中に消える強鬼。
悲鳴も嘔吐音も何も上げることができず、肺の中の空気と一緒に頭の中から意識が追い出される。

そして消えた闇の中でドン!と、木に当たった音がしてからそれが揺れてざわざわと葉の擦れる音がした。



だが、響鬼にそれを聞いている余裕はない。
というよりも、強鬼の身体がそこまで吹き飛ぶより先に、響鬼にもまた攻撃が放たれていたのだ。


「強鬼!!」

吹き飛ばされる弟子。
それを咄嗟に目で追ってしまった響鬼は、自分の胸に音撃鼓がセットされてしまっていたことに気付く。


「しまっ・・・・」

そこで、響鬼は見た。
この暗がりの中でわかりにくかったが、絶鬼の肌の色が変わっている。

まるで黒と遜色の付かないほどの群青だったにもかかわらず、その肌の色は光に照らせば透き通るかもしれないと思うほど、きれいな蒼に染まっていたのだ。


(紅と同じか・・・・!?)

なるほど。
強鬼の胸に音撃鼓が当てられていなかったにもかかわらず、音撃打が発動していたのはこのためか―――!!

だが、だとすれば。
通常攻撃ですら音撃となるというのに、その上で音撃鼓を当てられているこの状況はまずいのでは



「音撃打」

カカンッ

「激!!」

ドドンッ!!

「カッ・・・はっ」


強烈な二撃。
まるで、響鬼の爆裂強打のような音撃だ。

その攻撃に響鬼の身体が浮き、五メートルほど飛んでいく。


だが、絶鬼はそれを追っていき、その勢いを加えてさらに一撃を


「流!!!」

ドドォン!!!


そして、再び追って


「怒!!」

ドドゥッッ!!


「涛ォッ!!」

ドガバンッ!!


「ぐ・・・ぇ・・・・ヵ・・・」


音撃打・激流怒涛
説明は先のとおりである。

強烈な一撃を全身全霊で叩き込み、吹き飛ぶ敵を追ってさらに追撃。

そうすることで、計四度(左右合わせて八回)の強力な音撃をぶち込む技である。





吹き飛んだ響鬼は強鬼以上に飛距離を伸ばして、河原の、まるで地面から生えているかのような巨岩に突っ込んでいった。
バラバラにそれを砕いて止まり、地面に倒れて気を失うと同時に変身が解除される響鬼。



