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お弁当

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第三章

「その分気持ちも沈むしな」
「そういうものだしね」
「寿命も縮まったりするからな」
「だからよ」
「健康診断の結果はか」
「よく聞いて」
 そしてというのだ。
「私にも言ってね」
「ああ、わかった」
 仁科は焼酎とつまみの枝豆の味を楽しんでだ、巨人が今日も見事に負けているのを楽しく思ってそこにだ。
 神経を集中させていて広美には素気なく返した、そしてだった。
 健康診断の結果が出た時にだ、彼は診察をした医師に特別に呼ばれてこう言われたのだった。
「あの、何かされていますか?」
「何か?」
「続けているスポーツなり健康法なり」
「いえ、何も」
 していないとだ、彼は医師に答えた。
「していません」
「そうですか」
「本当に何もしていないです」
「その割には」
 医師は彼にいぶかしむ顔でこう言った。
「身体に悪いところは何もなくて」
「健康そのものですか」
「はい、血液も内蔵も」
 そのどれもがというのだ。
「見事に健康で」
「何処もですか」
「悪いところはありません」
「健康そのものですか」
「何かスポーツか健康法をしているみたいに」
 本当にというのだ。
「健康ですよ」
「そうですか」
「とてもいいものをいつも口にしていますか?」
 医師は仁科にこうも尋ねた。
「青魚や緑黄色野菜や大豆を」
「そういえば」
 ここで仁科は気付いた、昼のことをだ。
 それでだ、仁科は医師にはっとなった顔で答えた。
「三食いつも食べていて」
「そしてですか」
「お昼も特に」
 あの息子のものとは全く違う質素そのものの野菜と魚ばかりの弁当を思い出して言う。御飯は少なめでおかずが多い。
「野菜とお魚が多いお弁当を女房が」
「奥さんがですか」
「作って持たせてくれています」
「それが大きいですね」
 弁当の話を聞いてだ、医師は仁科に答えた。
「やはり」
「そうですか」
「お店で食べるものは塩分や糖分が多いですね」
「どうしてもですね」
「栄養バランスもどうしてもです」
「家で食べるものよりも」
「偏りがちになるので」
 それでというのだ。
「どうしてもです」
「栄養的にですか」
「お家でいつも食べているよりも」
「家で作ったお弁当もですね」
「そこに入ります」
 家で食べているものの中にというのだ、作っているだけに。
「そうなりますので」
「だからですか」
「奥さんは考えておられますね」
 確かな顔で仁科に述べた。
「仁科さんの健康のことを」
「だからいつもお弁当で」
「おかずやお野菜やお魚ですね」
「御飯が少なめで」
「味付けもですね」
「美味いですが」
 それでもとだ、医師に答えた。 
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