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フランケン

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第二章

「身体が腐っているからな」
「元々ですね」
「そうだ、そして脳は特に新鮮でないとならなくてな」
「事故で死んだその少年の脳は」
「特に新鮮だった」 
 それでというのだ。
「その子の脳を使った」
「そうでしたか」
「人の頭脳は十代に最もよく働く」
 博士はその深い学識からこのことも知っているのだ。
「だからだ」
「こうしてですね」
「多くの知識をすぐに学び取っているのだ」
「そうなのですね」
「勿論人間自体もな」
 その心もというのだ。
「学んでいるのだ」
「そういうことですか」
「このまま学んでもらいな」
「人間になってもらいますか」
「生み出そうとしている中で思ったのだ」
 新たな生命、人間が人間をだ。博士の長年の夢であった。
「人間は何かとな」
「ただ命があるだけでなく」
「心があってこそだ」
 まさにというのだ。
「人間ではないかとな」
「魂がですか」
「あってこそな」
「人間ではないかと」
「思った、そして魂があってもな」
 生れてそしてというのだ。
「そこに心がないとな」
「人間ではない」
「そう思ってだ」
 それ故にというのだ。
「ヴィクターに対してな」
「教育を施して」
「人間になってもらっているのだ」
「そうなのですね、ただ」
「ただ?」
「我々は彼に神学そして人間の美徳を軸に教えています」
 これは博士の方針だ、実は博士は新たな生命の創造という神の摂理に反するのではということをしているが信仰心は備えているのだ。
 それでだ、ヴィクターにもそうしたものを教えているのだ。
「ですからこのままですと」
「神父になるかも知れないというのだな」
「そう思いましたが」
「そうかも知れないな」
 博士は助手の指摘に可能性はあると返した。
「やはり」
「そうなりますか」
「何度も言うが彼は白紙だった」
 何も知らない状態だったというのだ。
「そこに教えていくのだ」
「だからですね」
「そうしたものを中心に教えていくとな」
「必然的にですね」
「そうしたことを備えていってだ」
 そしてというのだ。
「そうした人間になっていく」
「神学を学べばですね」
「神学者になる」
 そちらになるというのだ。
「まさにな」
「それでは」
「彼はこのまま学んでいくとだ」
 博士と助手が教えていくことをだ。
「実際にな」
「神学者になりますか」
「そうなるかも知れない」
「そうですか、ただ」
「ただ。何だ」
「近頃彼と共に外をよく歩きます」
 散歩をしているというのだ。
「馬にも乗ってもらっています」
「乗馬もか」
「教えています」
「そうなのか」
「教えるべきでしょうか」
「馬を選ぶと思うが」
 その巨体故にだ、博士はこのことを考えた。
 だがそれでもだ、助手に微笑んで話した。 
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