だが、それを確認しに来るものはいなかった。
絶鬼は、そのまま姿を消した。


響鬼を見つけたのは、翌朝水遊びをしに川まで来た、村の子供たちであった。




~~~~~


「そうか・・・子供たちのおかげかぁ。おやっさん、俺の話はこれだけです」

『絶鬼・・・・・確かにそういう名前なんだな?』

「そうでしたね。何か知ってるんですか?」


一連の話を終え、勢地郎に何か情報はないかと聞く響鬼。
だが、モニターに映る勢地郎の顔は重く険しい。


『いやぁ。それが、どこ見てもそんな名前の鬼は載ってないんだよねぇ』

「関東支部じゃないってことですか?」

『違うねぇ。今関東支部に所属している鬼は、キョウキ君を含めて12名。でも絶鬼なんて鬼はその中にも、そして全国の鬼の中にもいないんだよ』

「・・・じゃああいつは?」

「独学かもしれない、な」

「独学!?」


ふと、響鬼の零した言葉に驚愕する京介。
鬼に変身するには、その強力な肉体への変貌に耐えるために相当の修業を行わなければなれるものではない。

それを、独学でそこに至ることなど、果たして可能なのか?


結論から言って、可能である。
その事例が、今京介の目の前にいるのだから。


「俺も、師匠なしで鬼になったわけだし」

「あ、そういえばそういってましたね」

『う~ん・・・でも、そいつお前さんの紅と同じ状態になったんだろ?』

「そこ、そこなんですよ~。いやね?俺もあの状態になるには、夏になるたび鍛えなおしてるのに、あいつにはその感じはなかったんだよな」

『それに、あの状態になれる鬼は今、全国を探してもヒビキだけだ・・・・・うん、わかった!』

う~ん、と考え込み始めてしまう三人だが、勢地郎は「よし!」といって手を叩く。


『それについては、こっちでもっと調べてみる。場合によっては、本部のほうにも顔出ししなきゃならないと思うから、時間がかかるかもしれない』

「あまり期待しないで待てってことです、か」

『ま、こっちも頑張るからさ。ほかの鬼の増援はいるかな?』

「呼ぶなら、イブキかトドロキで。生半可な鬼じゃ、返り討ちに合うから」

『わかった。任務が終わったら、そっちに向かうよう言っておこう』

「ありがとうございまっす」

シュッ!といつも通りの礼をして、通信を切る響鬼。



しばらくして、調査隊が戻ってきたが特にめぼしいものは見つけられなかった。

魔化魍が出現しなかったのは、あの絶鬼が先に倒していたからであるのだから、それに関してはすでに解決していると言っていい。
では絶鬼の手掛かりはというと、足跡があるくらいであった。

それも途中で途切れており、どこに向かったのかは謎のままであった。



「では、我々はこれで。一応衛星通信の携帯を渡しておきます」

「あー、京介、頼むな」

「じゃあ、俺があずかります」

機械音痴の響鬼には扱いきれないとして、その通信機は京介があずかる。

調査班はあくまでも調査班だ。
これ以上彼らがここに残っていても、戦力になることもないので今日はこれで撤収することとなった。



そのワゴン車が帰っていき、そしてそれと入れ違いで一頭のウォプタルが、村の敷地に入ってきた。
小型恐竜の姿をした、この地域において馬とされるそれに跨ってきたのは、肩当などの鎧を付けた武人だった。


その彼が響鬼の前までやってきてウォプタルから降り、一礼してから挨拶をかわす。


「どうも。俺はトゥスクルのラクシャライ副長のクロウってもんだ」

「え・・・はい?」

「ラク・・・?」

「あぁ、そっちだと騎兵隊とか騎兵衆の意味だ」

「はぁ・・・で、そんなお偉いさんがなにか?」

偉いって程のもんじゃないんだけどな、と頭を掻き、苦笑しながら本題に入る。



「うちの大将が呼んでるんで、ちょいと宮殿のほうに来てくれないですかね?」

「大将・・・?」

「ってことは、ハクオロ青年か?」

「ちょ、ヒビキさん」

年下のハクオロを、ついついそんな呼び方をしてしまうヒビキに、京介が注意する。
「EARTH」で会うときはともかくとして、ここでは彼は皇なのだから。

だがクロウはアッハッハと笑って構いませんよ、とこちらの関係を汲んでくれる。



「お二人が蒔風がらみでお知り合いなのは知ってますんで。足はありますかね?」

「一応バイクがある」

「んじゃそれで。もう時間も遅いので、明日出ることにしましょう」

「わかったよ」


そうして、三人はとりあえず食事につくことにする。


クロウも事情を知っているのか、それとも単に夜間行進は危険だと判断しただけなのか、明日を待って出発することになった。




そうして、三人は宮殿へと向かうこととなった。




この自然豊かなトゥスクルが、今回の戦場となるのだろうか。






to be continued
 
 

 
後書き

絶鬼さん強いっすね。
まあパワーそのものはヒビキさんと同じくらいだそうですけど。


ヒビキ
「ありゃ、たぶん場数が違うよ」

京介
「鬼としてですか?」

ヒビキ
「うんにゃ。戦いそのものの」


ヒビキが炎、トドロキが雷のように、絶鬼の属性は水です。


音撃は「太鼓」
属性は「水」

しかも、ヒビキの持つ「紅」への強化変身をも習得しているこいつは何なんだ!?

この場合は多分「絶鬼蒼-あおい-」になるのでしょう。


蒔風
「その出自すら不明とは・・・・この鬼は一体・・・・」


仮面ライダー絶鬼

水の鬼。音撃系統は「太鼓(打撃)」


・無想連打
・剛撃一破
・激流怒涛

強化形態有り


うはぁ、きついヤバいっすね。



ヒビキ
「次回。宮殿で待つハクオロ青年の話とは?」

ではまた次回
 
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